dorama1 ある夜。 あたりは真っ暗で、星がたくさん輝いていた。 そこに着物を着た女と忍服の男が現れた。 「さん。どうかこの私と一緒になってもらえないでしょうか」 「えぇ、カカシさん。もうわたくしは彼方しか考えられませんわ。」 手を取り合い、視線を絡ませる二人。 そしてひし、と抱きついた2人。 「さん、私と貴女との関係は認められていない・・・。 だけど貴女は私についてきてくれますか?」 「そんなことを聞かないでください。わたくしはただ、彼方のそばにいたいのです。」 そしてカカシはを離し、目を見て言った。 の目には涙が浮かんでいた。 「信じてもいいんですか・・・?」 「ええ」 「では、明日の夜、この国を出ましょう。二人だけで遠い地へ行きましょう」 「はい」 はらりと涙をこぼしつつ、は必死に頷いた。 「明日の夜、私が貴女の屋敷の部屋へ行きます。時間は丑三つ時がよろしいかと。」 丑三つ時、その時間はの屋敷の警護の人たちの警備が薄くなる時間だ。 「その時に荷物をまとめていてください。一緒に外の世界へ。」 「ええ、必ず」 「さあ、今日はもう帰らなくては」 カカシはの手を名残惜しそうに離す。 「ああ、離れたくない。彼方とずっと・・・永遠にいたいわ」 「それは私も一緒です。 ですが、明日までの辛抱です。明晩、ついに一緒になれるのです。」 は決心したかのように、うなずいた。 「ではさん。明日の夜に。」 「ええ、明日の夜に」 二人は後ろ髪惹かれるなか、違う方向を向き、帰って行った。 「はい、カットーーーー!」 暗い世界にぱっとたくさんの光が照った。 「ちょっとーー!いい演技してんじゃないのよー」 今、カット、と叫んだ人物、アンコがに言った。 そして舞台そでから出てきた。 「そおー?涙あんまり流れなかったなー」 といって目をごしごし擦った。 「ちょっとアンコ。電気まぶしい。」 といってと反対側の舞台そでからカカシが出てきた。 「あ、ごめんごめん」 アンコは電気を弱めた。 「ふう。でもこれ、アカデミーの生徒に見せる演劇かねぇ」 「ちょっとカカシー?聞き捨てならないわね」 椅子に座っているアンコの後ろから紅がむっと言ってきた。 「あれ紅、いたの。今日、お前の役は練習の日じゃないでしょ」 「いいの。脚本を書いた身にしてみりゃ、見たいのよ」 カカシが高い舞台からひょい、と降りると、も真似してひょい、と降りた。 「わっ!」 カカシが振り向くとそこには落ちた衝撃でつぶれてるがいた。 苦笑いしつつも、の腕をとり起き上がらせた。 するとは真っ赤になって礼を言って、カカシから逃げるように、椅子に座っているアンコのそばへ行った。 カカシは机の上にある台本を手に取り、次はどこの練習か確認した。 「ねえ、わたし上手だった?」 「もちろんよー。感動して涙が出るくらい」 「ふふー。紅は?どうだった?紅の考えた感じだった?」 「ええ。むしろそれ以上だったわ」 えへへ、と満足そうには笑う。 そんな子供っぽい笑顔に、つい紅もアンコも頬がゆるむ。 「さ、次の練習はーっと。あ、アスマとの言い争いの場所ね」 「あーもう俺かー・・・」 アスマはふかしていた煙草をぐりぐりとつぶした。 「にしても。毎年アカデミー生への演劇がここまで内容が濃いとはな。 しかもヒロインがあのだし、ヒーローがカカシとはよ」 「ちょっとーアスマー。『あの』とはなによー」 「なんだよ。あの、がぴったりじゃねえか」 それを聞いていたカカシも確かにあの、が似合うと頷いてしまった。 「ひどーい!カカシさんまで!」 とは、まったく恋愛のテーマには遠い人物。 とゆうか外見から中身まで、まだアカデミー生のようなもんだ。 だがこれでも一応、実力の伴った上忍。 でも、上忍仲間ではまだ子供扱い。 こんな恋愛ものの演劇は似合わない人だった。 だがしかし。 ある日、紅が上忍と特上を呼び集めた。 自分には関係ないと思って、カカシはソファに座ってイチャパラを読んでいた。 「さー今回の演劇のヒーロー&ヒロインの役を決めるわよ」 と、紅がくじ引きをして、ヒロインに当たってしまったのはだった。 「え…がヒロイン?!」 しまった、といった顔でアンコが紅と顔を見合わせた。 その様子を見ていたカカシは、子役のほうが向いてるんじゃないのか、と心の中で思ったが、特に口に出しては言わなかった。 を盗み見ると、にこにことしている。 