本日Aランク任務、ツーマンセル。

「カカシさん、これ終わったら飯行きましょうよ」
「んーゲンマの奢りならいいよ」
「はいはい、いーっすよ」

そう言ってカカシさん奢ってくれるんだよなぁ、と口にくわえた千本を上下に遊びながらぼやくゲンマは、呑気な会話の合間に向かってくる敵を容赦なくなぎ倒していた。

「カカシさん、後ろ」
「しつこいな」

クナイを逆手に取り、後ろを振り向かずして相手の脳天に勢いよく刺した。

「店は?」
「この前ゲンマが言ってた店は?」
「そこのかぼちゃの煮物うまい」
「あーいいねぇ」
「じゃあそこで」

ふぅ、と息を整えたのち、木陰に潜む敵の元に走り寄った。

「俺が相手だ!」

と活気よく飛び出してきた相手の鳩尾に思い切り拳を入れ込むが、相手も両手を構えてガードされて思うほどダメージを与えられず。

「うおおお!」

ありきたりな雄たけびを上げてかかってくる相手に身構えつつ、クナイを取り出して相手の攻撃を迎えた。
ギンッと金属同士がぶつかる音が響き、矢継ぎ早にいろんな太刀筋で向かってくるのをガードしながら相手から距離をとる。

「くそっ!」
「惜しいね」

大きく横に切りつけてくるのをしゃがんでかわし、相手がバランスを崩したところで下から顎に向かって拳を突き上げた。

「ゴッ・・・!」
「動きは悪くなかったけどね」

白目をむいて吹っ飛ばされた相手が完全に伸びているのを確認し、次の相手に向かっていった。




「あー終わった終わった」
「巻物は?」
「ばっちり回収〜」

今回の目的である奪われた巻物を手にしたゲンマはグイっと乱雑にリュックにしまった。
返り血にまみれてても憎たらしいほどの色男はリュックを背負い「じゃ、帰りますか」とニッと笑った。
木の葉の里に戻ったのち、ゲンマに巻物の提出を任せてカカシは報告書を書きに向かった。

