少し時は戻って、何回ついたかわからないため息をもう一度はいたカカシ。 目を閉じては、ぐるぐると巡り巡る思考に嫌気がさしてきた。 lover4 やっぱり来るんじゃなかった。 の言葉が刺さり、家に帰ったものの、特にすることもなく。 思い浮かぶのはだけ。 待機所へと戻り、に会おうと、もう一度思いを伝えようと思ったのだった。 が、待機所へ行くと、とても騒がしかった。 「がーはははっ!カカシよ!俺はと夕飯を食べに行くんだ!!いいだろう!」 ガイがこれでもか、というほど自慢をしてきたのだった。 ガイなんての眼中にないと思うが、憎い気持ちが生まれてくる。 「はいはい。優しいちゃんはかわいそうなお前に乗ってやってあげただけだよ」 自分に言い聞かせるように、ガイに言うと 「デートだっ!!」 びしぃっと決めのポーズをされた。 話が通じない珍獣だ。 ドアの横の壁に寄りかかり、ガイが急な任務に呼ばれることを祈っていた。 すると、壁の向こうからの気配が感じ取れた。 時計を見ると、5時。 が来る時間だった。 ドアが少しだけ開いて、腕がひょこっと出てきた。 「・・・」 なにをしたいのか、すぐにわかった。 手をもがくようにして動かし、何かを探っていた。 たぶんこれだろうなぁ・・・。 カカシの隣に置いてある、コーヒーカップが入ってる袋。 もがく腕は袋を手に取ろうと宙を泳ぐ。 細くて形のいい手が、カカシの目の前にある。 これで手、握ったら・・・。 カカシは無意識のうちに腕がの手に伸びていった。 柔らかそうな手のひら。 滑らかそうな手。 するとがびしぃっとカカシを指さした。 「!!」 きっと偶然なのだろう。 にしてみれば、置いただろうと思う場所を指さして見たんだろう。 だが、腕を伸ばしかけていたカカシはびっくりして腕を引っこめた。 『まったくこの子は。変にガードが堅いねぇ』 カカシはふふ、と微笑んで、遠くにあるコーヒーカップの袋をの手の近くに置いてやった。 するとは漸くそれを掴んで、すぐに行ってしまった。 ガイと食事をしに行ったあと、きっとは帰るだろう。 ゆっくり話せる時間はないだろう。 だって仕事があるのだから。 仕事が終わって、が家へ帰る時に。 その時に会えたら、話そう。 思いのすべてを。 大事なものをため込みたくなったんだ。 カカシはふぅ、とため息をつき、瞬身で外へとでた。 『あぁ、そういえばそろそろ買い物行かないと・・・』 カカシは木の葉横丁へと行き、ぶらぶらと買い物をしていった。 そして必要なものをすべて買い、自宅へ帰ろうとした。 するとその時。 「なに買うの?」 と、の声が聞こえた。 声がした方を見ると、ハヤテとが仲よさそうに歩いているところだった。 時折は笑い、ハヤテも優しく微笑んでいた。 『ハヤテ・・・か』 カカシはひょい、と店の屋根へと昇り、二人の様子を見た。 するとハヤテが急にむせた。 なにかと思って耳を澄ませば。 「ごほ・・ええ。あ、そうだ。そのご夕飯がすんだら飲みに行きませんか?」 「え?」 「奢りますよ」 「・・・じゃあ行こうかなー?」 「ふふ、現金な人ですね」 ハヤテが幸せそうに笑っていた。 『ふーん・・・』 なんだか、おもしろくない。 買い物を終えた二人は、十時にの家へ迎えに行く、とハヤテが告げ、別れて行った。 とりあえず、カカシはに話しかけるべく、ゆっくりと気がつかれないようにの後を追った。 すると、はゆっくりと歩きながら、なにかを呟いていた。 何を言ってるか聞きたくて、少し近づいてみた。 「・・・なんだかカカシさんに会いにくいな」 あぁ、さっきの別れ際か。 たしかに突き放された感があった。 自分に非があったかもしれない。 の心を傷つけてしまったのかもしれない。 そう考えると、目の前をぽつりぽつりと歩いてるが、とても寂しそうに見えた。 『俺が・・・』 傷つけたのかもしれない。 すぐにでも謝ろうと、の肩に手を触れようとした。 するとぽつりとがこぼした言葉。 「大事な・・・人だからなのかな」 「!」 あまりに驚いて、声が出そうになった。 手が宙を浮いたまま固まる。 「そういえば、カカシさんって茄子のお味噌汁すきなんだっけな」 ふたたび驚愕した。 なぜ自分の好物を知っている? どきどきと、心臓の音がに聞こえてしまうのではないかと思うほど大きく鼓動する。 「今日逃げちゃったから、そのお詫びに今度夕飯でもおごろうかな・・・」 これ以上は声を我慢せずに驚いてられない。 すぐに瞬身での目の前へと現れた。 そして約束をした。 しかも『ちゃんの家で』という条件を増やして。 するとは顔を真っ赤にし、 「独り言聞いてました・・・?」 と聞いてきた。 なにもかも投げ捨てて、プライドとか、そうゆうのを全部放って、今ここでを抱きしめられたらどんだけ楽なんだろう。 好きだよ、と言えたらどんなにいいだろうか。 それができない、さびしい心情。 今できるのは、ただの恋人ごっこ。 隣に並んで、買ったものを持ってあげて。 世間話で盛り上がって、家に着いたら、お別れ。 の両親はいなくて、一人で夜遅くまで仕事をしている。 そんな頑張っている姿を見た火影様が、少し楽で給料が高めの仕事を勧めてくれたんだろう。 失うことを最初からわかってるんだったら「大事な物」はいらない。 俺の命が尽きるか、向こうが離れて行くか。 「大事な物」・・・・ちがう。 は、大事な人。 命を尽くしてでも、守りたい人。 <<<3 Lover TOP >>>5 NOVEL TOP |