「ただいまー」

「あれ?カカシさん、随分とはやかったんですね!おかえりなさい!」

玄関の方で声がしたから迎えに行くと、そこには脚絆を脱ぐカカシがいた。

「暗号の解読と実験、うまくいきましたか?」
「ん?ま、ぼちぼちよ」
「おつかれさまです。あ、コーヒー淹れますね」
「ありがと〜」

は台所へコーヒーを用意しに行き、カカシは身に着けていた忍具を外し、忍服から部屋着へと着替えに自室へと向かった。

部屋にコーヒーのいい匂いが充満してきたころ、いつもの部屋着姿となったカカシがダイニングへとやってきて、よいしょと椅子に腰かけた。

「きょう、お夕飯なににします?まだお買いものに行ってないので、リクエストあったらそれにしますよ」
「おっ、そっかー。じゃ、どうしよっかな・・・」

カカシにコーヒーカップを渡し、はカカシの正面へと座った。


*    *    *    *    



「じゃあお買いもの行ってくるのでカカシさんはおうちで待っててくださいね」
「俺も行かなくて平気?別に疲れてないからだいじょぶよ?」
「買うもの少ないですし、荷物も少ないので大丈夫ですよ!カカシさんはゆっくりしててください」
「りょーかい。じゃ、気を付けてね。いってらっしゃい」
「はーい。いってきます」

じゃあね、と手を振っては買い物へと出かけた。


「えーっと・・・買う物は・・・っと」

ごそごそとメモを取り出す。
たまご、ぎゅうにゅう、たまねぎ。

「カカシさんがオムライス食べたいって・・・かわいいなあ」

くすくす、と惚気笑いをしつつ、いつもの木の葉横丁へ向かった。


「いらっしゃい!おや、今日はカカシさんと一緒じゃないのかい?」
「こんにちは〜カカシさんは任務帰りなのでお留守番なのです」
「そっか!きょうはおいしい玉ねぎがあるよ〜」

八百屋さんの元気なオヤジさんが、パンと両手を叩いて玉ねぎを指差した。

「ちょうど玉ねぎ買いに来たんですよ!じゃあ、それくださいな」
「あいよ!そういや、ジャガイモもお買い得なんだけど、どうするかい?」
「いいですね〜。ポテトサラダにでもしようかな。じゃあ、それも!あとブロッコリーも!」
「ありがとね!おまけしとくよ!」


購入した野菜を片手に、次は卵と牛乳を買いに商店街をふらふらと歩く。

「お、安売りだ!」

偶然見かけたお店で、牛乳と卵を購入。
つい安売りだったから、多めに牛乳を買ってしまった。

「あれ・・・お、おもいな・・・」

こんな予定じゃなかったんだけどな、と苦笑い。
よいしょ、と持ち直し、カカシが待つ家へと帰ろうと、商店街を出た。

「あ〜〜・・・」

もう少しで家に着く、というところで、牛乳の角でビニール袋が裂けてしまった部分を発見した。
どうやら、少しずつ歩く震動で裂けている部分が広がっているよう。
いつからそうなってしまっていたのかはわからないが、なかなかの裂け具合。
すこし歩幅を小さくして歩いてみるが、じわじわとビニールが裂けていく。

『せめて家までもってほしいな〜・・・』

と、思った瞬間、どさどさっと牛乳が落ちた。

「あ〜!!」

玉ねぎとジャガイモが入っている袋をいったんおいて、牛乳をもう一度裂けた袋へ入れようとしたが、どうも無理。

「も〜・・・買いすぎたからだ〜・・・」

はぁ、と小さくため息をつき、仕方ないから手で牛乳を持ち帰ろうとしたとき、後ろから声が聞こえた。

ちゃん?」

その声は、と振り返ってみると、そこには忍服姿のカカシが。

「あれ?!カカシさん?!」
「どうしたの、そんな驚いて。ていうか、その牛乳もどうしたの」
「え、あ、あの、牛乳買いすぎちゃって。そしたら袋、破けちゃって・・・」
「も〜」

カカシはニコニコ笑いながら、の買った袋をすべて持った。

「あ、ダメですよ、疲れてるのに!わたし、ちゃんと持てますよ!」
「いーの。また破いちゃうでしょ?」
「う〜〜・・・」
「さ、帰ろ?」

袋を持った手とは逆の、空いた手で不服そうなの手を掴んだ。


「あれ?そういえば、なんでカカシさん、忍服着てるんです?」
「なんでって・・・任務帰りだからよ」
「え?さっき家に帰ってきましたよ・・・ね・・・?」
「え?」
「オムライスが食べたいからって、その材料を買いに行ってたんですよ」
「ん?」
「ん?」

どういうことなのかわからず、ただカカシを見つめ返してしまった。
カカシも同様に、のことを見つめてどうにかわかろうとしたが、さすがのカカシも理解できなかった。

「と、とりあえず早く帰ろっか」
「は、はい」

すでに家は目前だったため、急いで帰り、玄関前でカギを出すためにカバンの中を探った。

「特に気配とかないけど・・・もしかしてちゃん、寝ぼけてた?」
「え、ええ〜〜?それにしてはだいぶはっきり覚えているんですが・・・」

ガチャ、とようやくドアを開けて、流れ込むように二人は入った。

「おかえり〜」

家の奥から、いつものカカシの声が聞こえた。

「どういうこと?」

のすぐ横でも、いつものカカシの声が聞こえた。


「ど、どういうことなの?!」


カカシが二人いる。

すぐ横に、そして家の中にも。





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