カカシが朝から任務に出かけてしまった。

前日からカカシの家に来ていたは、午前中には終わって帰ってくるから、と言われてぽつんと一人やることもなく。

お昼ご飯を作るにはまだ早すぎるし、暇つぶしになるであろう読書もやらしい本と難しい本しかないし。

「なんか面白いのやってるかなあ」

ベッドに座ってテレビの電源を付けた。
ブン、と小さくうなっていかにも退屈そうな番組が映った。

しばらくはポチポチといろんなチャンネルをまわしていたが、この時間帯はあんまり面白い番組はやっていなさそう。

「ひまだ〜・・・」

ころん、とベッドに横になってとりあえず流しているニュースの画面をぼんやりと見ていた。
といってもたいして興味もなく。
なんとなく視線をテレビ台の下へと移した。

「あ、なんかビデオある・・・」

テレビをあまり見ないカカシなのに、奥の方に一本だけビデオが立てかけてあった。
近づいてラベルを見てみるも、なにも書いていない。
カカシが録画するくらいならなにか特別なものなのだろうかと、興味本位でビデオを再生してみることにした。

再生ボタンを押して画面が映るのを待機していると、ガチャっと玄関の戸が開いてカカシが帰ってきた。

「ただいまーちゃ・・・」


  「あああんっ、___が大きくて気持ちいのぉ!イっちゃうイっちゃう〜!」


「・・・・・・」
「・・・・・・」


テレビの前で固まる、玄関でその様子を見て固まるカカシ。

そしてテレビの中では全裸の男女が激しく絡み合っていた。


   「あんっ、わたしの___を 太い___でもっと突いてぇ!」


テレビではとんでもない音声が流れる中、ようやく我に返ったカカシが靴をほっぽり脱いでテレビの前へ慌ただしく向かった。

   「なかに出してぇ、熱い___をなかに出・・・」

ブチっとテレビの電源ごと落とされて、真っ暗な画面にぽかんとしたの顔となんとも言えない微妙な顔をしたカカシが反射して映った。

「・・・・・」
「・・・・・」

途端に静かになった部屋が沈黙で埋まる。
ギギギ、と恐る恐るカカシがのことを振り返った。

「あの、さん、一体どこでこれを」
「あ・・・そこから・・・」

いまだ呆然としているがテレビ台の下を指差した。
それでようやく思い出したのか、はああ〜・・・とカカシは大きくため息をついた。

「あの・・・、言い訳じゃないですけどちょっと聞いてもらってもよろしいですか」
「は、はあ」

なぜか正座で向き合う二人。
もともとカカシの色白の肌がますます青白く血の気がなくなっていた。

「このビデオ、ゲンマから預かってほしいって言われて預かってたもので」
「はい」
「でもたぶんゲンマは俺に預けてることを忘れてて、俺もこのこと忘れてて」
「はい」
「なのでその〜・・・これは〜・・・」

まるでいたずらがばれた子どものようなカカシは、ひょろ長い背中を丸くして
目を泳がせていた。

「それにしても、すごい内容だったね」
「う゛・・・や、ちょっとどれくらい見たの?」

焦るカカシにニッコリと優しく微笑み、さらに追い打ちをかける。

「こういったビデオテープってさ、巻き戻さないと最初に戻らないよね」
「・・・・・」
「てことは、あのシーンまでは見たってことかなあ〜」
「や、ちが・・・いや・・・」

恥ずかしそうに頭を項垂れているが、額当てとマスクの間から見えるわずかな肌が赤く染まっているのが見えた。
いつも飄々としているカカシのそんな姿を見たは、ぶはっと笑いが込み上げてくる。

「あっはは、ごめんね、いじわるしちゃった!」

涙を流して笑うに、ようやくカカシは顔を上げて安堵の息を漏らした。

「勘弁してちょうだいよ〜・・・」
「だって、あははっ、すごく面白くて!」

かあ、と頬を赤くするカカシはちょっとバツが悪そうに視線を逸らした。

「ふふ、でもさ、やっぱこういうのって派手だよね」
「派手?」

もう一度見てみようとテレビのリモコンに手を伸ばしたが、その何倍もの速さでカカシがリモコンを取り上げた。

「だってこんなにさ、そのー・・・声を上げないというかさ」
「喘ぎ声ってこと?」
「あー・・・うん、そう」
ちゃんてこういうビデオ見たことない?」
「当たり前でしょ!」

