いつもお世話になっているあんさんへ。
「ほらちゃん、はやく行くよ」 「ま、まってください〜!」 どたどたと慌てて準備をするを、玄関ドアの前で待つカカシ。 「今日の主役が遅れちゃダメでしょ」 「わーん、だって今日に限って寝癖がぁ!」 「だいじょーぶ、寝癖あってもちゃんは可愛いから」 「なに言ってるんですか」 くすくすと笑いながら、ようやく出かける格好になったが部屋から出てきた。 今日はの受付への就任祝いとして、アンコが主催した飲み会が開催される。 時刻はそろそろ18時を指そうとしているが、開始時刻も18時。 恥ずかしそうに髪の毛を押さえながら、は迎えに来たカカシの元へと走り寄った。 「準備できた?」 「はい!お待たせしました!」 「じゃあ時間もないし、はい」 「あ、やっぱそれなんですね・・・」 カカシはを招き入れるようににっこりと両手を広げてみせると、は少し苦い顔をしてその身体に抱きついた。 何度か経験してきたが、瞬身の術のスピードはにはまだ慣れない。 役得、と思いながらの腰に手を回し、飲み会の会場へと急いだ。 * * * * 「それじゃあの今までの頑張りと、新たなお仕事に、かんぱーーい!」 アンコの掛け声で始まった飲み会は、任務が被らなかった忍たちが大勢駆けつけた。 のことをあまり知らない人でも、飲み会があると聞いて参加しているため、結構な人数が集まった。 到着したと同時にはくノ一たちに囲まれ、座席がカカシと引き離されてしまった。 カカシも、アンコや紅が一緒なら悪い虫もつかないだろうと、顔見知りの同僚が座っている机へと着席した。 ぐびりと酒を煽りながら、ちらりとの方を見てみれば、相変わらずくノ一たちと楽しそうに話していた。 偶然カカシの方を見たと目が合って、ニコリとほほ笑んで手を振ると、恥ずかしそうに小さく手を振り返した。 それに気が付いた周りのくノ一たちが、キャアっと黄色い声を上げていた。 「カカシィ!勝負だ!!!」 カカシとの間を遮るように、暑苦しいポーズでガイが立ちふさがった。 「ガイ〜・・・」 邪魔者に対してがっくりとうなだれていると、一枚の紙を渡された。 「先にビンゴになった方が勝ちだ!!」 「ビンゴ?」 一枚受け取ると、アンコが酒瓶を片手に立ち上がった。 「さぁ、豪華賞品をかけてビンゴ大会よ〜!!」 どこから持ってきたのか、ビンゴ用の道具も揃い、さっそくガラガラとまわし始めた。 「まずは、3!」 アンコの言う数字に、思わず自分のカードを見てしまった。 ご丁寧に真ん中はすでに開けてあり、ついでに3も見つかった。 は・・・と見てみたいが、目の前にどかっと暑苦しい男が座ってしまったため見ることができない。 みるみるうちに数字は発表され、カカシはトリプルリーチまで持って行ったが、ガイは3つ穴が開いているだけ。 「ガイくん、運も実力のうちという言葉を知っているかい?」 「ぐぬぬ・・・」 「あー!カカシ上忍、ビンゴ目前じゃないですか!ねぇ、みてみて!」 横からくノ一がカカシのカードを覗き込んで、周りにいたくノ一たちもカードを覗きに来た。 「カカシ上忍すごい!わたしなんかまだまだなのに!」 「わたしも〜!」 なんてきゃいきゃい騒いでいる。 ドサドサっとカカシとガイのいるテーブルに集結したくノ一たちはそのままそこでビンゴを続行し、発表されていく数字に一喜一憂していた。 酒の力なのか、ビンゴのイベントのせいなのか、カカシもなんだか楽しくなって一緒になってくすくす笑っていた。 一方、こちらもくノ一たちに囲まれている。 「27!」 「あっ」 アンコの言う数字を聞いて自分のカードを見てみると、ちょうどその数字がある。 