「う、うそだろ」 「犯罪に引っかからないか?」 「まじか・・・」 と、口々に言われる。 そんな言葉を聞いて徐々に眉をひそめる。 「ちょ、ちょっと!そこまで言わなくていいんじゃないのー?」 が少し怒った風に言った。 「そりゃあ、こんなすっごい恋愛はしたことないけどさあ。でも、演劇ではいいじゃない!ね、アンコちゃん!」 「う、うーん・・・そうねえ・・・」 アンコが苦笑いで苦し紛れに返事をしているのがよくわかる。 しかし、すでに区切りをつけた紅。 「ま、いいわ。さ、お相手のヒーローを決めるわよ」 紅はごそごそとくじを引き、紙を開いた。 「・・・・」 紅は固まってしまった。 「ちょっとー紅ー?」 なかなか発表しない紅に、その場にいる忍全員が息をのんだ。 しびれを切らしたアンコが紅の握っている紙を奪い取った。 「えーっと・・・カ、カカシーーーーー?!」 「「「「えええーーーーー!!」」」」 木の葉の里すべてに響き渡るほどの大声が、その場に響いた。 「お、おれ?」 さすがに動揺が隠しきれない。 全員がカカシを見つめる。 カカシも冷や汗を垂らしながらアンコを見つめる。 そんな中、1人だけがニコニコとカカシに近寄ってきた。 「わーいカカシさんだー。よろしくーカカシさん!」 ばんばんと背中をたたく。 「や、こんなやつと恋愛ものなんかやったら・・・ほら、危ないんじゃない?法律とか」 世の中に、はたけカカシはショタ、という危ない情報が回るかもしれない。 いけない。そんなことは絶対あってはならん。 よりによってアカデミー生の前で行う演劇なのだから、なおさら犯罪のにおいがする。 どうにか降りようとするカカシを気にせず、その間はカカシの腕に絡みつく。 その様子を見てアンコが青ざめた。 「だ、だめよこんなスケコマシ!!ちょ、紅なんか言ってやってよ!」 「そんなこと言ったってアンコ・・・」 紅はあきれた声をだした。 「おれホントにやらなきゃだめ?」 なおもまとわりついてくるを振り払うが、は楽しそうにカカシに絡む。 「えーカカシさんやなのー?一緒にやりましょうよー」 腕にぶら下りながらは言った。 そんなをぐいぐいと離すが、意地でも動かない。 「無理ね。あんたがやりなさい」 アンコと紅はため息を吐いた。 「やった!カカシさん、がんばりましょうね!」 「・・・はあ〜・・・・」 「さーアスマとのところ練習するわよー」 アンコがそう告げたので、ひとまず喉を潤そうと休憩室へ向かった。 休憩室へ行くと、これからの出番の奴らがうじゃうじゃいた。 奥では休憩室の係にあたったガイが、自分の上に何人か乗せて腕立て伏せをしてた。 イルカ先生がアカデミーからの差し入れです、と全員分のアイスを持って来ていた。 みんなカカシに気がついたのか、口々にお疲れ、お疲れ様です、と声をかけてきた。 「カカシさん、お疲れ様です・・・。どうぞ、水です」 のっそりとハヤテが近づいてきて、水を渡した。 「お、さんきゅ。あーハヤテは休憩室のところの係か」 「はい。楽でよかったです」 水をいっきにぐいっと飲みほした。 「にしても。ごほ・・・。カカシさん、大変ですね」 「ま、最初はやだったけど、なれると楽しいもんだね」 「そうですか。それはよかったです」 近くにあった椅子に、よっこらしょ、と座った。 そして今の自分の発言を思い起こして少し驚いた。 慣れると楽しい・・・か。 確かにそうかもしれない。 任務を待つだけの日々より、過酷な任務をするより数百倍楽しかった。 「ま、相手がだと少しやりにくいけど」 「確かに、そうかもしれませんね」 「アカデミー生から見りゃ、は同年代に見えるんじゃないかね」 「それは・・・ありえそうですね・・・最近の子の発達は目まぐるしいですし」 飲み干したカップを机の上に置き、椅子から立ち上がった。 そろそろいい時間かもしれない。 「じゃ、俺行くわ」 「はい。・・・無理をなさらないように」 ハヤテは自分の疲れた顔を見て、まじまじと言った。 どうにも答えられずあはは、と笑ってその場を去った。 一方は稽古中。 舞台が暗転している。 「はーいお疲れ様ー」 アンコの声が響いた。 休憩室から帰って来たと同時に稽古が終わったらしい。 紅はうんうんと頷いていた。 「紅ー」 アスマにグッドサインをおくっている紅に話しかけてからしまった、と思った。 「え、あ!なにかしら?!」 「お取り込み中すまんね。今日はあとどんぐらい時間とってるの?」 