それから二人は、どこかしら気にしながらも特に触れることなく一緒の時間を過ごしていた。


「カカシさん、もう寝ます?」
「んー・・・ちょっと待って、あとこれ書き終えたら。ちゃんもう寝る?」
「そろそろ寝ようかなって。先にベッド行ってますね」
「うん、おれもすぐ行く」

溜まっていた報告書にペンを走らせるカカシを待ちつつ、先にベッドの中に入り込んだ。

「ん〜・・・」

横になった瞬間ふあ、とあくびが出て途端に眠くなってくる。
うとうとしながら待っていると、ギシッとベッドがきしんでカカシが静かに布団の中に潜り込んできた。
どうやら先にが寝てしまったと思っているようだった。

「カカシさん・・・」
「なんだ、起きてたの?」
「ん・・・」

カカシのほうに寝返りを打って、横になりながら向かい合った。

「眠そうだよ」
「うん」

クスッと笑いながらカカシはの頬をやさしくなでた。
それだけで心地よくて、安らいでいく。

「先に寝ててよかったのに」
「カカシさんのこと待ってたんです、聞きたいことあって」
「ん?」

なあに、と言いたげな目を向けるカカシに、は眠い頭を奮い立たせて少し考えた。
でもまあポヤポヤした頭ではしっかり考えることもできなくて。

「なんで昨日の夜、怒ってたんですか?」
「え?おれが?怒ってた?」

身に覚えがないようで、の言葉にカカシは目を見開いた。

「怒ってたというより、なんか・・・考えてたというか・・・」
「あ、あー・・・あれか、うーん、そうだねぇ」

ははは、と苦笑いするカカシは言葉を選ぶように話を続けた。

「ま、おれもちょっと考えたのよ」
「・・・・」
「うーん、言わなきゃダメ?」
「ダメ」

間髪入れずにぴしゃりと言われてしまい、ようやくカカシもあきらめた。

「ハヤテのこと、ちょっといいなー、って考えた」
「カカシさんが?ハヤテに?」
「ね、もう一回呼び捨てで呼んでみてよ」
「えっ!」

途端に焦ったようにドギマギする
それを見たカカシはそっと微笑んだ。

「呼びづらいとか、話しづらいとかで、しゃべれる時間が減ったらいやじゃない?」
「カカシさん・・・」
「だからおれは今のままでもいいかなって」

そんなことを考えてたのか、とはまじまじとカカシを見つめた。

「ま、アンコからの受け売りなんだけどね」

少し照れたようにカカシは笑い、なおも見つめるの目から逃げるように頬をムギュッと挟み込んだ。

「ンム!」
「はい、この話おわり!もう寝よう」
「・・・・」

頬から手を離した代わりにそっと口づけて、もぞもぞと寝支度を整え始めた。

「今日の任務の時にアンコちゃんと話してたの?」
「ん?そう。だからそのお礼になんか奢れってうるさいのよ、あいつ」
「そうなんだ・・・」

すでに目をつぶっているカカシのことを一方的に見つめながら、頭の中できょうのいろいろに合点がいった。

「でもさ」
「!」

急にパチッと目を開けたカカシに驚いてすぐさま視線をそらした。

「最近ちゃん、敬語減ってきたよね」
「そ、うです、か」

改めてそう言われるとなんだか気にしてしまって言葉が詰まる。
今度はがもぞもぞと布団の中に潜って目を閉じた。


「ッ!」

名前を呼ばれてパチッと目を開けると、優しい微笑みを浮かべたカカシと目が合った。

「もう一回だけ、呼んでみて」
「え、ええ〜?」

ね?と笑うカカシを見るといやとも言えなくなってしまう。

「カ、カシ・・・」

名前を呼んだだけでドキドキしてきゅうっと胸が苦しくなる。

「もう1回」
「カカシ・・・」
「ん、ごーかっく」

満面の笑みを浮かべたカカシはぎゅうっとを抱き寄せて、額に優しく口づけた。

「呼ばれ慣れてなさ過ぎて、なんだか照れちゃうね」
「わたしだって、ドキドキしてるんですから」

二人して照れたようにクスクスと笑い合い、ようやくお互いを抱きしめあいながら眠りについた。








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