「、リーチじゃない」 「えへへ、そうみたいです」 ビンゴなんてそっちのけの紅が、酒をぐいぐい飲みながらのカードを盗み見る。 同じテーブルの忍たちの反応にくすくす笑いながら辺りを見渡してみれば、ビンゴになって商品を獲得している姿がちらほら。 が、のテーブルは、盛り上がってはいるもののまだ誰もビンゴにならない。 カカシはどうなったのかな、とさっき目が合った方向を見てみる。 ガイの背中でカカシの姿はチラチラとしか見えないが、なんだか楽しそう。 よかった、と胸を下ろしたのもつかの間、やけに密集しているくノ一たちに目がいった。 にとって接点のない、いままで見たことのないくノ一たちだが、やけに和気藹々としている。 「・・・・」 ぷすっと27番に穴をあけた。 「カカシ上忍、次になにがきたらビンゴなんですかぁ?」 「トリプルなら確率高いですよね!」 「見てみて!わたしもリーチ!」 相変わらずきゃいきゃいと楽しそうなくノ一に囲まれているカカシ。 「次は52よ!」 「んー、ないな」 は、とガイの隙間から様子を見てみると、わあ、とのテーブルが盛り上がっていた。 どうやら誰かがビンゴになったようだ。 「私もないー!」 「ガイ上忍は?」 「くう、俺もないぞー!!!」 「あはは、このテーブル運ないですねー!」 どうやら先ほどので景品が尽きたみたいで、とうとうビンゴは終了した。 テーブルには無駄に穴だけが開いたカードが乱雑に置かれ、メンバーは変わらずに飲み会は進んだ。 宴もたけなわ、の就任祝いの飲み会は幹事のアンコが飲み潰れて幕を閉じた。 バラバラと居酒屋から退出し、お店の前で恒例のアンコの締めの言葉を待っていた。 の近くに行こうと思ったが、すでにくノ一たちに囲まれていて近づける様子ではない。 諦めて先ほどのメンバーと固まっていると、またこのメンバーで飲みに行きましょうね、なんて言われてしまった。 「うう〜・・・とりあえず、解散!、おめでと〜〜!!」 もはや一人の力では立てないくらい酔っぱらったアンコは、それだけ言った後にぐったりとつぶれてしまった。 それを合図に、多くの忍はに一言声をかけてから帰宅した。 は一人一人、丁寧にお礼をして楽しそうにしていて、カカシはそれを遠くから眺めていた。 さっきまで隣にいたガイが、意気込んでの元へ向かって何か述べたのちに、真っ赤になって急いで帰って行った。 そういえばハヤテがいない。 また任務と被ったのだろうか、運のないやつめ。 トリプルリーチの末にビンゴにならなかった自分を棚に上げていると、ようやくがカカシの元へとやってきた。 「カカシさん、帰りましょ!」 なにやら荷物を抱えたは、頬を赤くして嬉しそうに笑っていた。 そんなの手を取って、家へと送り届けるためにの家の方向へと帰った。 「ちゃんの手、あったかいね」 「えへへ、お酒たくさん飲んじゃいました」 「お酒強かったっけ?」 「うーん、今日はとっても楽しかったから!」 「そっか」 酒を飲んだせいなのか、身体が熱い。 ほわっと吐く息が白い。 「あ、みてみてカカシさん、いきますよ!」 急には、たばこを吸うようなジェスチャーをして、ほわっと息を吐いた。 「アスマさんのマネ!」 いたずらっ子のように笑うに、ついカカシも笑ってしまった。 「はは、酔っぱらってるでしょ」 「いーえ、まさかぁ!」 そう言って、くすくすと楽しそうに笑う。 「そういえばその荷物、どうしたの?」 「ビンゴで当てたんです!最後の景品でした」 「へえ、おめでと。中身なんだった?」 「まだ見てなくて・・・家に着いたら開けてみます」 が楽しそうに笑うと、ほわっと白い息が夜空へと消えて行った。 Lover TOP >>>2 Novel TOP |