結局言葉通り、薬を受け取るまでだいぶ時間がかかってしまった。
人で溢れてる病院を抜け出して、病床のカカシの元へと足を速めた。

一応影分身を残してはいるが、やはりこの目で確認しないと安心できない。
たとえチャクラ切れとはいえ症状が急変してしまったら、さすがにだけでは対処できない。
しかも今日は病院がてんてこまい。
このまま何事もなく回復してくれるといいのだけれど。


「カカシさーん、ただいまー」
「おかえり〜」

玄関のドアをあけると、奥の方でいつもの気の抜けた声が聞こえてきて、とりあえず一安心。

一応病人だし、と念入りに手洗いとうがい、消毒を済ませてからカカシがいる寝室へと入室した。
顔色もよく病人らしさを感じさせないようなカカシは見送った時の姿のまま、上半身だけ起こしながら本を読んでいた。

「調子はどうです?」
「おいしいご飯のおかげさんでだいぶ回復したみたい」
「・・・そ、それはよかったですネ」

油断しているときに突然褒められ、そのうえ優しい微笑みを向けられてしまって、思わずドキッと心臓が跳ね上がった。
無意識でそんなことをするのだからたちが悪い。

素直にどういたしまして、と言えば可愛げあるものの、ついつい恥ずかしさが勝ってしまって無愛想な返事になってしまってがっくり。

「はい、お薬のんで早く元気になってくださいね」

様々な種類のカプセル錠と水の入ったコップを差し出した。

「ありがと。・・・悪いんだけど、飲ませてくれない?」
「あ、そっか。了解です!」

コップが持てるほど力がまだ回復していないのだろう。
カカシの口元に薬を持っていき、口の中へ。
そしてコップも同じように口元へ運び、ゆっくりと傾けた。

「・・・・」

思わずその様子を凝視してしまう。
色白な喉元が晒され、うっすらと筋肉のついた男らしい骨ばった首筋。

こくん、とカカシの喉が上下したのを確認し、コップを口から離した。

、もっとほしい」
「えっ、あ、はいっ」

喉が渇いていたのか、再び水を求めたカカシ。
普通に考えれば、特別な意味が込められているわけではないっていうのは分かる。

けれどなんだか少し、いやとてつもなく官能的に聞こえたのはなんともゆゆしき事態である。
そう考えてみると、水を飲むたびに喉仏が上下に揺れるのですら尋常じゃない色っぽさを感じてきた。

水を飲み下して揺れるカカシの喉仏に合わせ、ゴクリとも生唾を飲んだ。

『セクシーって、こういうことなのね・・・』

勝手にそういう目線でカカシを見つめていると、突然コップを持っていた腕を掴まれた。

「え!?あ、カカシさ・・・!」

腕、動かせたの?!と言う前にその口はカカシの口で塞がれてしまった。

「ん、んー!」

突然の出来事に驚いたのもつかの間、カカシの口伝いに水が流し込まれた。
不意を突かれ注がれた水を飲むことができなくて、だらしなく口から溢れさせてしまった。
パタタ、とこぼれた水がの着ていた服を濡らす。

「ちょ、ちょっとカカシさん!」

水の冷たさにぐいっと身体を離すと、カカシはにやっと微笑んだ。

「あーらら、こぼしちゃったの?」
「だって・・・いや、その前に動けるようになったの?!」
「ま、今回は症状が軽かったみたいだし」

急に開き直ったカカシは、離れてしまったの腕を引っ張り、ベッドの上へと倒れこませた。

「ちょ、だめですよ、カカシさん!」
が悪いんだよ」
「ええ?!」

起き上がろうとジタバタするも、あれよあれよという間にベッドに仰向けに寝かされてしまい、上からカカシが覆いかぶさった。
なおも暴れようとしたものだから、がっしりと両腕も抑えつけられてしまうというおまけつき。

「俺のこと、やらしい目で見てたでしょ」
「・・・は、はあ?!」

やばい見られてた、と一気に頬が熱くなる。
恥ずかしくて恥ずかしくて、どうにか顔を隠したけれど腕も抑えられてしまって自由がきかない。
ふいっと顔を背けるも、そんなのほとんど意味をなしていない。

のそういうの、バレバレなんだよねぇ」
「ッ・・・!」

顔を背けたことで露わになったの首元に、カカシは顔を埋めた。
水で濡れた首筋にカカシの熱い舌が這う感覚にピクッと身体が震えてしまう。

「昨日あれだけしたのに、もうしたくなっちゃったの?」
「んっ」

首元にきつく口づけられ、赤いしるしがのうなじを飾った。

「昨日つけたばっかりだからまだ消えてないね」
「あ・・・」

そう言われて、昨夜の出来事がばばばっと脳裏によみがえる。
と同時にはっと我に返った。

「カ、カシさん!安静にしてなきゃ今度こそ倒れちゃうって!」
「せっかくがお望みなのに、無視するわけにもいかないでしょう?」

腕が動かせなくて拒絶することができないことをいいことに、首筋に舌を這わせたり好き勝手にキスマークを付け始めたカカシ。
そのたびに身体が反応してしまうのがなんとも悔しい。

「カカシさん!だ、だめだって!」

口だけは立派に拒絶するものの、カカシから与えられる刺激を待っている自分もいる。

それでもやっぱり、これでカカシが体力を使って悪化でもしてしまったら・・・

いやでも薬もあるんだし、こうなってしまったらカカシを抑え込むのも無理だろうし、これで暴れて変に体力を使わせてしまっても・・・
いや体力云々に関しては何とも言えないが。

