lover5 ガイさんが連れて来てくれたカレー屋さん。 お店に入った時からなんか目に沁みるような・・・? 「がーはははは!どうだ!ここのカレーは!」 「・・・」 とガイの前には湯気をたてているカレーが。 そのカレーには二つには大きな違いがある。 ガイの目の前にあるカレーは、『激辛』である。 ふつふつとなぜか泡立ち、色は赤を通り越し、もはや黒である。 隣にいるだが、ガイのカレーから漂ってくる匂いで目から涙がでてきた。 「んー気にくわんな」 「な、なにがですか」 「なんでは甘口なんだ!ここは激辛がうまいんだぞ!」 「いやいや・・・私には無理です・・・」 甘口ですら、の口では激辛だった。 もう辛いってゆうか痛い。 口中がひりひりしてしょうがない。 水を飲んでも痛い。 もう食べられそうな気がしない・・・。 「ガイさん・・・辛いですこれ・・・。辛いし、辛い・・・」 「ぬ!?ははは!漢字が一緒で分かりづらいぞ!」 「あ・・・からいし、つらい・・・です」 より先に食べ終わったガイは、ちらちらとの残っているカレーを見ている。 はスプーンを持ったまま硬直していた。 「・・・」 「はひ」 舌がひりひりしてうまく喋ることができない。 ガイはごくりと唾をのむと、真剣な顔をしてに言った。 「そのカレー・・・・・・食べてもいいか?」 なにを言われるかと、身構えていただが、そんなことかと思い、肩の力を抜いた。 「全然いいんですが・・・」 「ん?」 すでにから皿をもらい、カレーを食べているガイは、声のトーンが変わったに気がついた。 「あの・・・せっかく誘っていただいたのに残してしまい、本当にごめんなさい・・・」 ガイの方に向き、きちんと謝った。 するとガイは動かしていたスプーンをからん、と皿の上に落っことした。 「ガイさん?落としましたよ・・・?」 「・・!」 「は、はい・・!」 すごい剣幕でガイがの名前を呼び、そして手を痛いほど握り締めた。 「!俺は猛烈に感動した!そのしおらしさ!」 「・・は、はぁ」 「!好きだ!」 「・・・はい?!」 「好きだ!俺と付き合ってくれ!!!!!」 きゅぴーんとガイはお決まりポーズをとった。 「えぇ・・・?!えーっと・・・えぇ?」 急な展開に、の頭はついていけなかった。 「そ、そんな急に返事はできんだろう。明日まで待つからな、俺は!じゃあな!」 ガイは顔を真っ赤にして店を出て行ってしまった。 「・・・これって・・・・」 『告白・・・・なの?』 「ガイさんが・・・私に・・・」 確かにガイは親切にしてくれて、一緒にいてすごく楽しい。 でも、恋人とかの関係じゃなくって・・・ 友達でいたくて・・・ もしあの告白を拒否したら、もう今までとは同じ関係じゃなくなってしまうかもしれない。 でもガイはそういう人じゃない。 大切な、友達だから。 ぽーん、ぽーん カレー屋においてある時計が、鳴り始めた。 「10時・・・。はや・・・」 そろそろ店を出なければ、と椅子から立ち上がる。 「お金・・・いくらだろ?」 机の周りを見渡し、レシートを見渡すが、どこにも見当たらない。 「あのー・・・レシートありますか?」 店の奥にいる店主に話しかける。 すると店主はにっこりと笑って、に言った。 「あの人が払っていったよ。その人から伝言があるんだよ、あなたに」 「私に・・・ですか?」 「ああ。『忘れてくれ!!!でもカカシの元にだけはああああ!!!』だそうだ」 「・・・・」 はぽかーんとしてしまった。 「カカシの元にだけはーって・・・。ガイさん知ってたの?!」 想定外のことで、思ったことを口走ってしまった。 すると店主はからからと笑った。 「愛されてるねー。いいねー青春だねー」 「せ、青春だなんて・・・。あ、カレー、ご馳走様でした!美味しかったです。辛くて食べきれなかったけど・・・」 「あはは!また来てくれよ!甘口でもいいから完食してくれよ!」 「ふふ。はい」 は深く礼をして、カレー屋を出た。 店を出ると、ふわ、と心地の良い風が頬を撫ぜる。 星がキラキラと光っている星空の下、時計をちらっとみた。 「・・・10時か・・・10時?・・・10時!!」 は一人で叫び声をあげてしまった。 「ハヤテとの約束!」 は急いで待ち合わせ場所、自分の自宅へと帰って行った。 「はぁ・・・はぁ・・・」 「ごほ・・」 「遅れて・・はぁ・・ごめなさい・・・」 「あの・・・大丈夫ですか?」 急いで走って来て、息が切れてるをなにより最初に心配したハヤテ。 「ほんとごめんね・・・はぁ・・・いそいで走ってきたんだけど・・・10分も・・・」 「いえ、そうゆうの私、気にしませんよ」 「はぁ・・・ありがとう。