季節は秋。
部屋の中から外を見れば、木々は紅く染まり、黄色く染まり。
地面は落ち葉で彩られ、世の中は色彩に溢れていた。

読書の秋
運動の秋


そして食の秋。

こたつに入りながら読書をしているカカシと、その向いで蜜柑を食べていた


そして急に一言。


「鍋をしましょう!」




ぱたん、とカカシは本を閉じ、そのまま体を倒した。
ぐー、と体を伸ばし、リラックスした。

「聞いてます?カカシさん!」
「え?ああ鍋でしょ?」
「はい!」

はいったんコタツに潜り、反対側にいる寝そべっているカカシの隣にいった。

ひょこ、と隣に現れたを抱きしめ、カカシは一言。


「いいけど、俺の家鍋ないよ?」


すると、いままで幸せそうに抱きしめられていたがぴくりと反応した。

「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ?じゃあ鍋食べたいと思った時はどうしてたんですか?」
「うーん・・・店に食べに行ったり友達の家に行ったりしてたな」
「じゃあお店が定休日で友人宅がいなかったらどうするんです?」
「諦めるね。でもそれ以前にそこまで鍋食べたいとか思わないし」
「えええ!」

はカカシの胸板を押し、腕から逃れた。

「いますぐ鍋を買いに行きましょう!」
「え?外寒いんだよ?!」
「鍋のためなら平気です」
ちゃん寒いの苦手でしょ?」
「今言ったじゃないですか。鍋のためなら!」
「えー・・・」

すでにはコタツのそと。

「着替えましょう!カカシさん!」
「んー・・・しょうがないねぇ。ちゃんが喜ぶなら行きますか」

カカシはようやく重い腰をあげて立ち上がった。


ひとまず着替えをすませ、二人は木の葉商店街へと向かった。

「うーんやっぱ鍋は大きいのがいいですよね。今後を考えて」
「今後?」
「今度はこちらが友人を呼ぶんです」
「あーなるほどねぇ」

木の葉スーパーへと入り、鍋を見る。
今はいろんな鍋があり、普通の鍋からおでん鍋、石焼鍋などなど。

「やっぱここは普通に土鍋ですよね」

は迷わず土鍋をカートの中に入れる。

「次は鍋料理の材料ですね。寄せ鍋とか水炊きとかありますけどどれがいいですか?」
「なんでもいいよ」
「・・・寄せ鍋にしますよ」
「はいはい」
「何いれます?」
「なんでもいいよ」
「・・・」

はまじまじとカカシの顔を見た。

「なによ」
「いや・・・本当に鍋をやらない方なのだなぁと思って」
「いや、やるよ?」
「人任せですよね?」

にっこりと尋ねれば、にっこりと

「そ」

と答えたカカシが可愛いと思ってしまった


『不覚・・・!』


はカートを持ってカカシから逃げるように野菜売り場へと向かった。

「ちょっとー?急に行くことないんじゃなーい?」
「わあ。ちょっとカカシさん歩くの早いですよ」

置いて来たと思ったカカシは、いつのまにかすぐ横に立っていて、からカートを奪った。
そしてそのままの指示のもと、鍋の材料がカートの中へと入っていった。



「これで全部?」
「はい」
「あ、酒買ってこうよ。食いながら飲もう」
「ああ、いいですね!あ、ミカンも買いましょう」
「どの酒がいいかな」
「やっぱ鍋とコタツではアイスですよねー」
「ここは無難にビールでいいか」
「よし!」

そうこうしているうちにカートの中身は鍋材料以外にも、酒やらなんやらで溢れかえっていた。


会計を済ませ、買い物袋に入れる。
異常なまでの多さ、重さ。

「カカシさん、これ買いすぎましたね」

苦笑いでが言うと、カカシはなんてこともないように買い物袋を持ち上げた。
そしてすべての袋を片手で持ち、もう片方はの手をとった。

「カカシさん!重くないんですか!?持ちますよ?!」
「いーの」
「でも・・・」
「だってちゃんが荷物持つとしたら両手使うでしょ?そしたら手つなげないじゃないの」
「・・・」

嬉しいやら恥ずかしいやらで、は黙ってカカシに連れられて行った。


さっきまで明るかった世の中も、オレンジの深い世界へと変わっていった。

「日が暮れるの早くなりましたね」
「そりゃあ秋だからねぇ」
「綺麗な夕焼けですね」
「うん」


夕日が温かく二人を包みこむ。

ふわ、と秋風が舞い、落ち葉を連れ去っていく。


夕日をバックライトに
くるくると、紅く着飾った落ち葉が舞い踊る。




秋の買い物



夕暮れ時にて





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