真っ赤になった紅がペラペラと台本をめくった。 「えーっと・・・。あ、次でおしまいよ。一番長いところなんだけどね」 「そ。ありがと」 次のシーンはカカシも登場する。 念のため頭の中でセリフを思い返しておく。 『あー・・・。なんだったけ、あのあとの言葉・・・』 ある部分のセリフがぼっこり欠けていた。 やばい、と近くの台本に手を伸ばすが、先にアンコが持って行ってしまった。 「はい、次はー・・カカシとね!休憩とらなくて平気?」 「大丈夫っすアンコさん!」 「じゃ、さっさと終わらせるわよ〜」 やばいなんだっけ、と考えつつも、足は舞台の位置にすっかり立っていた。 「はい、じゃースタート!」 <中略> 「・・・。貴方はどこまで私たちの中を引き離そうとするんですか・・・?」 カカシが自分から死角となる場所に殺気をむけた。 「ははは。ばれてしまったか」 「気配がばればれですよ、アスマさん」 影から出てきたのはアスマ。 「さて。君はここに何をしに来たのか?早急に答えないと、首が飛ぶぞ・・・?」 アスマは指を鳴らし、5人の忍を呼んだ。 「悪いが君は強い忍だから、こちらも相当強い忍を雇ったよ」 にやりと笑った。 「さあ、答えろ。君はここへ何しに来たのだ?」 「・・・」 「答えろ」 「・・・」 いやー困った困った。 やっぱ本番になってもセリフは思い出せないもんだねぇ。 緊迫した場面なのに頭の中ではセリフの一文字も思い出せず、なぜかアカデミーの校歌が頭の中で流れる。 おかしいと思ったアスマがカカシの顔を見ると、カカシが完全に静止してた。 『あいつ、セリフ忘れてるな』 ぽかんとしたカカシを目の前にアスマは悟った。 「そうか。答えないつもりか。 ・・・いいだろう。おい、お前ら。を連れてこい」 『え?ここはカカシさんが・・・』 『さんを連れてくる?』 『ん?』 忍の役をやっていた特上がいっせいに悩んだ。 どうすればいいのかわからず動き出せない。 『アドリブだ!アドリブ!』 アスマがばれない程度に口パクをした。 それにようやく気がついた特上たち。 「「はっ」」 数人の忍が消え、またすぐに帰って来た。 「ふえ?」 カカシがセリフをド忘れしたことにも、アドリブが始まったことにも気が付かなった。 『ちょ、セリフ違うよ?!』 『ちげーよ馬鹿』 アスマの口パクをようやく悟った。 「カ、カカシさん・・・!!」 「さん!」 カカシがに注意を向けたとたん、カカシはある忍に羽交い絞めされた。 「あっ!カカシさん!」 「くそっ・・・」 「ふはははは!どうだい、カカシ君。目の前に愛しのがいるぞ?」 <中略> そして暗転。 「ストーップ!ちょ、今のなにー?!」 アンコがわめき散らした。 「あ、すまん。俺がセリフ忘れた」 「そしたらアスマ上忍がアドリブを」 「あ?!俺の責任かよ!」 ゲンマに言われたアスマは、げえー、と顔をした。 「アスマー!!あんたえらい!すごい!天才!」 どやされると思ったアスマは、逆にべた褒めされ、拍子抜けした。 「てゆうかよくみんな、付いていったわね」 「いやーがだめだったよな。」 「え?!そんなー!」 「だってお前が一番空気読めてなかったよ?」 「う・・・」 「ま!よく頑張ったよ」 「カカシさぁん・・・」 他の忍びにからかわれて泣きそうになったの頭をわしわしとなでた。 「ま、確かによく用意できたし、セリフもすぐに出てきたし。 子供のわりには・・・っと。上忍か。よくできたもんよ」 「あー子供扱いしたー!」 「はは、すまんすまん」 ぷーっと頬をふくらましたがやっぱり子供に見えて笑ってしまった。 「・・・ねえ、アンコ。なに、あの二人あんな仲良かったっけ?」 「知らないわよ。なんかできちゃってんじゃないの・・・?」 「え、やだ!なにそれ!」 紅とアンコの会話は、みんなのお疲れー!という声でかき消されてた。 「よーし今日の練習は終りだー!」 「飲みに行きましょうよー」 「あー賛成ー」 「アンコー」 「紅ー」 舞台上にいた忍が全員声をかけた。 「そうね!今日は気分もいいし。行きましょう!」 「行こう行こう!とカカシ、あんたたちも行くでしょ?」 そうアンコに聞かれ、別に用事もなかったのでYESと答えた。 「じゃ、酒酒屋にレッツゴ―!」 任務もない20人くらいの忍者が酒酒屋へどかどかと駆け込んだ。 DORAMA TOP >>>2 NOVEL TOP |