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lover6 「おかえり、ちゃん」 がハヤテを見送った後、玄関のドアを開けようと振り向くと、そこにはカカシがいた。 玄関のドアに寄りかかり、腕を組んでいた。 「カ、カカシさん!いつからそこに?!」 「本当に今さっき。どうしてもちゃんに伝えたいことがあって・・・」 「伝えたいこと・・・?」 「うん」 やけに真面目な顔。 ついその顔に決意を決めてしまった。 「・・・私も伝えたいことがあります」 カカシを家へと入れ、適当な所に座っててもらうようにした。 「お茶、淹れますね」 「ありがと」 緊張しているのが自分でも分かった。 指が震えている。 『な、なんで・・・?』 つい、震えている指からコップを落としてしまった。 「あ!」 目を瞑って衝撃音を待ち構えていたが、がしゃん、と派手な音はいつまでたっても聞こえなかった。 そろり、と目を開けてみる。 「ふぅ、危なかった。どうした?大丈夫?」 「カカシさん!あ、ありがとうございます」 床からあと数センチ、と言うところでカカシがコップを掴んでいた。 カカシが座っていたのがダイニングの机の椅子。 そこから台所まですぐに来る、ということは。 「瞬身・・ですか?」 「うん。こんなんで忍術使っちゃ馬鹿らしい?」 「い、いえ!むしろ・・・嬉しいです。ありがとうございます」 にこ、とカカシに笑いかけると、カカシも笑い返してくれた。 「ちゃん、ちょっとこっち来て」 「・・・?はい」 ふわり、と一瞬風を感じた。 『カカシさんの・・・におい』 忍びであるからには匂いだなんてあってはいけない。 でもカカシにはなにか、甘いような、ほろ苦いようなにおいがした。 その匂いを感じた次の瞬間。 カカシの唇が、の唇へと重なりあった。 「ん・・・!」 「・・・」 くい、と反射神経で首が逃げるが、カカシの手がの頭を押さえこんでいて動くことができない。 長く、甘い口づけ。 漸く口が離れた。 「・・・俺―――」 カカシが何かを言うより前に、からカカシへと口づけた。 「私、カカシさんが大事な人なんです。カカシさんが大事なものを作らないって分かってます。でも敢えて聞きます。 カカシさんの・・・大事な人・・は、誰ですか?」 そうカカシに訴えかけた。 するとカカシは、本当にうれしそうに笑った。 「俺の・・大事な人は、ちゃん」 そうカカシは言ったあと、負けたよ、と笑った。 「負けた?何にですか?」 「俺、最初は、俺の中にが入ってきたら、失う時が辛い・・・。辛い最後なら、始まりなんていらない―なんて思ってたんだ」 とん、とカカシは台所の流しに寄りかかった。 「その意思は変えるつもりはなかったんだ。正直言って。後々辛い目に会うのはごめんだからねぇ?」 はは、と自嘲気味に笑った。 「でも急に思ったんだ。溜めてみようかなって。それは相手がだからだったと思う。・・・、ありがとう」 ぎゅ、と目の前にいたを抱きしめた。 「私こそ・・・。こんな私の言ったことを受け止めてくれて・・・私を好きになってくれてありがとう」 もぎゅ、と抱きしめ返した。 そしてどちらからとでもなく、再び口づけを交わした。 鼻腔に感じる仄かなカカシのにおい。そしてコーヒーの匂い。 コーヒーの匂い? コーヒー・・・。 コーヒーカップ・・・・・・ 「ああああ!」 「え?!」 すぐにカカシから離れ、時計を見た。 「1時・・・」 そしてそのままがくーん、と床に倒れた。 「・・・?」 心配そうに顔を覗くカカシ。 「カカシさん・・・私・・・」 「ん?」 「私、仕事さぼっちゃった・・・!」 悲痛な顔して何を言うかと思えば。 「だいじょーぶでしょ?一回くらい」 「いえ!全然大丈夫じゃないんです!特に、特上舎は!」 「なんで?」 「この時間、みなさんカフェインなしじゃ起きてられないんです!」 「・・・あはは」 はわたわたと外出の準備を始めた。 「カカシさん、すぐなんでちょっと待っててください。換えてきますで!」 「歩いて行くの?」 