の答えを聞いた途端、カカシは怪しくニヤッと笑った。

「じゃあさ、これ、一緒に見てみようか」
「・・・は?!」
「見たら参考になるかもよ」
「なんの!」

声を荒げるを横に、カカシはリモコンを操作してビデオテープを巻き戻し始めた。
キュルキュルと古臭い音を鳴らしながらテープが戻っていく間、カカシは任務姿のままだったのを部屋着へと着替えてきた。

「どう、巻き戻った?」
「うん・・・でも本当に見るの?」

おとなしくベッドの上に座り壁に寄りかかりながら待っていたは、不安そうにカカシのことを見上げた。

「またまた〜。巻き戻るまでここにいたんだから、見る気満々ってことでしょ?」
「ち、違うって!」

ドサッとの横に座り込んだカカシは、その言葉に逃げようとしたの腕を素早くつかんで座りなおさせた。

「まあまあ、きつかったら止めてあげるからさ」
「・・・・・・」

そういう問題じゃないんですけど、とジロリとカカシのことを睨んだが、そんなこともお構いなしにテレビにリモコンを向けた。


   「こんにちは。きょうはよろしくお願いします」

さっそく映像が始まり、かわいらしい女の子のインタビューシーンが始まった。
当たり障りのない質問が続いていたが、だんだん内容がそれらしいものに変化してきた。

   「え?初めてですか?そうですねぇ〜・・・」

「カ、カシ」
「え?もう?」

じわじわくるきわどい質問が余計に羞恥心を掻き立てられる。
無意識にカカシの服の袖をつかんでいたようで、カカシは笑って優しくの肩を抱きしめた。

「んー、じゃあ飛ばしてみよっか」
「ええ〜まだ見るの〜・・・?」

なぜか楽しそうにリモコン操作するカカシ。
そのままビデオを止めてもらいたかったのに、そんな希望も届かず少し進んだシーンから再生された。


   「ん・・・・あっ・・・」


「コーヒー淹れてこようかな。いる?」
「えっ?あ、い、いい」
「じゃあちょっとゴメンね」

そう言ってカカシは、画面の中で豊かな胸を弄ばれて甘い声を漏らす女優をそのままに、の肩に回していた腕を離して台所へ向かってしまった。

「え、え〜・・・・」

ぽつんと一人残されて、でも映像は続いたまま。
ご丁寧にリモコンまで持って行ってしまったのか、ビデオを止めるにも止められない。

   「ここ感じるの?気持ちいい?」
   「はい、気持ちいいです・・・」

上半身下着姿になってしまった女優の、相変わらずの桃色吐息がいやでも聞こえてくる。
でもよく見てみたら・・・

「この子、すごい胸大きいな」

たゆんたゆんと揺すられて揉まれて、いつの間にか男優がこれでもかと見せびらかすように愛撫する様子に見入ってしまっていた。

「肌もきれい・・・」

まじまじと女性の肌を観察することも、というよりそもそも他人のこういった行為を目の前にするのは初めてのこと。
あれだけ最初は嫌がっていたくせに、気づかないうちにテレビにくぎ付けになってしまっていた。

「よいしょ、ただいま。あちち」
「おかえり」

アツアツのコーヒーを淹れてきたカカシが慎重にベッドに腰を下ろし、先ほどと同じようにの肩を抱き寄せた。

「この子、すごい巨乳だね」
「ゲンマの性癖がうかがえるでしょ」
「カカシも見たんでしょ」
「アチッ」

の発言にびくっと体が震えて啜っていたコーヒーが唇に触れた。

   「あっ・・・あん・・・!」

こっちに集中しろと言わんばかりに声がしたと思えば、下着をずらされた女優がすでにベッドに押し倒されていて、男優がその膨らみに口づけてさらには下半身にも手が伸びていた。

「わ・・・!」

女優の容赦ない甘い声と目の前に繰り広げられる行為に顔がかあ、と熱くなる。
カカシは一体どんな表情で見てるのだろうと、こっそりと様子をうかがってみる。
が、まるでニュース番組を見ているかのように、いつもの気怠そうな表情。
肩に回されているカカシの手の温度も、別に熱いわけでもない。
時折コーヒーをすすって、まるで興奮の『こ』の字も感じさせない。