「おかえりなさい。カカシ上忍、いいところに」
「なによ」
「これ、今度の任務受付表です。人手不足でまたツーマンセルなんですけど」
「まーたか」

書いてきた報告書を渡した代わりに受付表受け取り、パラパラと中身をめくった。

「あ」
「一応出発は明日の夜中になるので今日はゆっくり休んでください。報告書も大丈夫そうです。お疲れ様でした」
「ありがとう」

受け取った受付表をポーチの中に突っ込みその場から離れた。

「カカシさーん。早く飲み行きましょー」
「あぁ、そうだね」
「・・・・なにかいいことでもあった?」
「え?なんで?」

部屋から出てきたところにちょうどゲンマがいて、カカシの顔をマジマジとみて怪訝そうにつぶやいた。

「いや、なんか・・・なんとなく」
「別に何もないよ。で、店どこにあるんだっけ?」

悟られないように話を変え、ゲンマも特に気にすることもなく先を歩きだした。


ゲンマがおすすめするという店に着くと、さっそくあれやこれやと注文をしてあっと言う間に机の上は皿とグラスで埋まった。

「はい、お疲れさんです」
「お疲れ」

任務明けの身体にビールが染みる、なんておじさんくさいこと言いあう二人は、机の上の料理をつつきながら他愛もない会話を交わした。

「最近任務多いから全然遊べねーわ」
「人手不足だってね。明日も任務入っちゃったよ」
「オレも明日は休みだけど明後日から里外スわ」
「世知辛いねぇ」

かぼちゃの煮物を肴におちょこを傾けていると、正面に座るゲンマが入り口を見て「おっ」と声をあげた。

「なに」
「知り合いのくノ一。男二人ってのもあれだし、カカシさんがいいなら一緒に飲んでもいいですか?」
「俺は別にいいけど」

カカシの返答に早速ゲンマは立ち上がりおーい、と声をかけていた。

「おつかれー。あ、カカシもいるんだ!二人はこの子、知ってるかなあ」

ゲンマに呼ばれて来たくノ一はカカシも顔を見知った仲で、そのくノ一の後ろから姿を現したもう一人に思わず「あっ」と声をあげた。

「あ、カカシは知ってるの?中忍なんだけど、か〜わいいでしょ」
「あ・・・・あの・・・」

顔を真っ赤にして目を泳がせているのは紛れもなくあのだった。

「オレは初対面。不知火ゲンマだ。よろしく」
です。よ、ろしく、おねがいします」
「そんな緊張しないで。えーと、オレがカカシさんの隣行くからさ、二人も座って」

自分自身も位置を変更しながらもスマートに座席に座るよう促すゲンマに、くノ一たちは向かいの席に座った。

「珍しいね、中忍の子と飲むなんて」
「まあね。わたしの推しの子だから」
「・・・・・」
「きみ、もしかしてかなりの恥ずかしがり屋?」

ニヤニヤと問うゲンマに対して、顔を赤くしてうつむいたまま正面に座るカカシの方をチラリと見たは「そういう訳では・・・」と小さく声を漏らした。

「カカシはのこと知ってるのね」
「ま、任務で一緒になったくらいだけどね」

と言いながら机の下でコツンと膝をぶつけた。

「!」

驚いたように顔を上げたを無視して、涼しい顔して酒をあおる。

「ふーん。オレもとツーマンセル組みたいな」
「ちょっと。この子にあんまり強い刺激与えないでくれる?」
「えーいいじゃん。こんな可愛い子、いままで知らなかったよ」

酒も入って饒舌になった色男ほどタチの悪いものはない。
どうやらゲンマは完全にを狙っているようで、は困惑して誤魔化すように小さく笑っていた。

「・・・・」

その様子を目の前にしてなにも思わないかと言われれば・・・といったところだろうか。

ゲンマやくノ一にも酒が回り始めると、ますます露骨な口説きの言葉が飛び交い熱のこもった視線がに向けられていた。

「ごめん、トイレ」
「あ、わたしも行こ」

よろっと立ち上がったカカシと一緒にくノ一も付いて来て、トイレにつながる細い廊下でくノ一は意味ありげに笑った。

「あの二人、いい感じじゃない?」
「ん、まあね」
「やだ、カカシも狙ってた?」
「まさか。名前しか知らない子だよ?」

肩をすくめてそう言うと、くノ一は「お堅いのね」と流し目を残して女子トイレへと消えていった。

「名前と・・・身体しか・・・ね」

フ、と自嘲気味に笑いながら用を済ませ席に戻ると、どこからどう見ても酔っ払ったゲンマが尚も酒をあおり続けていて、流石にカカシがジョッキを奪い取った。

「そろそろお開き」
「え〜〜・・・了解っス」

名残惜しそうに席を立ち「の分はオレが払うよ」とヤケにキメ顔で言い、二人は先に店の外へ出ようとした。

「ちょっとーわたしたちの分も払いなさいよー」
「や、それはカカシ上忍が払うって言ってました」
「ま、いいでしょう」
「あら、言ってみるものね」

と言いつつも何割か払ったくノ一もゲンマたちの後を追うように店を出た。

「ありがとうございましたー!」

元気な声に見送られたあと、四人はふぅ、と夜風にあたってアルコールで赤くなった頬を冷ましていた。

の家は?どっち?」
「えっ、あ、あの、向こうです」
「そう。ならオレもそっちだから送っていくよ」

なんて正反対のところに住んでいるゲンマが優しく微笑んでいて、結局のところ全員そっち方面だとわかった瞬間、分かりやすく顔をしかめていた。

は明日は任務なの?」
「はい、ツーマンセルだと聞いてます」
「あ、それ俺とだよ」
「え!!」

前を歩くゲンマとに声をかけると、途端には嬉しそうに振り向いて顔を輝かせた。
分かりやすいやつ・・・と呆れ気味に心の中で呟いた。

「チェッ、またカカシさんかよ」
「代わろうか?て言いたいところだけど明後日から里外だもんな」
「そうなんだよな〜。とツーマンセル行きたかったよ」

と自然にの肩を抱くゲンマは流石のものだと後ろから眺めてぼんやりと思っていた。

「・・・・ねぇ、わたしたちはあっちの道から帰りましょうよ」

それを見たくノ一は気を利かせてコソコソとカカシに囁いた。

「そうだね。じゃあお二人さん、俺たちはこっちなので」
「あ、そうなんスね。お疲れ様です」
「えっ!あ、あの・・・!」
「じゃあね〜・・・あ!そうだ、聞こうと思ってたんだ!あのさゲンマ」

