の新しい仕事が始まった・・・らしい。

というのも、が仕事内容を聞きに行った日も、初めて仕事に向かった日も、どちらもカカシは任務に出かけていて話を聞くことができなかったのだった。

聞いた話では、書類や報告書の整理や管理、受け取りや処理などを行なう事務仕事らしいが。
が新しい仕事に就いてから、まだゆっくりとした時間がとれなく本人からなにも聞けていない。

今日だって朝早く任務に出かけてしまいと話す時間もなかったが、昼間の内に帰還することができた。


「それじゃあ、報告書提出してくるからここで解散にしよう」
「ま、待ってください!」
「ん?」

いつものように里の門の前で解散を告げようとしたとき、仲間の一人が大きく手を挙げた。

「俺が!報告書出してきます!!」
「は?」

なにを言いだすかと思いきや、やけに意気込んで言うことのほどでもない内容にあっけにとられた。

「おい!ずるいぞ!カカシさん、俺が行きます!今回の任務であまり役に立てなかったので!」
「まて、それを言うなら俺こそ!」
「いや俺が!」

「・・・・」

大の男三人が呆然とするカカシの前で俺だ俺だと騒ぎ立てる。

「じゃあ・・・いいよ、おれ帰るからお前たちで行ってきてちょうだいよ」
「いいんですか!よっしゃー!」
「ちょ、俺コンビニ寄るわ!」
「今日の任務先でお土産買ってくればよかったなー!」

呆れたカカシの言葉に、途端に顔を輝かせるメンバーにますます訳が分からなくなる。
つい最近まで報告書の提出を面倒くさがっていた奴らが急に態度を変えて、一体なにがあったのだろうか。

「ではカカシ上忍、おつかれ様でした!」
「あ、あぁ」

任務の後だというのに元気いっぱいに走っていくメンバーたちを見送り、カカシはさっさと自宅へと帰ることにした。


家へ帰り重たい忍具を置こうと机の前へ行くと、ある書類が目に入った。

「あ、そっか」

そういえばがカカシの家で勉強をしていたことがあった。
実際に勉強していた姿は任務に出かけていて見ていないが、机の上は巻物やノートなど、その時のままになっていた。

「・・・・・」

ぼんやりとその書類を眺めながら書かれている文字を読んでみる。
文字といっても、報告書や任務依頼書に使われているような暗号文字。

「・・・ん?」

そういえばの新しい仕事内容って・・・

今日の報告書の提出に班のメンバーたちがこぞって行きたがっていたのは・・・

「クソ、そういうことか!」

片付けようとした忍具も身に着けたまま、カカシは急いで受付へと瞬身で向かった。




「なんだよ、これ・・・」

カカシが報告書の提出所に到着すると、そこには何人もの忍が報告書を片手に列に群がっていた。
どいつもこいつも鼻の下を伸ばしてソワソワと行列の先を覗いている。
くノ一たちはそんな男たちを横目に、行列をなしていない受付へさっさと報告書を提出していた。