『ええ〜・・・なんで・・・』

いや、ここでを差し置いて一人興奮されてもそれはそれで許せないが、この状況で穏やかにコーヒーを飲むのもいかがなものなのか。

   「もうこんな濡れてるよ、ほら聞こえる?」
   「あっ、だめぇ、やん、気持ちいいッ!」

男優の指が動くたびにくちゅくちゅと卑猥な音が画面から聞こえてくる。
甘い声をひたすら漏らし続ける女優の表情も恍惚に染め上がっていて、はあはあと熱い吐息と共に声にならない声をあげていた。

「・・・・・・」

見なければいいのに、カカシにやめてって言えばいいのに、だけどやっぱりどこか興味があるのか目が離せない。
だけどそれをカカシに知られるのが恥ずかしくて、ついつい顔を伏せ気味にしてしまう。

   「んっ、ああっ、はあ、はあ・・・」

女優の甘い声と、気持ちよさそうな表情。
吐息を漏らす口に男優は口づけ、これまたいやらしく舌を絡ませ始めた。
それをとろんとした表情で受ける女優に目が釘付けになった。

カカシがいつもキスしてくれるとき、自分もあんな表情になってるのだろうか。
カカシの表情、指や舌の動き、そして声。
そのすべてが連想されて体が火照ってくる。

『いいな、わたしも・・・』

と何度も思うが、まさかあんだけ言ってたくせにその気になってしまったなんて悟られたくなくて、カカシがいない方の手でベッドのシーツを強く握りしめた。

ちゃん」
「っは、はい!」

突然カカシに話しかけられ、びくっと肩が震えた。

「・・・・案外、大丈夫そうだね」

振り返ったの表情を見たカカシは意味深な間をおいてにこっと微笑んだ。

「・・・・」

なにもしないのか、と少し期待していたばかりにがくっと落ち込んだ。


「な、に・・・っ!」

今度は何だ、と振り返ると、ぐいっと肩を抱き寄せられて口づけられた。

「んっ、ふ・・・・」

さっきテレビで見たかのような濃厚な口づけ。
カカシの舌がぬるりとの舌をとらえ、優しくそして激しく絡み合わせた。
口づけられているとだんだん頭がマヒしてきて、体を支えている腕にも力がはいらなくなってくる。
ただ脚だけは、つい刺激を求めてもぞもぞと動いてしまう。
恥ずかしいから止めないと、と思いつつも些細な快感はますます刺激を求めて。

耳の片隅に聞こえる女優の甘い声すらも聞こえなくなり、ただカカシから与えられる甘い口づけだけが包み込む。

「ん・・・はあ・・・」

最後にチュッと音を鳴らして口を離すと、カカシは元の位置に戻って再びテレビを見始めた。

「・・・・?」

どういう意味なのかわからずぽかんとカカシのことを見つめていると、その視線に気が付いたカカシはニコッと意地悪そうに笑った。

「キス、してほしかったんでしょ?」

それだけ言って、またぼんやりとテレビ画面に目を向けてしまった。

「・・・・・」

はっきり言ってそのまま押し倒されるんじゃないかと、内心思っていた。
けれどカカシはいつも通りで、ちらっとカカシの下半身を盗み見ても興奮しているそぶりもなく。

『いつものカカシだったらすぐに押し倒してくるくせに、なんで今日に限って・・・』

自分だけ物足りなくなってしまって、もぞりもぞりと脚は止まらない。

   「ねえ、ちょうだい・・・」

テレビの中の女優はなまめかしい表情で男優のことを見つめていた。

   「あなたの大きいの、わたしの中にちょうだい」

女優の上に覆いかぶさった男優は、焦らしながらも自身を泥濘の中へ挿入した。

   「ッ・・・ああっ!!ああん、大きいぃ!」

途端にとろけた表情で、男優のされるがままにその体を揺さぶられ始めた。

「ハァー・・・・・」

女優の気持ちよさそうな表情と甘い声に、ますます悶々とした気持ちが募ってくる。
堪えきれない何かがため息となってあふれ出る。


「どうしたの?ちゃん」


ついにカカシがの方へ振り返り、ニコリともニヤリとも言えない笑みを浮かべた。


ああ、確信犯め。







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