「だからカカシさん、もっと、してください」
「・・・・・・・」

普段だったら絶対に言わないであろう言葉を情欲にまみれた瞳で呟かれ、思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。
あぁ、どうしてこんなことに・・・・。


先に風呂へ入っていいとに促され、何気なしに風呂場に向かえばそこには何とも言えない甘い香りが漂っていた。
がなにか新しい石鹸でも出してその香りなのかと思いなにも思わず頭を洗い始めた。
しかしそれから様子がおかしくなったのは湯船につかってからだった。

「・・・・・・」

一切動いていないのにバクバクと鼓動が激しくなってくるのを感じ、なのに頭はボーっとしてきて、身体はだんだんと火照ってくる。

「なんだ・・・溜まってんのかな」

気を紛らわせようと頭を揺らしてしずくを振り落とし、ざばっと勢いよく湯船から上がった。
風呂場に持ってきていた服に着替える気も起きず、しばらく腰にタオルを巻いたまま動悸が落ち着くのを待っていた。

「・・・・・・はぁ」

いくら待っても落ち着く様子もなく、むしろますますこみ上げてくる。
髪の毛から垂れる水のしずくが身体に伝う感覚にでさえ背中がゾクゾクと震えた。
とりあえず待たせているを風呂に通し、ひとまず落ち着くまで自室に引きこもろうと考えた。
着替えを片手に持ち、一瞬だけに声をかけて静かな部屋に入りベッドに座った。
首を垂れて深く呼吸を繰り返すも、身体の奥でぐつぐつと煮えるような火照りはなかなか収まらない。
遠くで聞こえるのシャワーの音がやけに耳障りで、ベッドから立ち上がってあっちをウロウロ、こっちをウロウロ。
たいして広くもない部屋で右往左往としていると、浴室のドアが開く音が聞こえた。
その瞬間、なぜだかあの甘い香りがぶわっと襲い掛かってくるような気がした。

「・・・・ッ!」

ぞわっと鳥肌が立ち、無意識のうちに部屋のドアを開けていた。
真っ先に視界に映ったのは身体にタオルを巻いた姿ので、その瞬間に肩をつかみリビングのマットの上に押し倒していた。

「!」

驚いたように目を見開いたの全身からも甘い香りが漂っていて、ただでさえクラクラした頭がなおさら何も考えられなくなってくる。
さっきまで堪えてきた分、余計にその反動でを求める気持ちが暴走する。

「は・・・ッ」

このまま身体が求めるままにを求めていいのだろうか。
抑えがきくのだろうか、傷つけてしまわないだろうか。

「カ、カカシさん・・・!」

しかしの切羽詰まったような声を聴いた途端、パチンと思考の糸が切れ、自制の気持ちはどこへやらの首元に顔をうずめて鼻腔いっぱいに味わった。




「い・・・あ、気持ちい、カ、カシさ・・・!」
・・・、ハァ・・・」

ベッドに行く暇も惜しいほど、リビングのマットの上で二人は互いを求めあっていた。
を四つん這いにさせて後ろから突き上げていると、再びは甘い声を上げて絶頂を迎え、そのままぐったりとマットに倒れこんでしまった。
それでもの身体を無理やり起こし、夢中になって求めるがままにその身体を突き上げた。

「んぁっ、あ、カカシさん!」
「はぁ、イきそ・・・」

まるで腰を叩きつけるようにしばらくしてカカシも果て、息を切らした二人は並んでマットの上に倒れこんだ。

「はあ・・・は・・・」

ようやく効果も薄まってきたのか、霞がかかったような頭も最初に比べたらだいぶすっきりしてきた。

「大丈夫?」

隣で横になっているのことを振り向けば、やはり相当体力を消費したのか小さく頷きを返しただけだった。

「すごいね、なんか・・・頭がふわふわしちゃって」

そう言ってへにゃっと笑ったは顔にかかった髪の毛を耳にかけて見せた。

「・・・・・・。水、飲む?」

たったそれだけの仕草なのに、たとえ薬の影響だと言えど自身が反応してしまいそうで、思わずから顔をそらし、近くに放られていたタオルを腰に巻いて立ち上がった。

「あ、飲みたいです」

もゆっくりとした動きでバスタオルを身体に巻いて立ち上がり、カカシの後を追うようにヨタヨタとキッチンへ向かっていった。

「ん」

先にコップに注いだ水を飲みながら新しく水を注ぎ入れたコップをに手渡した。

「ありがとうございます」

受け取ったはさっそく水を飲もうとしたが手元が狂い、傾けたコップの淵から胸元へ零れ落ちてしまった。

「わ、つめたい!わータオルでよかった!」
「・・・・・・」

の声に思わず振り向けば、白い胸元を伝い谷間へ流れていく水が視界に入り、そうなれば自然との首元に着けた赤い印や白い肌や胸のふくらみや胸元へかかる髪の毛や甘い香りが残る柔らかな肌や濡れた口元や熱を持った声色や、声色といえばさっきまでの甘い声や気持ちよさそうに顔をゆがめる表情や揺れる胸元や・・・・