「いえ、走って!」 ばたん、と玄関のドアを閉め、は行ってしまった。 「初めて家に入れた男を一人残して。案外、用心ないんだねぇ・・・?」 カカシは少し嬉しくなり、瞬身でのところへ行った。 「うわ!カカシさん!家にいてもいいんですよ?」 「こうした方が・・・・」 「うわあ!」 を抱え込み、瞬身。 着いた場所は特上舎。 「早いでしょ?」 「・・あ、ありがとうございます」 少し放心状態の。 そしてすぐに意識を取り戻し、わたわたとコーヒーカップを取りに行った。 がちゃ、とドアを開けると、そこには案の定。 机につっぷす人、からだは起こしてあるが、頭がぐらぐらしている人。 床に寝っころがって寝る人。むしろ見てて気持ちがいいくらいだ。 「遅れてごめんなさーい・・・。コーヒー入れ替えに来ましたー・・・」 ちょっと申し訳なさを感じて、小声で入っていった。 すると辛うじて起きていた数人が手を挙げて返事をしてくれた。 「さん、ごめんなさい。私が早めに切り合げなかったから・・・」 さっきの服ではなく、忍服へと戻ったハヤテがひそひそと話してきた。 「ううん。大丈夫。お仕事、お疲れ様」 こと、とコーヒーカップを置いて、アツアツのコーヒーカップを注いであげた。 「・・・すみません」 「さっきの返事は・・・・明日でいいかな?」 耳元で呟くと、ハヤテがむせかえった。 「ごほ!ごふごほ・・・!」 「わ!ご、ごめん!」 さすさすと背中をさすってあげた。 「ごほ・・ありがとうございます。返事、いつでも大丈夫なので」 「うん。じゃ、頑張ってね」 「ええ」 いったんハヤテから離れ、コーヒーカップを補充した。 「じゃあ、がんばってくださーい」 コーヒーに群がる特上たちに向かってエールを送り、特上舎を出た。 扉の外では、カカシが本を読んで待っていた。 が視界に入ったとたん、ぱたん、と本を閉じ、ポーチへとしまった。 「お待たせして、すみません」 「いーえ。次は待機所?」 「はい。・・・あの〜」 「なに?」 「待たせてるの申し訳ないので、家に戻っててくださいよ・・・」 そう申し立てると、カカシは笑った。 「大丈夫。それに、待機所には俺も用事あるから」 「?」 「さ、行こ?」 「は、はい」 ぱし、と手を取られ、俗にいう恋人繋ぎで待機所へと向かった。 「カーカーシー!!!!」 「やっぱりまだいたのね」 待機所のドアを開けたとたん、ガイの蹴りが飛んできた。 それをすかさず避けるカカシ。 「なぜこの時間にといる!?しかもその手はなんだあああああ!!」 「あぁ、紹介が遅れたね。ちゃん、俺の彼女だから」 「ぬおおおおおおおお!!」 『俺の・・か・・・彼女・・・』 はついかあああ、と顔を赤らめてしまった。 「だから、手を繋いでるの」 ぐい、と繋いでいる手を挙げたカカシ。 「ガイさん、ごめんなさい・・・。私にとってガイさんはとっても大事な人だけど、恋人じゃなくて・・・友達でいたくて」 「ぬう・・・」 「あの・・・できればまだ友達でいてください」 ガイに一礼をして、コーヒーを入れ替えに行った。 「カカシ・・・」 唸るようにガイがカカシに話しかけた。 「を・・を泣かせたらただじゃ済まないからな」 「はは・・・わかってるよ」 ガイはかみつくような・・・暑苦しいような殺気を漸くおさめた。 「ま、あきらめてちょうだいよ。は俺のなんだし」 「・・・やっぱむかつく!!」 ガイは叫びだして待機所から飛び出して行ってしまった。 「あれ?カカシさん?ガイさんは?」 声が急になくなったのに気がついたのか、はカカシに聞いた。 仕事が終わったのか、帰る準備をしていた。 「気にしなくていーよ。さ、帰ろっか?」 「・・・はい!」 今度はの方からカカシの手を握りしめた。 「俺の家くる?」 「え?」 「一緒にゆっくりしよ」 「・・・はい」 真っ赤になって返事を言ったに、カカシは少し照れた。 まだ、わからないから。 あなたに関して何もわからないから。 少しずつ教えて? 大事なあなたを、もっと知りたいから。 <<<5 Lover TOP >>>7 NOVEL TOP |