dorama5



迎えた本番当日。

今日だけは遅刻できないと、カカシは早めに慰霊碑に向かい、その足で集合場所へ行った。
珍しく、時間ぴったりの13時にはアカデミー前に到着することができた。
が、集合場所には、不安そうな顔をしたしかいなかった。
を見つけた途端、少しだけ足が止まった。

昨日のキスを思い出した。
ついそのままにしてしまっていたが、あれからなにも解決していない。

そういえば、あれだけ時間に厳しいアンコさえもいない。
誰もいないくせに、だけはいた。

「あ、カカシさん」

がようやくカカシに気がついた。
気付かれてしまったからにはどうしようもなくなって、のいるところへ行った。

「おはようございます」
「おはよ」
「・・・」

気まずかった。
並んで立って待っているものの、お互いもじもじと視線を外して会話も交わすことがなかった。

『なんで他のやつらはこないんだ?』

カカシがふと、アンコの隠しきれていない気配を感じとった。

『なにコソコソ隠れてる?』

カカシはアンコがいる場所へ目線を向けた。
すると、ばれたと気が付いたひょっこりアンコが現れた。
カカシの意図を感じ取ったアンコがこっそりと答えた。

『集合時間、ずらしておいたのよ。ちゃんとやれよ〜!』

ニヤッと笑って、さらに付け加えた。

を泣かせたらただじゃおかないわよ』

と、ビシィっと中指を立てた。
そしてアンコは手を振り、瞬身で消えた。
そのあとはどんなに気配を探っても感じ取ることはできない。
本当にどこかへいってしまったようだ。

『腹を括るしかないのね』

カカシはふぅ、と息をつき、そのガキじみた行為に苦笑いをしてしまった。

「あー?」
「は、はい!」

びく、とがカカシを見上げた。
お互い探り探りで相手の様子を窺う。

「昨日さ、お前・・・」
「あ・・・あれは・・・すみませんでした・・・」
「いや、全然。ていうかむしろ・・・」

言葉がつまり、頬をかく。

「嬉しかった、というか・・・」

ちら、とを盗み見ると、カカシの目を見たまま、頬だけをピンクに染めていた。

「カ、カカシさん。それ、本当ですか?いつもの冗談じゃないんですか?」
「・・・まーね、本心よ」

照れ隠しに、の頭にぽん、と手を乗せ、そのまま見つめられている目を覆い隠した。

「カカシさん、私いま、びっくりしすぎて、頭真っ白なんですけど」
「はは」
「なのに大音量でアカデミーの校歌が流れてるんです・・・」
「昨日の俺とまったく同じだ」

手を離すと、くすくすとは笑った。

「びっくりすると校歌が流れるんですね」
「そうみたいね」

さっきまで張りつめていた空気が一変して、ほんわかとなごんだ。
にこにこと幸せそうに笑うを見て、ついカカシも笑ってしまう。

「あれ、みんな来たみたいですよ!」
「ほんとだ」
「あのアンコが30分も遅刻・・・」
「・・・あはは」

こちらに向かってくる軍団の先頭に立っているアンコがカカシに口パクでまた言った。

『やるじゃん』
『うーるさいよ』

アンコがに走り寄った。

「ごめーん、ちょっと寄り道しちゃってー」
「みんな来ないから焦ったよ〜!ほら、早く中で準備しなきゃ!」
「そうね、中に入りましょ」


劇をするのはアカデミーの体育館。
その体育館に小道具大道具を運び、舞台設置を施す。
その間に舞台に乗る忍たちはそれぞれの衣装に着替えた。

「用意しながらでもいいから聞いてー」

アンコの声が響き渡る。

「いま、外の待機列を見てきたけど、なんと大盛況よ!アカデミー生だけじゃなくて、いろんな年齢層が見に来てるわ!」

ざわざわと緊張と興奮で劇場内がざわめく。


「さあ、あと少しで開場よ、気合いれてね」




アンコの激励と共に開場を迎え、多くの観客が体育館内になだれ込んできた。
一方舞台裏では・・・。


「うわあ・・・いっぱいだあ」

幕から客席を隠れ見て、一気に緊張した

「だいじょーぶ。お前が失敗してもみんなフォローしてくれるよ」

ひょこっとの上からカカシも客席を覗き見てみる。

「失敗なんかしないもん!」
「オチビだから仕方ないもんねえ」
「また出たーオチビって!」
「だってオチビなんだからしょうがないでしょーよ」

さっきまでのぎくしゃくはどこへやら、今までのカカシとだった。

「あーこの夫婦漫才を見るのも最後か」
「面白かったのにな」

「め、夫婦漫才?!」

が二人の後ろで話していた忍をがばっと振り返った。

「どうみても夫婦漫才だろ!」
「そーそー。おもしろかったのにな〜」

ははは、と笑う二人。
それってどういうこと、とがキラキラと尋ねようと口を開けた時、


「はーい始まるわよー。黙りなさーい」

アンコが真剣な顔をしてやって来た。

「せっかくだから一言」

ぼろぼろになった台本でポンポンと肩をたたきながら、アンコはその場にいる全員を見渡した。

「全力で楽しむわよ!」

周りの忍びたちは客席には聞こえないように、オォーー!と、興奮した声を上げた。
満足そうに微笑んだアンコは、幕を上げるスイッチに指をかけた。


「じゃあ、幕あけるわよ。」


盛大な音を立てて幕が開くとともに、会場に割れんばかりの拍手が起きた。

アンコが意気揚々と舞台に出て行く。


「ようこそ!これから忍たちが繰り広げるラブストーリー、『永久(とわ)』が始まります。日ごろ見られない彼らの勇士をどうぞお楽しみください」

お辞儀をすると共に、暗転。

「わぁ、もう出るんだ!」
「おい、ぐずぐずすんな、行くぞ」
「うん!アスマ、がんばろうね!」

はふん、と気合を入れた。

、がんばってこい」
「うん。カカシさんも!」
「ああ」

の頭にぽん、と手を置く。

「いくぞ」


とアスマが幕の中から出て行った。

ぱあ、舞台が明るくなり、二人を照らした。



始まった。



楽しかった日々が終わる始まり。






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