「カカシさん?」
「!」

すぐに暴走する思考からようやく我に返れば、思い切りコップを握りしめていて危うく割ってしまいそうなほどだった。
それをなんとか力を抜き、そっとキッチンカウンターに置いた。
効き目は切れてきたと思っていたが、やはりまだ体の中に残っているのだろうか。
早いところ、この沸騰した頭を落ち着かせないと。

「カカシさん・・・」

ふとカカシの熱い手のひらにの水で冷えた指先が触れ、ピクリと手のひらが揺れ動いた。

「カカシさんはもう・・・大丈夫になっちゃいましたか?」
「・・・ちゃん・・・?」

明らかに甘えた声でこちらを見上げてくる
これ以上暴走してに無理はさせられない、しかし頭の中を支配していく欲望の渦がだんだんと抑制の気持ちを越えていく。

「わたしは、まだ、みたい、です」

そう言って顔を赤くしながらもカカシの首に腕を伸ばし引き寄せて、の方から口づけた。
こうともなれば、もはや制御なんて効くわけもなく。



「あっ、あ、んっ!カ、カシさ、気持ちいい、カカシさん・・・!」
「おれも、気持ちいい」

あれほど葛藤を広げた挙句、結局キッチンカウンターにの上半身を押しつけ、再び後ろから突き上げていた。
やはり効果は薄まったのか先ほどまでの短いスパンで絶頂を迎えるわけでもなく、ただいつもより敏感になった感覚だけは残っていた。

「カカシさん・・・ッ!」

やけに名前を呼ぶに、後ろから突き上げているだけでは満足がいかず、一度自身を抜いたあとにキッチンの床にを押し倒した。
お互い夢中になって、荒い息遣いを繰り返しながら鼻と鼻がくっつくほどに顔を近づけ見つめ合った。

「・・・・・」
「・・・・・」

先にこらえきれなくなったのはの方で、床に着けていた頭を持ち上げてカカシの唇へ重ねた。
だんだんと深くなる口づけに、酸欠も加えて頭がクラクラしてくる。
気持ちいいという感情だけが頭を占めて、目の前で同じように気持ちよさそうな表情を浮かべている愛しい相手がより一層愛おしい。

「カ、カシさん」

口づけの合間に漏れる切なげな声を合図に、張り詰めた自身を再びの中に埋め込んだ。

「んっ、ああッ!」
「く・・・はぁ・・・!」

何度目かもわからないのに、張り詰めた自身をのとろけきった中へ挿れる瞬間は得も言われぬ堪らない感覚に背筋が震える。

「あっ、カカシさん、気持ちいい、カカシさん・・・ッ!」

カカシの律動に合わせて惜しげもなく甘い声をあげ、そのうえ気持ちよさそうな表情を目の当たりにして、懲りずにもっと欲しいと身体が動く。
背中にたてられたの爪でピリッと痛みが走り、その刺激が唯一カカシの暴走を止める手立てだった。


「カカシさん、あ、イく、イっちゃうっ!」

それからしばらく攻め続けていると、涙目になりながらカカシに訴えかけてきた。

「おれも・・・、もう・・・」

その表情にも余計かきたてられ、何度も口づけを落としながらお互い果てを目指すように身体を動かせばついにハラハラとの瞳から涙が零れ落ちた。

「あ、イく、あ、ダメ、あっ、あッ・・・・!!」
「ッ・・・うぁ・・・!」

ビクンっとの身体が震え、甘い締め付けがカカシを襲い、二人はほぼ同時に絶頂を迎えた。
さすがにカカシもの隣にどさりと倒れこみ、二人はキッチンの床で荒い呼吸を繰り返していた。