「ちょっとすみません」

隙間を縫って提出所へと入室すると、そこには横長のテーブルに四人の受付人が並んで報告書の処理を行なっていた。

「あっ、カカシさん!」
ちゃん・・・」

テーブルの一番端っこ、長蛇の列を作っている張本人がカカシに眩しい笑顔を向けていた。
すぐ隣には、の指導をしているイルカがあくせくと後始末に励んでいる。

さん、ほら次の人きてます!」
「あ、はい!すみません!」

ふいっとカカシから顔を反らし、いつもの笑顔を受付に来た忍に向けていた。

「おまたせしましたー!はい!お預かりしますね!」

に報告書を手渡した忍は落ち着かない様子でポッケに手を入れたり腕を組んだり。
なんとか処理を進めるだが、ハッとしてその手が止まった。

大丈夫かな、と思った瞬間、が横に座っているイルカに顔を寄せた。

「あのイルカさん、これって・・・」
「あ、これはですね・・・」

イルカもそのままの距離でに教え始め、はその言葉を真剣に聞いていた。
その様子を遠くから見ていて、なんだかモヤモヤというかイライラというかザワザワするというか。

「はい、受理しました!任務おつかれさまでした!」
「あのこれ、よかったら。差し入れです!」

受理されたのならさっさとその場を去ればいいのに、その忍はポーチから可愛らしいパッケージのお菓子を差し出した。

さすがに受け取らないよな、と見ていると、

「わぁ、いいんですか?ありがとうございますー!」

ぱあ、と明るい笑顔を忍に向け、はカカシのことを気にするそぶりも見せずに両手を伸ばした。





気付けば待機所へ移動して、ソファに座っていた。
いつものように本を読むわけでもなく、用意されているコーヒーを飲むわけでもなく、ただボンヤリと窓の外を見ていた。

「ちょっとー、なんか辛気臭いんですけどー」

待機所に来たアンコがカカシにこれ見よがしに言い放ち、ついでにジローっと睨みつけた。

「あ、もしかしてのお迎え?」

今度はニタッと笑うアンコにカカシはため息一つ。

「そんなんじゃないよ」

これ以上アンコに絡まれるのも面倒で、ようやくカカシは重たい腰を上げた。
そのまま待機所をあとにし、なんだか家に帰る気もなくてフラフラと廊下を歩いていた。

「これらをここにしまったら、本日の業務終了です。あとは任せても大丈夫ですか?」
「はい!」

廊下の途中、少し開いたドアから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声に思わず歩みを止めてしまう。

「今日は報告書の処理が大量で疲れませんでしたか?まさかあんな行列になるとは・・・」
「ふふ、大変でしたけどイルカさんが助けてくださったのでなんとかできました!あ、そうだこれ・・・」
「なんです?」
「さっき忍のみなさんから頂いたクッキーです。よかったらイルカさんも!」

と、嫌でも声の主が分かってしまう会話をついつい盗み聞き。
その後もやけに親しそうに会話をしてから、ようやくイルカだけが部屋から出てきた。
見つかるのも厄介で、イルカが出てくるときは姿を消した。

「・・・・・」

イルカがその場を離れたのを十分確認し、が残っている部屋の中へ気配を消して入室した。


「えっとー・・・」

大量の書類を片手に、ファイリング元を探そうと背伸びして棚に手を伸ばしている
必死に手を伸ばしているが、高い位置にあるファイルに手が届かないようだ。

「はい」
「わっ!」

後ろから腕を伸ばしてファイルを取ってやると、突然現れたカカシには驚きの声を漏らした。

「カカシさんかぁ。びっくりした〜」
「・・・イルカだと思った?」
「え?」

はい、とファイルを渡してやるが、はきょとんと不思議な顔。

「どう?お仕事の調子は」
「はい!イルカさんがすごく丁寧に教えてくれて、なんとか出来てます」

ぱぁ、と明るい笑顔を向けるにカカシは無言で微笑んだ。

「この書類をファイルにしまったら今日は終わりなんですけど・・・」

と、カカシに背を向け再び棚に手を伸ばし始めた。

「そういえば今日、カカシさんが報告書出してくれるかな〜ってちょっと期待してました」
「あ・・・そうだね。でも、ちゃん大人気だったじゃない」
「んー、わたしの作業がまだ遅くて」
「・・・・・」

そういうことじゃないと思うけど、とは口に出せず、じれったくてガザガザと後頭部をかいた。

「でもイルカさんが」
「ねえ」
「あっ!」

細い腕を力任せにグイッと引っ張った。
バラバラと大量の書類が零れ落ち、バランスを崩したが散らばった書類の上に倒れこんだ。

「ちょ、ちょっとカカシさん!」

背中を打ったは小さくせき込みながら、上に覆いかぶさってきたカカシの肩を押した。

「あのさ・・・危機感が足りないんじゃない?」
「え?」

眉間にしわを寄せるの首筋に顔を埋め、きつく口づけた。

「ッ!そんなところ・・・!」
「はは、見えちゃうねぇ」
「だったら!」

暴れるの手をひとまとめに掴み上げ、再び首筋に赤いしるしをつける。
を抑えている手とは反対の手で、ゴソゴソと服の中に手を差し入れた。

「カ、カカシさ・・・!」

の声を遮るよう無理やり口を合わせるも、嫌がるように顔を背けようとした。
その行動がなおさらカカシのモヤモヤした感情を倍増させる。
口づけをつづけながらガバッと思い切り上に着ているシャツを下着ごと捲りあげた。

