dorama2 20人の忍が一室にぎゅうぎゅうに詰め込まれた。 「あれ酒なくなっちまったな。すんまっせーん、ビール!」 「ねーあんた演技力なさすぎ!もう裏方にまわすわよ?」 「裏方でも、それなりに大変なんですよ・・・」 「そうよアンコ。衣装係なんて大変よー」 「あ!上忍の血糊が服についてるー」 「わーごめーん。でも水でおちるはず!きっと!」 あっはっはーと、うるさい一団。 この演劇稽古が始まってから、みんなでわいわい飲む機会が断然に増えた。 誰しもが、いつもと違う日常を楽しみ、飲み会を楽しんでいた。 「ね、カカシさん!今日の最後の演技、おもしろかったですよね!」 と、ほんのり酔っぱらったが、絡んできた。 『あれ、こいつ、酒飲んでいいんだっけ』 ふと自然に疑問に思った。 「だぁって、なんかみんな協力してー、演技つづけてー。」 「ま、俺がセリフ忘れちゃったのが悪かったんだけどね」 「いやいやーカカシさん、すっごい上手ー」 「も上手だよ」 と、軽く受け流す感じでに言うと、 は顔を真っ赤に染めた。 『ん?やっぱこいつ酒弱いんじゃないか』 「顔、赤い。飲みすぎじゃない?」 「え、あ・・・うん」 と、急に静かになったはビールを飲んだ。 「それじゃ意味ないでしょ」 その行動がおかしくて、すこし笑ってしまった。 そしてが口をつけているジョッキを取った。 まだ少し残っていたので、飲み干した。 「あ・・・。あははー」 と、笑う。 酒のせいか、顔が本当に真っ赤だ。 「やーだーまっかっかー。かーわーいーいー」 それを見た、これもまた赤いアンコが、げらげらと笑い始めた。 「あらやだわ。アンコが笑い始めたら、もうお開きね」 紅はぐい、と残ったウォッカを飲みほし、爆笑しているアンコを持ち上げた。 アンコは、ういーと酔っ払いの声をだし、紅にもたれかかった。 「あーもうお開きかー」 は残念そうに立った。 するとその体がぐらりと揺らいだ。 「おっと」 危なっかしいの腕を持ち、支えた。 「やっぱ、酔ってる」 「わ。す、すみません、あれれ・・・」 は何とか立とうとするが、立てそうな気配はない。 体を支えてやると、やっぱり大人にしては小さめな体。 『本当に子供サイズだな。』 少し愛着がわくサイズ。 そんなことを思った自分に、少しひいた。 「ま、女の子一人この状態で帰らせるのは危ないから、送って行ってあげましょ」 「え!いいですよー!一人で帰れます!」 ぶんぶんと腕を振る。 と、言いつつ足元がおぼつかない。 紅も、アンコを抱えているし、も頼めるような状態じゃない。 「いーから。子供がそんな遠慮するもんじゃないよ?」 「子供じゃない―!!」 「そう言い返すのが子供っぽいんだけどねえ」 と苦笑すると、が 「な、なに笑ってるんですか〜!!」 と怒ってきた。 「さ、行くよ、ここの勘定、任されないうちに」 「あ、帰ります」 と、まだふらつきながらもふらふらとよって来た。 『なんか・・・子どもというか・・。あ、子犬みたいな感じだな・・・』 想像するとは難なくが耳をパタパタさせて、 千切れれんばかりに尻尾を振る姿が想像できた。 その時はつい、ふ、と吹き出してしまった。 外に出て、並び合って家路に着く。 はまだ腕に絡みついたまま離れない。 ま、ちょうどいいか。倒れなくても済むし。 「カカシさん、私の家、知ってるんですか?」 「まあね。何度かお前の家に出入りする紅とか見たことあるし」 「え・・・?それは私の家を監視していたことですか…?!」 がなぜか瞳をキラキラさせながら言った。 「いや、そうじゃなくてね?」 「やだーカカシさんったらー」 「ただ偶然見ただけだって」 そう弁解すると、かくん、と肩をおとしただった。 「あ、ここでしょ?」 いつの間にかついていたの家。 大きくもなく小さくない普通の家。 「送っていただきありがとーございます!」 びしっと敬礼をカカシに向けた。 こいつバカだなあ、と思いつつ、それにこたえるカカシ。 「ああ。じゃあまた明日な。」 「はーいまた明日もよろしくお願いします」 といって、二人は背を向け別れた。 どさっ 背後から不意に聞こえてきた倒れた音。 ばっ、と振り向くと、が玄関の前でうつぶせで倒れていた。 「ちょ、?!」 アルコール中毒の類で倒れたのかと思い、急いでのそばに行き、仰向けにすると、が寝息を立てて寝ていた。 「はあ・・・」 ため息をつくが、自然と笑みがこぼれた。 「急に寝るとか、赤ん坊かよ」 寝ている彼女の膝の下と首元に腕をまわして持ち上げ、が握っていた鍵を取り、ドアを開けた。 初めての家に入る。 『こんなオチビが一人暮らしねぇ』 と考えながら、目の前にあるベッドに、ベストを脱がしてやったを下した。 腕を離す。 