なにかを思い出したのかくノ一はゲンマと話し込み、その隙にがカカシの元にオドオドと歩み寄ってきた。

「あ、あの、明日の任務、ご一緒って・・・・」
「任務概要、俺が預かってるから。ま、気になるならウチに来なよ」
「・・・・え?」
「さ、カカシ帰ろう」
「あぁ」

中途半端な物言いのまま立ち去ろうと、なにか言いたげなに気づかないふりしてカカシとくノ一はクルリと違う道へと進んだ。

「あ〜あの二人、今夜は何かあるかもしれないわね」
「はは、そうだねえ」

我ながら乾いた笑いだと思いながら感情を見せないようにそう答えると、隣のくノ一がこちらを見上げている視線に気がついた。

「・・・・わたしたちも今夜なにかある?」
「さあ、どうだろうね」
「な〜んてね!アハハ!」
「お前も相当酔っ払ってるね」

ケタケタと楽しげに笑うくノ一に心底呆れたため息をつきながら、それでも一応は家の前まで送り届けた。

「じゃあ」
「うん、またね〜・・・あっ!」
「ちょっ!」

忍らしからぬ酔っ払った足がもつれて派手に転びそうになったところを、反射的に腕を伸ばして倒れかかったくノ一の上半身を抱き支えた。

「ゴメンゴメン、こんな酔っ払っちゃってたなんて」
「はぁ・・・家の中まで連れてくから。カギは?」
「えーーっと・・・」

ゴソゴソとポーチを弄るくノ一の肩を抱きかかえながら、なんとか玄関のドアを開けて中へ放った。

「ありがと〜また飲み行こうね〜」

そのまま玄関で寝てしまいそうなくノ一だが、なんにせよ家まで送りつけたと安心して漸くカカシもその場から帰った。


家に帰ってすぐだった。
荷物を置いてベストを脱いでいた時に玄関のドアを控えめに叩く音が聞こえた。

「・・・・」

なんとなく察したカカシはすぐにドアを開け訪問者を中へ向かい入れた。

「どうしたの?」
「あ、あの・・・・・」

やはり思った通り訪れてきたのはだった。

「明日の・・・任務のミーティングを・・・」
「へえ。真面目だね」

を中に入るよう促し、要望通り今日受け取った任務概要を荷物から取り出した。

「立ちながらってのもアレだし、どうぞ」
「は、はい」

ソファを指し座らせ、その隣にカカシもドサッと座った。

「・・・・!」

座った勢いの風に、はハッとした顔をカカシに向けた。

「えーっと目標地点は・・・あぁ、あの谷底か。明日の丑の刻に門を出るか」
「・・・・・」
「聞いてる?」
「・・・あッ」

せっかく広げている任務概要ではなくカカシの方を向いて固まっているに鋭い視線を向けた。

「あの・・・あの、さっきカカシ上忍は・・・・」
「なに?」

脚を組み替えるふりをして、少し身体をずらしてあえてに密着するように身体を動かした。

「・・・・先輩と・・・その・・・・」
「さぁ。どうだろうね?」

あのくノ一と何度も密着したのには意味があった。
案の定、その残り香に気が付いたは見るからに戸惑っている様子で聞くべきかどうかを迷うように目を泳がせていた。

「敵は霧隠れの抜忍か。奪われた宝珠を取り返す・・・か」
「・・・・・ッ」

隣に座るに概要書を見せるようにしつつ、密着した肩を抱くように腕をまわした。
ビクリと震わせた肩の動きがダイレクトに伝わってくる。

「霧隠れの忍の独特な忍術には遠隔での応戦が必須だな」
「わ、たしが援護にまわるので」
「あぁ。おそらく向こうは近距離戦を苦手とするから隙をついて俺が前に出る」

表向きは真面目に任務概要を前に話し合っているものの、肩の上に置いた手のひらでの肌に触れ指先で首元を撫でた。

「ん・・・」

明らかには集中していなくて、足をモジモジと動かしながら俯いていた。

はどうしたい?」
「どうって・・・・」

どちらともとれる質問にさっと目を伏せただが、ゆっくりとカカシの身体を撫でるように視線を下から上へ動かした。

「わ、たしにも・・・・」

熱に浮かされたようにそう言うと、の手がカカシに太ももへスルスルとのびた。

「最初からそう言えばよかったんじゃない?」
「違、わたしは・・・任務の・・・」
「いいよ、じゃあ打ち合わせしよう」
「え?」





「宝珠が奪われた時に村が襲われたようだし、ビンゴブックにも載ってるから逮捕というよりは始末かな」

概要書のページをめくる。

「そうなると戦闘は避けられないか。先に連携パターンを決めておいたほうが良さそうだな」
「・・・・・・」
「Aランク任務、俺とのツーマンセル。期間は二日。どう?一通りさらったけど」
「ん・・・・」