「まーだ迷ってんの?もういいじゃない、一緒に気持ちよくなろうよ」

の悩んでいることすべてを丸めて終わらせるカカシの言葉に、ぷつん、と頭の思考がストップした。
なんかもう・・・いっか、と対抗していた腕の力を抜くと、それを了承の合図ととったカカシはにこっと微笑んだ。





*    *    *    *    *




「あっ、あっ!や、だめ、カカシさ・・・!」
「ん、イきそ?」

あれだけさんざん迷った挙句、結局はいつものように快楽の海へと溺れてしまった
カカシの突き上げるような動きに、甘い声が次から次へと漏れ出してくる。

相変わらずに覆いかぶさるような体勢のカカシのこめかみから、頬に伝う汗の滴がきらりと輝いてやけに官能的な姿。
珍しく汗かいてる・・・、なんてじっくり見入ってる余裕もなく。
カカシの問いにも、ただ必死に頷くしかなかった。

「そういえば、まだ影分身残したままでしょ?」
「っ・・・え?」

突然カカシが動き止め、あまりにも唐突に思いもしなかった言葉を言われてただぽかんとしてしまった。
が、考えてみれば確かに影分身を出したままで事に及んでしまっているわけで。

「ほら、待っててあげるから解除しな」
「あ・・・うん」

なんで急に、と思いつつ、確かにこのまま影分身を出したままだとチャクラ量に自身のないは不安であったり。
すっかりとろけてしまって力の入らない腕をなんとか持ち上げる。

「手伝ってやろうか?」
「ん・・・」

カカシの優しさに少し甘えて、カカシの手がの手に添えられた。
そして一緒に印を組む。

「「解」」

これでどこかにいる影分身が消えたはずだ。
ほ、と一息つこうとした途端。

「え・・・?や、あっ!な、なに・・・これ・・・ッ!!」

突然身体にとてつもなく甘い衝撃が襲った。
それはさながら絶頂を迎えたような、そんな感覚。

「くっ・・・は、あ・・・ッ!」

どうしてかカカシもと同じように快感に顔を歪めていて、自然とカカシの腰がを突き上げるように揺らめいた。

はどういうことなのかもわからず、そしてどうすることもできず、ただひたすら快楽の絶頂を漂っていた。
まるで達してしまった感覚がずっと続いているよう。

「うあッ・・・!」
「あっ!んっ・・・はあ、カカ、シ、さん・・・!!」

眉間にしわを寄せていたカカシもついに達して、その感覚にの体がびくりと震えた。

「くっ・・・はあ・・・」
「は、あ・・・あ・・・」

ようやく収まってきて、二人して息を荒げながらがくっと弛緩した。
どさりとカカシが横に倒れこみ、目を閉じながら汗をぬぐうように前髪をかきあげた。

乱れた呼吸をなんとかおさめている間に、どういうことなのかなんとなく分かってきた。

「カカシさん、これって・・・」
「・・・・」

前髪を書き上げた手のそのままに、目線だけをむけてニヤリと笑うカカシに、嫌な予感が確信へと変わった。

「もお〜!人が病院まで急いでたのに私の体になんてことしてくれたんですか!」
「ははっ、気づいた?」

影分身を解くまでの間、影分身が経験した記憶はオリジナルへと還元される。
ということは、オリジナルのが影分身を解くまでの間に、オリジナルが得た経験値を影分身が体験していたという訳で。

「はっ!じゃあ昨日カカシさんがあんなになってたのって・・・!」

昨晩、カカシが影分身を解いた瞬間に絶頂に上りつめ、そして今までに見たことないくらい快楽の余韻に浸っていたあの姿。
そしてその感じと同じことが今しがたカカシにも起きていた・・・ということは。

「も、もしかしてカカシさんも影分身をだしてて、さっきまで、か、影分身同士で・・・」
「・・・・」

返事をしない代わりにニヤニヤ笑っているカカシの表情がすべてを物語っている。

「どう?クセになりそうじゃない?」
「クセになりそうとかじゃなくて!!もう影分身は禁止!!!」
「あんな気持ちよさそうな顔してたのに」
「だ、だめったらだめ!」

確かにそうかもしれないけれど、と思わず言ってしまいそうなのを何とかおさめ、どっときた疲労感にため息一つ。

「ごめんごめん、おこちゃまには刺激が強すぎたね」

いつもなら反論していたところだが、ふ、と艶美に微笑みを浮かべるカカシに思わず何も言えなくなってしまった。

それをいいことに、ぐいっとを引き寄せ、優しく抱きしめて甘い吐息が漏れる唇へ口を重ね合わせた。


「せっかくだし、このままもう1か・・・い・・・」
「あ」


再び起き上がろうとした途端、ついにカカシの体力が限界になったのか、そのままパタリと倒れてしまった。

「ほら!言わんこっちゃな・・・い・・・って、あれ・・・」

今度はが起き上がろうとしたところ、くらくらと眩暈がしてカカシと同じようにパタリと元の位置に倒れこんだ

「うそ!わたしも・・・?!」
「あーらら」

くすくす楽しそうに笑ってるカカシを横目で軽く睨みつけ、はあ、とため息をついた。


「今日はもうゆっくり療養しましょうね・・・」
「ま!仕方ないね」

どうしてか嬉しそうなカカシの笑みに、もついつい笑みがこぼれてしまった。

このままゆっくり二人でベッドでゴロゴロできる休日。
なんて幸せなのだろうか。

抱きしめあって、気だるい時間を共に共有する素敵な休日。




後日二人で病院へ行き、大きなため息をつかれるのは言うまでもない。








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