「んー」 はぐいっとカカシの腕を掴んだ。 「あれ、起きてんの?」 そう問うと、規則正しい寝息。 起きてはいない様子。 そして離しそうにない手。 中腰のまま固まってしまった。 「ー?」 返答なし。 やれやれ、とため息をつくと、ベットの隣に座り込んだ。 掴まれた腕をベッドの上に肘掛け、の寝やすいようにしてやった。 しょうがない、起きるまで待ってやるか。 『明日の朝の説明が面倒だなぁ』 「ま、そんときはそん時か。」 と、目の前に落ちている台本に気がついた。 ぱらぱらと捲ると、いろいろと書き込みが。 『こいつでもこんなことしてるんだ』 オチビが少し大人に見える。 そんなの寝顔はどんなもんかと盗み見る。 『やっぱオチビだ』 つい笑ってしまった。 台本を元あった場所においた。 朝の4時。 少しずつ空が明るみ始める。 「ん・・・」 突如が唸った。 『起きたか?』 の顔を除くと、眉に皺をよせていた。 悪夢でも見てるのか、と思った瞬間、は目を見開いてベッドから立ち上がった。 そしてカカシに見向きもせずにだだだだ、とどこかへ行ってしまった。 そして聞こえてきた音。 ぉぇぇぇぇぇ… 「はは、典型的だこと・・・」 呆れて立ち上がり、の向かった場所、トイレに行った。 「うううぅぅぅ・・・」 まだトイレにうずくまっている。 その丸くなってる背中に手を当て、ゆっくりとさすってあげた。 「へ?!」 は真っ青になった顔をこちらに向けた。 「う、うぷ・・・」 そしてまた便器に。 「はいはい。好きなだけ吐きなさい吐きなさい」 幾分かすると、はやっと落ち着いた。 「はぁ・・・はぁ・・・」 「はい、タオル。口、ゆすいできな」 「え、あ。はい」 はだるそうに立った。 『なんで俺、こんな世話焼いてるんだろう・・・』 が口をゆすいでいる間、 トイレから出て、さきほどのベッドに腰かけた。 「あのー、カカシさん。」 「んー?」 「な、なんでカカシさんが・・・?」 は恐る恐る聞いた。 「お前が玄関先で寝ちゃって、ベッドまで運んでやって、俺が帰ろうとしたら、俺の服の裾離さなかったの。で、離すまで待ってたら、お前が吐いたの」 「ああ・・・そうだったんですね・・・うう・・・」 は恥ずかしそうに俯いた。 「ごめんなさい。本当に・・・」 「あーいや、別にいいんだけどね。ま、風呂でも入ってきな。その間に俺は帰らせてもらうよ」 「あっ!もしかして寝てません?!」 「んー。ま、そうなるねえ」 そう言うと、ははっと気がついた。 「今日はここに泊って行ってくださいっ」 「は?」 なにを言ってるんだ、とカカシはあっけにとられた。 「さすがに年頃の女の子の部屋に寝られやしなーいよ」 「なにをおじさん臭いこと言ってるんです!はい、このベッド譲りますから」 といって、ベッドを指さす。 「お前は?」 「私はもう睡眠をとりましたので」 任務みたいなことを言う。 「じゃ、じゃあ私、修行に行ってまいります」 「え?」 「え、だって一緒にいてもいいんですか?」 は目をきらきら輝かせながら聞いた。 『なーんかずれてるなーは。』 「んー、いてもいなくてもいいよ。とりあえず俺は寝るから。」 なんだか急に眠気が襲ってきた。 そう言えば最近は十分に寝てなかった気がする。 ベストと額当て、つけっぱなしだった手甲を取り、床に置いた。 そして口布をおろし、まだ微妙に温かいベッドに寝た。 「あ、カカシさん!」 「・・・なに?」 「何時に起きますか?」 「・・・7・・時・・・」 そこから記憶がない。 深い睡魔に落ちてしまった。 まさか人前でこんな無防備になるとは。 最後にふと思った。 * * * カカシが寝入ってすぐ、風呂に入った。 そしてすぐに出てきた。 カカシの寝顔を見るためである。 すぅすぅと、カカシさんは寝息をたてている。 無防備に。 ベッドの横で膝立ちして、覗き込む。 『わあカカシさんが・・・。素顔で・・・しかも私の家に・・・』 ほぼ初めて見るカカシさんの素顔。 演劇中も、忍の役で口布はつけたまま。 『あーかっこいいな・・・。なんでこんなかっこいいんだろ』 は寝顔を凝視してる。 お察しの通り、はカカシのことが好きだ。 『やっぱ運命だよねー』 くじで決まったヒーローとヒロイン。 がまさかのヒロインだった。 喜んでいる、反面、ちょっと悲しかった。 『私はカカシさんだけのヒロインだもん・・・他の人だったら降りようかな・・・』 と、とてつもない自己中心的な考えだった。 するとヒーローはカカシだという。 なによりも喜んだのはだった。 みんなからは似合わないだの犯罪だの言われていたが・・・。 舞台の練習中も、カカシは少しずつ私にスキンシップをとってくれる。 まあ子供扱いが激しいが。 さっきの演劇の練習のときだって、舞台から降りたときにつぶれた私の腕を・・・。 