優しいね、ハヤテは」 本当にハヤテの心遣いが嬉しく、にこ、とハヤテに笑いかけた。 するとハヤテもにこ、と微笑み返してくれた。 ハヤテは忍服ではなく、黒のスーツのような、シックな恰好をしていた。 「さ、行きましょう?実は私、結構楽しみにしてたんですよ?」 「本当?そう言われると私も嬉しい」 ハヤテがリードしつつ、二人並んで、洒落たお店へと向かった。 「ここです。結構お酒おいしいんですよ」 「高級そう・・・。ハヤテに払わして平気?」 「なめないでくださいよ」 ふふ、と笑ったハヤテに思わずも微笑んでしまった。 「マスター、彼女にホワイトレディを。私にジントニックをお願いします」 静かな店内。 ジャズが流れていて、大人な雰囲気だった。 カウンター席にハヤテと隣同士で座った。 するとさっそくハヤテが注文をとってくれた。 「あ、ありがとうハヤテ。私、こうゆうの分かんないんだよね」 「そうなんですか?でも私もそう詳しくないんですよ」 にこ、とハヤテはを安心させるように笑ってくれた。 すると目の前にいたバーテンダーが、ことり、ととハヤテの前にグラスを置いた。 「わ、すご。かわいい〜」 「ホワイトレディって、さんに似てると思いませんか?」 「え?」 ハヤテはにこにこと笑っている。 「私の中のさんのイメージは白なんですよね」 「白・・かぁ。なんか嬉しい」 「ふふ。あれ?今日、スカートなんですね」 「あ、うん。・・・似合わないんだけどね」 いつも仕事で来ているのは動きやすさ重視のパンツスタイルで、スカートなんてめったに履かなかった。 だが今日はせっかくガイにもハヤテにも誘われているんだし、と気合を入れてみたつもりだった。 「いえ、すごく似合ってますよ。可愛いです」 恥じらいも特になく、さらっとハヤテはに言った。 「え・・・と。・・・その・・・あ、ありがとう」 言われ慣れていないは、顔を真っ赤にして、どう返事をしたらいいのかわからず、とにかく礼を言った。 「・・・では、飲みましょうか?」 「は、はい」 かちん、とグラスを合わせ、一口ゆっくりと飲んでみた。 「どうですか?」 初めて飲む。 想定外にあっさりと、ふんわりと飲みやすかった。 「すごい美味しい・・・。こんなに飲みやすいんだ・・・」 「ごほ。この乳白色は、ホワイトレディ・・・白い貴婦人を表しているんですよ」 「白い貴婦人・・・。ロマンチックだね〜。私には合わないよ、やっぱ」 ふふ、と笑ってしまった。 「見かけによらず、アルコール高いんです。気を付けてくださいね?」 「うん。私、お酒は強いから大丈夫。ハヤテは・・・ジントニックだっけ?」 「ええ。ビールみたいなもんです」 「ふ〜ん」 再びくい、とグラスを傾ける。 かたん、と机におくと、ハヤテがやけに真面目な顔でのほうを向いた。 「ん?なに?」 「・・・さん」 ハヤテは一瞬目をそむけ、そして決意したように再び視線を合わせた。 「私は・・・さんのことが・・・」 「・・・?」 気がついたら目の前にハヤテの顔。 ハヤテからの急なキスだった。 「!」 ハヤテはすぐに口を離した。 そしてぐい、とジントニックを飲みほし、に向き直った。 「ハヤ・・・テ?」 「私、さんのことが好きなんです。カカシさんもガイさんもいるのは分かっています。・・・でも!」 「ハヤテ・・・」 「私はさん、貴女しか考えられないんです」 視線を絡ませたまま離せない。 なにか言おうとするが声がでない。 口が少し開くが、声帯は震えず。 驚いているの姿を見て、ハヤテは苦笑いをした。 「こんなこと・・・急に言われても困りますよね・・・。あの・・・返事はいつでもいいので、お聞かせくださいね?」 ハヤテは泣きそうに笑って、バーテンダーにもう一杯、とグラスをからん、と鳴らした。 「ハヤテ・・・」 ようやく出た自分の声は、か細く、震えていた。 「さん、飲みましょう?」 ハヤテはバーテンダーからもらった新しいグラスを傾け、を誘った。 「・・・うん」 もグラスを傾け、一口、ホワイトレディを飲んだ。 「では、また明日。お気をつけてお帰りください」 「いやいや、ここもう私の家だから」 いい感じに酔ってしまい、そよそよとふく風が心地いい。 ハヤテから告白された後、ハヤテは全然違う話をした。 仕事の話だったり、アンコの話だったり。 時計の短針が12を超えた頃、店を出たのだった。 ハヤテがににこっと笑って背を向け、帰って行った。 「・・・ハヤテ!」 ついその後ろ姿に呼び止めてしまった。 大事なことを言ってない。 「ありがとう」 そう言うと、ハヤテは泣きそうな顔をして、手を振った。 そしてすぐに踵を返し、帰って行った。 <<<4 Lover TOP >>>6 NOVEL TOP |