「は、あ、はあ・・・、こんな、キッチンで・・・」
「床から見るとこんな景色だったんだね」

冷静になって思い返せばこんなところではなくベッドに行けばよかったと思うが、実際はもうそんな余裕もなかったのだから仕方がない。
カカシのセリフにはクスクス笑い、それを見たカカシも思わず笑みがこぼれた。

「・・・ごはん作る度に思い出しちゃうかも」
「そしたらおれが何度でも相手してあげる」

なおもクスクス笑っているの頭を撫で、髪の毛を耳にかけてやればピクリとの肩が反応した。
それを見逃さなかったカカシは思わず見つめてしまい、は恥ずかしそうに顔を赤らめながら見つめ返した。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

そっと顔を近づけ合い、唇が触れ合おうとした瞬間、コツコツとリビングの窓が叩かれる音がけたたましく部屋中に響き渡った。
驚いて顔を離し、この音に聞き覚えのあるカカシは嫌な予感がしながらを置いて立ち上がった。

「あ!」
「え?」

カカシの驚きの声にもヨロリと立ち上がり、音がするほうへ視線をやれば。
窓を叩くのはカカシ宛の伝令の鳥だと分かったが、それ以前に窓の外がすでに明るくなっていることに気が付いた。

ちゃん、朝だ・・・」
「うそ・・・」

まさか夜通し行為に及んでいたと分かった瞬間、恥ずかしいやら驚きやらで思わず愕然と立ち尽くしてしまった。

「仕事!」
「任務!」

ハッとしてお互い顔を見合わせ、は慌てて一歩踏み出そうとしたがヘナヘナと床に崩れ落ちてしまった。

「あぅ・・・カカシさん、どうしよう、力、入らない・・・」
「あらま・・・さすがにやりすぎたか・・・。ちょっと待ってて、そのままで」

困ったように頭をかくカカシはとりあえず伝令の鳥に殴り書きの文を持たせ、そのあとすぐにの元へ戻ってきた。

「さすがに薬の効果も切れてると思うし、今日はもうゆっくりしよう」
「で、でも・・・!」
「大丈夫。さっきいろいろ代役を立てたから」
「代役・・・?」

キョトンとしているにニヤリと怪しい笑みを見せ、力が入らない身体をそっと抱きかかえた。

「わっ・・・!」
「よーやくベッドだよ。ごめんね、ずっと固い床の上だったし身体、痛くなかった?」

を抱きかかえたまま寝室へ向かい、ドサッと二人は倒れこんだ。
マットやキッチンの床の上にいた分、ようやく柔らかなベッドに横になったはほっと一息。

「謝るのは・・・、わたしのほうです。変なので、カカシさんのこと巻き込んじゃって・・・」
「それはちゃんもでしょ。ちゃんは悪くないし・・・ていうか・・・」
「?」
「ま、おれにとっては役得だったかな」

そう言って欠伸をしたカカシにつられても「ふぁ・・・」と欠伸が漏れた。

「あ、そういえば湯船って」
「・・・・」

ハッと気が付いたカカシがの方を振り向くも、すでにスヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
しばらくその寝顔をぼんやりと眺め、優しく頭に口づけたあとカカシもそっと目を閉じた。

朝日が部屋を明るく包み込むなか、二人はベッドの中で寄り添いあい、ようやく長い長い夜を終えた。





*   *   *   *   *




一方こちら、オフを満喫するべく甘味処巡りに出かけようと街を歩いているアンコ。

「ゴホ・・・アンコ、なにしてるんですか」
「うわっハヤテ!びっくりした、今日わたしオフなんだけど!」

そっと背後から近寄ったハヤテに対しギョッとしていると、二枚の紙を手渡された。

「は?なにこれ」
「私は伝令で来ただけなので。早く行かないと大変なことになりそうですよ」
「え、あ、ちょっと!なに!」

呼び止める声もむなしく、いつものようにせき込みながらハヤテは一瞬にしてドロンと消えてしまった。

「なーによ。えーっと、なになに・・・え、なにぃ?!」

貰った用紙をよく見てみれば、オフの予定が急遽任務が飛び込んできたとのこと。
それも夕方まで受付での事務処理と、夜からBランクの任務。

「なにこれ、ハードすぎ!あ・・・まさかこれって・・・!」

用紙を持つ手がわなわなと震える。

「カカシとの・・・!」

昨日に渡した小瓶のことを一気に思い出し、ガクーっと膝から倒れこみそうだった。

「あーもう!カカシのバカ!!」

とばっちりもいいところで、アンコは急いで受付へと向かったのであった。

 








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