久しぶりにカカシくんと飲む機会ができた。 いつも私が待たせてばっかりだから、今日は私が先にいて、カカシくんをびっくりさせてやろう。 そう意気込んできたのに、扉を開ければそこにはすでに酔っ払い気味のカカシくんがいた。 なにやら、相談事があるらしい。 ようやく年上らしくアドバイスが言えるのかな、とちょっと楽しみ。 カカシくんと言えば、ちょうどこの飲み屋で偶然出会ってそこから仲良くなった。 今朝は偶然、出勤前の道すがら出会えたが、いつぞやかは休日に会ったこともある。 そのまま買い物に付き合わせて、ちょっとそこで意地悪なこともしちゃったけど。 あの下着屋でおろおろしてたカカシくんの姿は一生忘れないでおこう。 あんな可愛らしい姿、もう見られないかもしれないしね。 カカシくんはいつも私と仲良くしてくれて、一緒にいるととっても楽しい。 もしかしたら、誰よりも一緒にいて楽しいかもしれない。 男女間の友情なんて存在しないなんて言うけれど、それはウソだと思う。 実際、こうやってカカシくんは付き合ってくれるし。 「あの・・・実はおれ・・・」 カカシの悩み事に力になれるか不安だが、ようやく話し始めたカカシの言葉に耳を傾けた。 「好き・・・な・・・人がいまして・・・」 ぽつり、と言いづらそうに言うカカシの言葉に、思わずは目を見開いて動きが止まってしまった。 「・・・さん?」 「えっ、あ、ごめんごめん、それで?」 やけに動揺している自分がいる。 とりあえずビールを一口飲んで、再びカカシの話を促した。 「それで・・・えと・・・」 口ごもるカカシに、はピコン、と思いついた。 「わかった!なんて告白していいのかわからないんでしょ!」 「え?いや、まー・・・そう、ですね」 カカシは考えながら曖昧に応えた。 「そっかー、カカシくんに好きな人か〜」 最初こそびっくりしたが、考えてみれば当たり前のことだ。 こんな容姿をして気になる人がいないだなんて考えられない。 ここはどうにかカカシの背中を押して、無事に成功するよう手助けしてあげなければ。 「それで、その人ってどんな人なの?」 興味がないわけがない。 あのカカシが好きな人だ。 きっとスタイル抜群の、容姿端麗、育ちもいいお嬢様なんだろうか。 「んー、そうですねぇ。年は俺より少し上で」 「うんうん」 「でもちょっと子供っぽくて、可愛らしい人です」 「・・・ざっくりだなぁ」 想像していた雰囲気とはちょっと違くて、頭の中で思い浮かべようにも浮かべにくい。 「それでそれで、どこが好きなの?」 「え?いや、それはいいですよ〜」 「ダメだよ!告白する上で大事な点だよ?!」 「いや、うーん・・・」 カカシは恥ずかしそうに頭をかいた。 なんだか照れてる姿が可愛らしい。 その姿を肴に、ビールをぐいっと飲み干した。 「俺は・・・、その人の全部が好きです。どこが好き、とかじゃなくて・・・。うん、全部。全部が好き」 想い人を思い浮かべているのか、カカシは優しく微笑んでいた。 なぜかその笑顔がチクリと胸にささり、ふいっと視線をそらしてしまった。 「そっかー。告白、いつするの?」 「いや、全然決めてませんよ。このままでもいいかなー、なんて」 カカシはの空になったジョッキを掲げて、もう一杯ね、と店員に注文してくれた。 「それはだめだよ!あ、そうだ、練習相手になってあげよっか!」 「え?どういうことです?」 「告白するときはかっこよく決めなきゃだから、少しでも緊張しないように私が告白の練習相手になってあげる!」 いいことをひらめいたと思ったはずなのに、カカシはうーん、と目を泳がせていた。 「私相手で照れてたら、本番はボロボロになっちゃうよ」 「そう・・・ですね」 ようやく決意したようなカカシに、またしても胸が痛む。 なんでだろう、と思いつつ、新しく届いたビールに口をつけた。 「それじゃあ、どうぞ!」 「え?いま?!」 「そうだよ!はい、どうぞ!」 「んー・・・じゃあ・・・」 カカシがどんな告白をするのか、ただの興味本位だった。 が、実際カカシの愛の言葉を聞いて後悔した。 カカシが言葉を紡ぐたび、ぎりぎりと胸が締め付けられ、耳をふさぎたくなった。 あぁ、いいなあ。 こんなにも真剣に愛してもらえるなんて。 「・・・どうです?」 「ん、いいんじゃないかなあ」 話半分で聞いていたため、さしてアドバイスできる点がなかった。 でも、少しでも上手くいくように考え付く改良点を教えてあげた。 難しい言葉はダメだよ、とか、ちゃんと相手の目を見て、とか。 まるで力にならないようなアドバイスしかできなくて、自分でも少し落ち込む。 「あ、あとこんなところじゃだめだよ!もっと小洒落たバーとかじゃないと!」 「そんなところ似合うような人じゃないんですけどね」 くすっと笑うカカシに、は胸が苦しくなる。 「ま、カカシくんなら一発K.O.だよ!いけるいける!」 「そうですかねぇ」 カカシの幸せそうな笑顔を隠すように、ぐいーっとジョッキを傾けた。 「うー、飲みすぎたかな・・・」 「大丈夫です?」 「ん、平気平気。じゃあね、カカシくん」 酒のペースが乱れたまま最後まで飲んでしまい、すっかり酒に飲まれてしまった。 ふらふらする頭をしっかり奮い立たせ、カカシへ手を振る。 「ほんとに送らなくて大丈夫?」 「うん、平気。それにそんな姿を見られたら困るのはカカシくんだよ」 「そんなこと、ないですって」 はぁ、とため息をつくカカシの肩をポン、とたたいた。 「じゃあね、うまくいくといいね。成功したら、また話を聞かせて」 「・・・そうですね」 困ったような笑みを浮かべるカカシに、無理やり笑顔を返しては背中を向けた。 1<<< Novel TOP >>>3 |