「んー!んんー!」

バタバタと暴れて抵抗するをそのままに、胸の膨らみを包み込んだ。
顔を背けようとするから口を離し、ふっくりと主張している先端を口に含んで舌で転がした。

「や・・・あっ、カカシさん!」

を拘束していた手を離し、するすると下半身へと下ろしてズボンをずり下げて中へと差し入れた。

「やだ、こんなところで・・・!」

カカシの手を止めようと、は必死に腕を掴むがさすがに力で敵わない。
そうしている間にカカシの手は下着の中に入りこみ、ほとんど濡れていない中へと挿し込まれた。

「ひぁ・・・!まって、どうしたんですか、カカシさん」
「・・・・・」

泣きそうなの声を聞かないように、胸を愛撫していた口を再びの唇へと埋め込んだ。
今度はも諦めがついたのか、絡ませてくるカカシの舌を素直に受け入れた。

「ん・・・・ふぁ・・・」

湿り気もなく潤滑に動かない指だが、少しずつ甘い刺激を与えているとようやく潤いを見せてきた。
それをいいことにだんだんと指のスピードを速めていくと、あっという間にぐちゅぐちゅと卑猥な音が部屋に響いた。

「あっ、や、まって、カカシさん!」

思わず口を離すと、堪えきれない甘い声が次々と漏れ出してくる。

「そんなに大きい声だすと、外に聞こえちゃうよ?」
「!」

カカシの言葉にはパシッと自分の手を口に宛がい、どうしても出てしまう声をなんとか抑えようとした。

「こんな声が聞こえてきたら、イルカが様子を見に来るかもね」

必死に顔を横に振って拒絶を表すにニコッと微笑み、すでに張りつめた自身を取り出し、挿し入れていた指と交代するようにそこへ宛がった。

「なんだったら、聞かせてあげよっか?」
「や、やだ、いやです、カカシさん・・・」

泣きそうな表情を浮かべるの頭を優しく撫でてやり、その行為とは裏腹に自身をゆっくりと埋めていった。

「ん・・・ぅんっ・・・!!」

唇を噛みしめ必死に声を抑えながら身体を震わせるにぞくっと背筋が震える。
何度も身体を重ねて知り得たの弱いところを狙うよう意地悪く突き上げた。

「あっ!!んっ、んぁ・・・!」

狙い通りは大きく身体を震わせ、自然と出てしまう甘い声を抑えようと必死に自分の指を噛みしめた。
が緊張で身を強張らせているためか、いつもより締め付けてくる感覚にカカシもついつい激しく動いてしまう。

「は、あ・・・ッ・・・んっ」
「えらいね、ちゃんと静かにしてるんだ」
「だ、だって・・・!」
「ほら、こんな強く噛んだら痛いでしょ」

が噛みついていた指を手に取り、ぬるりと舌を這わせた。

「あっ、や、カカシさんッ」

なんとかもう片方の手で口を覆うが、力が入らない指の隙間から遠慮なく声が溢れ出してくる。

「!」

ピクリ、とある気配をカカシは察した。
床に押し倒したままのをゆっくりと抱きかかえ、床に散らばった書類を何気なしに端へと寄せる。
自身を挿入したまま、部屋の奥の戸棚の陰へ移動した。

「カカシさん・・・?」
「シー」

不思議そうな顔をするに優しく口づけ、後ろの壁にをもたれ掛けさせた。
口づけに気を取られているの片足だけを持ち上げ、また再び律動を始めた。

「んッ、ふ、ぁ・・・」

舌が絡まる音、二人の衣擦れの音、粘膜同士が混ざり合う音、そしてくぐもったの声がひっそりと部屋に響く。



さーん、終わりましたかー?」


突如、部屋のドアが開きイルカの声が響き渡った。

「!!!」
「は・・・ッ!」

すでにイルカの気配を察していたカカシはともかく、突然現れたイルカにビクッと身体を強張らせた
当然それは、カカシの自身を締め付けるわけで。


「あれ・・・終わったのかな」


ドアを開けたままで中に入ろうとしないイルカに安堵するだったが、安心したのもつかの間、
動きを止めていたカカシがまたゆっくりと腰を動かし始めた。

「?!・・・ッ!は・・・ん・・・」

溢れる声を抑えるようにに口づけると、戸惑うようにカカシの肩に置いていた手をカカシの手に絡ませた。


「入れ違いになっちまったのか」


イルカはそう言い残して部屋のドアを閉めて出て行った。
その間にもカカシは律動を繰り返し、頬を真っ赤に染めたは瞳を潤わせて必死に声を我慢していた。

「はあ・・・あぶなかったね」

イルカが去って少し経った後、耳まで赤くしたに囁いた。
すっかりとろけた表情を浮かべるがやけに妖艶で、ついに果てを目指すようにカカシがを激しく攻めたてた。

「いい顔してる・・・」
「やっ、あっ!ま、まってカカ、シさん!あっ、ダメ、あ・・・!」
「はあ、ちゃん・・・」
「ん、イく・・・、カカシさん、イく、あっ・・・!!」
「うッ・・・!」