さっきはよくやったな、って頭を・・・。 さっきは変に酔っぱらったときに腕を・・・。 さっき吐いた時背中を・・・。 えへ、とは頬を緩ませてしまった。 まあ最後のはあまり思い出したくないことだが。 これってアンコたちがいう脈ありっていうやつ? といっても付き合った経験がないからどうゆう状況だかわからない自分が悲しい。 二度と拝めないカカシさんの寝顔を脳に焼き付けようと、必死に眺めていた。 さすがにカカシさんも寝ながら人の視線を感じ取ったのだろう。 ごろりと寝がえりをして、背中を向けてしまった。 『あー残念。』 はふう、とため息をつき、胡坐をかいた。 そして目の前に広がる凛々しい背中を眺めた。 とても大きく、頼りになる背中。 以前任務で一緒にり、サポートしてくれるときに、その背中は大きかった。 そのときに知らされる自分の未熟さ。 たしかに私は上忍には向いてない身長だけど、すこしは実力があると思う。 結構厳しいと思われる上忍試験だって、同期の中でだけ受かった。 でもそれはカカシがいたから。 カカシがいて頑張れたから。 今までの自分の行動を考えてみると、カカシがいたから全部こなしてこれた。 今、練習中の演劇だってそう。 カカシが褒めてくれるから、上手くいったらカカシが喜んでくれるから。 だから必死にやっている。 得意でもない暗記力をフル活用して、セリフを全部頭に叩き込んだ。 少しでもカカシについていけるように。 少しでもカカシと肩を並べるように。 そう考えていたら、自分は『好き』なんかじゃなくて、 ただの『憧れ』なんじゃないのかって。 そう思えてきた。 『好き・・・だよなぁ・・・』 膝を抱え込み、足の間に顔を埋めた。 『好きと憧れってなにが違うんだろ。』 はぁ、とため息が勝手にでた。 『好き、がいいな。カカシさんを好きであってほしいな・・・』 初めての恋を応援すると、 『まだまだ私は子供。年齢的にまだ恋なんて早い。カカシさんを憧れに、新しい自分にしていかなきゃ』 と、否定するがいた。 そんな考えを振り払おうと、ぶるぶると頭をふった。 そんなときに目に入った時計。 刺す時刻は7時になる10分前。 『もう起こすべきかな?』 もやもやする気持ちから逃げるように、立ち上がって、カカシさんの肩に手をあてた。 そして小さく揺する。 「カ、カカシさん。時間です」 よくわからないけど緊張してる自分がいた。 カカシはすぐ目を覚ました。 「もう時間か・・・。ありがとう」 カカシは優しい。 だからわからない。 憧れなのか、好きなのか。 「おはようございます!寝心地よかったですか?」 「おはよ。なんか自分ちのベッドみたいな感じだったよ」 カカシは上半身を起こして、ベッドに座るようにした。 そして眠そうに眼をこすった。 その姿にきゅん、とくる。 「あの、カカシさん。朝食、ご一緒にどうです?」 初恋を応援してるが口走った。 「え?」 カカシは驚いたような顔をしてた。 「あ、いえ。なんでもないです・・・」 憧れと考えているがすぐに否定した。 なんとなくは困った。 どっちが本心…? 「いーよ。朝食、もらってもいい?」 にっこりと優しくほほ笑むカカシ。 その顔には確信した。 私はカカシさんが好き。 憧れなんかじゃなくて、ちゃんと胸がときめく。 憧れ、なんてゆう型じゃおさまらない。 もっと大きくて広い、 『愛してる』型にはまるんだ。 「ありがとうございます」 優しい心遣いで、朝食も食べて言ってくれて、 好き、って再確認させてくれて。 するとカカシはベッドから立ち上がり、の頭をぽんぽんと撫でてくれた。 「なーに思いつめた顔してるの?幼顔がもったいないよ?」 「え?あのー、幼顔って?」 「はは、言葉どうりよ」 カカシさんはそういって、反論しようとするを置いて洗面所へ行った。 「洗面所借りるね。あとタオル借りていい?」 「あ、いいですよ」 洗面所にカカシさんより早く行って、洗面台が汚れてないかチェックしてから、タオルを持って行った。 「これでいいですか?」 「ああ。ありがと」 「いえ。じゃ、おいしい朝食作ります。」 「うん。指、切らないようにね」 「子供じゃないので!!」 そう反論すると、苦笑いをしながらカカシさんは洗面所へ消えた。 『よし!めっちゃ頑張ろう!』 数少ない特技のようなものの一つは料理だ。 その腕を発揮してやる。 『あーカカシさん、どんなのがいいのかな?和食?洋食?それとも・・・私?なんつってー!』 一人真っ赤になって爆笑。 そしてふと我に返り、和食を作ることにした。 カカシに旨い、って言ってもらえるように。 褒めてもらえるように。 喜んでもらえるように。 1<<< Dorama TOP NOVEL TOP |