そう言って視線を下ろした先は、カカシの脚の間に座り、そそり立ったものに対して必死に口と手を動かすだった。

「咥えながらでも返事くらい出来たんじゃない?」
「あ、ご、ごめんなさ・・・」

慌てて口を離した途端、口の端に唾液が垂れパッと口を押さえた。

「挿れてほしい?」
「・・・・あの・・・」

そそりたったものを目の前にして言う言葉ではないと思うが、それ以上に欲情した目を向けるにカカシは手を差し伸ばした。

「おいで。ズボン脱いで、上に跨ってごらん」

そう言うとは少し恥ずかしそうに頷きながら、カカシの言葉に従うようにズボンと下着をそっと脱ぎ、ソファに座るカカシの上に跨った。

「そんな目で見ないでよ」
「えっ!あっ・・・・・」

少し口を開け、顔を赤くしたはまるで発情という言葉がぴったりで、熱のこもった目線がカカシの瞳に絡みついた。
カカシの言葉に俯いたの腰を持ちゆっくりと降ろさせ、中には挿れずに表面にヒタリと宛てがった。

「んッ・・・!」

ビクリと体を震わせ、カカシの肩に回した手をギュッと強く握った。

「カカシ上忍・・・」

ひとりでに勝手に擦り付けるように動かされる腰の動きにカカシはの腰に手をあてがうだけで傍観していた。
気持ち良さそうな顔をして、時折チラリとカカシの様子をみては恥ずかしそうに目を逸らす。
そんなを目の前に思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。

「ふっ・・・・」

我ながら単純なやつだと思いながら、の腰を少し持ち上げてこれ以上なく張り詰めた自身を思い切り中へ挿れ込んだ。

「あっ・・・!!!」

突然の挿入には背中を反らし、その大きな快楽に耐えていた。
そんなことも気にせず、思うがままの腰を自由に動かし快楽を求めると、涙目になりながらは甘い声を上げ続けた。

「あっ、あ、カカシじょ、にんっ!」
「・・・・・」

突如動きを止め、目の前で善がるの首に手を伸ばし、着ていたシャツの首元をグイッと引っ張った。

「ねえ・・・」
「!」
「この下手くそな跡つけたの、誰?」

服の下から現れたのは、白い肌に小さくつけられた赤い印。
無表情のまま尋ねると、は一気に顔を青ざめさせた。

「こ、これは・・・」

慌てて首元を手で隠そうとするがその手を抑え、答えるまでジッと見つめた。

「あの・・・」
「ゲンマでしょ?」
「・・・・・」
「アンタからもゲンマのにおいがプンプンするし」

言葉を続けるたびにの顔色が悪くなっていく。

「ゲンマのところでも一発ヌイてきてあげたの?」
「ち、ちが、ちがいます!ゲンマさんとは・・・なにも・・・」
「へぇ。なにもなくて、首元にキスマーク付けられるんだ」
「これは・・・あッ、待って、カカシ上忍!」

その間にも腰を突き上げ、歪んだ表情で必死にカカシに訴える。

「もしかして誰でもいいんじゃないの?あーあ、ガッカリだよ、おれ」
「そんな!あっ、ち、ちがっ」
「ゲンマと一回寝てくれば?」
「や、カカシ上忍・・・!」

ポロポロと涙をこぼしながらもカカシから与えられる快楽に体は素直に反応している。

「わたしは・・・、カカシ上忍じゃなきゃ、イヤです・・・!」
「・・・・・」

なんとか絞り出された言葉に思わず閉口してしまう。
こうも直球に言われるとなんて返したらいいのか答えが見つからない。

「明日からゲンマに会いづらいな」

ようやく取り繕えた言葉があまりにも不恰好で、首元に残る赤い印の上に口付け、すべてのものをかき消した。

「ゲンマに見せつけてやりなよ」

ニヤッと楽しそうに笑った自分の顔は、なんて歪んでいるのだろうか。









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