絶頂を迎えた瞬間、ずるりとの中から自身を抜き去り、ドロッとの白い太ももに欲望を吐き出した。

「はあ・・・はあ・・・・」

かくん、と力が抜けたはカカシの上半身にもたれかかった。

「もう・・・、ハラハラした・・・」

疲れ切ったの声がカカシの耳元で聞こえる。
カカシはようやく頭が冷めてきて、頬をかいて苦笑い。

「イルカさんいたのに、ひどいですよ・・・。もしばれたらどうするつもりだったんですか!」

思い出したようには顔を上げて怒り出した。

「その時は、それでいいじゃない。には俺がいるんだからってことを身をもって体験できたでしょーよ」
「・・・え?」
「あのねぇ、ちゃんは危機感がなさすぎるのよ」

カカシも思い出したようにに説教を垂れた。
そんなカカシの言葉にはきょとんと不思議そうな顔。

「イルカだって忍の男なんだし、こんな部屋に二人きりになって押し倒されたりなんかしたら、ちゃんだって抵抗できないでしょ」
「そ、それは」
ちゃんのことを狙ってるやつなんてたくさんいるんだから」
「・・・・・」
「それに、口を開けばすぐにイルカイルカって・・・」

くどくどと忠告するカカシにむかって、なぜかは笑顔を向けていた。

「なーに笑ってんの。俺は真剣に・・・」
「ね、カカシさん」

はカカシの言葉を遮って、ニコニコと嬉しそう。

「もしかして、嫉妬、してくれたんですか?」
「・・・・」

こうも直球にこの感情を文字にされるとやけに恥ずかしい。
黙ったカカシに確信を持ったはえへへ、と照れたように微笑んだ。

「大丈夫ですよ、カカシさん。どんな人が私の前に現れようと、カカシさんが一番ですから!」
「・・・・・うん」

よしよし、とに頭を撫でられて嬉しくなってしまうなんて、まるで犬みたいだ。
それでもの言葉が嬉しくて、優しくの体を抱きしめた。

「あ、でも」

ぎゅう、と抱きかえしてきてくれると思いきや、はぐいっと身体を離した。

「もしまたこんな、いつ人が来るかわからないところで押し倒したりなんかしたら、今度こそ怒りますからね!」
ちゃん・・・」

それって今回は怒ってないってことなの、なんて無粋なことは聞かずに、ツンと尖らせた唇に甘い口づけを落とした。

「ありがと」




そして日が変わって次の出勤日のこと。

「おはようございます!」

いつものように元気よく挨拶をしてイルカが提出所へと入室してきた。
今日もの隣で報告書の処理について説明を交えながら指導をしようと、入室してすぐの姿を探した。

「・・・・え」

イルカの視線の先には、本来ならイルカが座るべき席で上忍であるカカシがを指導している姿が映った。

ちゃん、ここはこの欄を見て判断するってさっき教えたでしょ?」
「あれっ、そうでしたっけ?!」
「今度間違えたらお仕置きだよ」
「えええ!」

とまあ、はたから見ればなにをいちゃついてるんだと呆れるほどの二人の姿に、この前はさんざん並んでいた忍たちはバラバラと他の受付へと散らばっていた。


「あ、イルカさん!おはようございます!」
「おはよう・・・ございます・・・」


イルカに気が付いたの挨拶になんとか返事をするが、目の前に繰り広げられている状況が理解できずになかなか二人の元へ近づけないイルカ。
そんなイルカに向かって、カカシはニコッと味気ない笑顔を向けた。

「イルカ先生、おはようございます。詳しいことはまたあとで、ね」
「は、はい」

ビシッと刺さるようなカカシの視線に血の気が引きながら、イルカはよたよたと二人とは反対の端の席へ着席した。

「どうぞ、こちらでも、受け付けます・・・」
「お願いします・・・」

青い顔したイルカの元に、サワラの元へ行こうとしてカカシの鋭い視線にやられ、同じように青い顔をした忍が報告書を提出した。


「あ、ちゃん。ほらまたここ、間違ってる」
「わあ、すみません・・・」
「家に帰ったらお仕置きね」
「わーん!」


そんなこともつゆ知らず、二人の間だけには甘い空気が包み込んでいた。







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