朝、目を覚ましてみると横にはぐっすり眠っているカカシ。 そういえば昨日帰ってきたんだった、と一気に多幸感に満たされる。 「ん・・・」 の起きた気配にカカシも目を覚ました。 「おはよ、カカシさん」 「ん・・・」 眠たそうに小さく目を開け、小さく頷いて、再び目を閉じた。 長期任務から帰ってきたばっかりだから仕方ないか、とは一人ベッドを抜け出した。 洗面を済ませ、台所の前に立つ。 人の家だがどこになにがあるかとか、なんとなく勝手はわかってきた。 冷蔵庫を開き、卵とベーコンを取り出す。 油を引いたフライパンにベーコンを敷き、ジュワッと美味しそうな匂いがしてきたら上から卵をゆっくり落とす。 頃合いを見て水をさして、蓋をして少し待機。 その間に二人分のトーストをトースターにセット。 そろそろ起きてきてもらわないと、と寝室へ。 ドアを開けて、声だけかける。 「カカシさーん、朝ごはんできますよ〜」 「ん〜・・・」 相変わらずの眠たそうな返事が返ってきたが、目玉焼きの様子も気になって慌てて台所へと戻った。 美味しそうに焼けた目玉焼き二つを、ゆっくりお皿へうつすと、チンッとトースターが音を立てた。 それもお皿に載せて、一通り朝ごはんの支度が出来上がった。 しかし普段なら起きてくるはずなのに、一向にカカシが起きてくる気配はない。 不思議に思い、寝室へと再度足を運んだ。 「カカシさーん、二度寝ですかー?」 ひょこっとドアから覗くと、カカシは上半身を起こして片手を頭に宛がっていた。 「カカシさん?大丈夫です?」 何事かと慌てて近寄り、様子を窺う。 「チャクラ切れだ・・・」 「え?」 「チャクラ切れ」 「は〜?!」 どさっと力なくベッドに横たわるカカシに、思わずも開いた口がふさがらない。 「チャクラ切れって、なんで・・・あっ!」 昨日のことをぶわっと思い出した。 長期任務から疲れて帰ってきたのにもかかわらず、わざわざチャクラを使って影分身を出して・・・。 「まさか昨日の・・・」 「いや〜、まさかこんなになるなんてねぇ」 はは、と笑うカカシだが、あまりにもばかばかしい原因には呆れてしまうやら心配してしまうやら。 そしてついでに昨夜のことを思い出してかあ、と頬が熱くなる。 話題を変えようと、ごほん、と一つ咳払い。 「しょ・・・食欲はあるんですか?」 「身体が動かないだけだからね。あー、いいにおいする」 「んー、しょうがないですね。ちょっと待っててくださいね」 とりあえずベッドに横になったままのカカシをそのままに、いったん台所へ。 できあがった朝食のプレートを持って、再度カカシの元へ。 「上半身なら起こせられます?」 「ん、はいはい」 ベッドサイドに椅子を持ってきて、力なく起き上がるカカシの背中を支え起こした。 「なに、食べさせてくれるの?」 「仕方ないからですよ!」 嬉しそうにニヤッと笑うカカシに、なんだか急に恥ずかしくなってきた。 いやいや、これはいわゆる看病なんだから・・・ 自分に言い聞かせ、一口サイズにトーストをちぎった。 「あ、そうだ。悪いんだけどさ」 「?なんです?」 「ちょっと病院に行って薬もらってきてくれない?チャクラ切れっていえばいつものくれると思うから」 「薬・・・はーい、わかりました」 いつものって、どれだけ病院の世話になってるんだ、とすこし不安になる。 毎度、身体を酷使しすぎなのだろうか。 まあ今回はいつもより症状は軽そうだし、この機会にゆっくり体を休めてくれればいいけれど。 そのためには早めに薬を飲ませた方がいいのだろうか。 「影分身の術!」 ドロン、ともう一人を登場させ、影分身に朝ごはんが乗ったプレートを渡した。 「じゃあカカシさん、わたしいまから病院に行ってくるので、その間は影分身ちゃんのお世話になっててくださいね」 「あらら、なんだか悪いねぇ」 眉を下げて微笑むカカシに、早く元気になって構ってほしいから、なんて本心は恥ずかしくて言えなくて笑みだけを返した。 「じゃあカカシさんのお世話、よろしくね」 「はーい、任せて!いってらっしゃい」 「いってらっしゃい。気を付けてね」 影分身とカカシに見送られ、とりあえず身支度を整えてから出発した。 * * * * * 「なんじゃこれ・・・」 足早に病院に着いたものの、待合室はおろか、病院の入口から溢れんばかりの人、人、人。 「ちょ、ちょっとすみません」 体調の悪そうな人たちをどうにかこうにかかきわけ、なんとか病院内へと入り込んだ。 中に入っても、あちらこちら慌ただしく動き回る看護師。 ぐったりとしながら名前を呼ばれるのを待っている患者たち。 「ええ〜・・・」 呆然とその様子を見ていると、顔見知りの看護師が前を忙しそうに走り抜けた。 「あっ、ねぇ!」 「あー、さん!え、なに?さんも食あたり?」 「食あたり?いや、ちがうけど・・・もしかしてこれみんな食あたりなの?!」 言われてみれば、あちらこちらの患者の顔は真っ青で、おなかを抑えてたり口を抑えてたり。 「そうなの。食堂の食材がダメになってたみたいでね・・・。で、違うなら何の用?」 「あ、あのね、カカシさんがチャクラ切れで倒れちゃって!」 「えー!また?で、どこにいるの?」 きょろきょろと辺りを見渡している間にも、あっちでこっちでうめき声が上がっていた。 「いや、今は家にいるんだけど、今回は症状が軽めだからお薬だけもらいにきたの。いま貰っちゃっても大丈夫かな・・・?」 「あぁ、そういうことだったのね。今日はその方が助かるわ。わかった、ちょっとここで待っててね」 「ごめんね〜!」 慌ただしく薬を取りに行く後ろ姿を見送りながら、すぐ横をトイレに駆け込む人が走り抜けていった。 「これは時間かかりそうだわ・・・」 Drama TOP >>>2 Novel TOP |