「あ、カカシさん!」 「よっ、おつかれさん」 ばったりと、任務報告所でとカカシは出会った。 お互い簡単な任務の帰りだったため、怪我もなく疲労感もなく。 「カカシさん、このあとは?」 「ん、なんもないよ。飲みにでも行こうか」 「やったあ〜!あ、ちょっと待っててくださいね、いま報告書出してきちゃいますから」 「じゃあ出口で待ってる」 「はーい」 は受付へ、カカシは出口へといったん別れた。 思いのほか受付は並んでいて、たった一枚の報告書を提出するだけなのに時間がかかってしまった。 急いでカカシの元へ向かうと、そこにはよく見るメンツが。 「あれは・・・」 遠くからでもよく分かる。 アスマとガイだ。 なんだか話が盛り上がっていて、その中に入っていける雰囲気ではない。 ちょっと離れてその様子を見守っていた。 なにやらアスマがジョッキを飲むポーズをしていて、ガイがいつものポーズを決めていた。 カカシはというと、ちょっと困ったように笑って、手を横に振っていた。 あの感じ、もしかして・・・。 「カカシさん!」 慌てて駆け寄り、三人の中へ入って行った。 「よぉ。相変わらずちっちゃーな」 「おお!じゃないか!」 にやりと笑うアスマに、眩しい笑顔を向けるガイ。 はそんな二人への挨拶もそこそこに、カカシに向かって話しかけた。 「カカシさん、わたしは今度でいいですから、気にしないでみんなと飲みに行ってください」 「え?あ、聞いてた?」 「まあまた酔っ払いで帰ってこられても困りますけど・・・」 先日の酔っぱらったままの家に届けられたカカシを思い出す。 まあ・・・悪くはないかもしれないけど。 「いやいや、こいつらとはこの前飲んだからもういいのよ」 「先約があるって・・・なんだ、のことだったのかよ」 「そ。だからお二人さんには悪いけど」 「いやいや!いいですよ、わたし家で待ってますから!」 「こらこらこら、待ちなさいよ」 急いでその場を去ろうとするの腕を掴むカカシ。 その様子を見たガイは目をぱちくりさせた。 「む?みんなで飲めばいいんじゃないのか?」 * * * * * 「いらっしゃいませ〜4名様ですね、奥どうぞ〜」 結局、ガイの一言によっても一緒に来てしまった。 アスマやガイと飲めるのは楽しそうだし、以前から一緒に飲みたかったが、せっかくいつもの三人で飲みに行こうとしてたのに、それに割り込んでしまった感が否めない。 果たして本当にこの三人の中に入ってきてしまってよかったのだろうか。 場違いのような、邪魔者になってるような・・・。 三人だけの話が始まってしまったら居心地が悪い。 一体どんな顔して聞いてればいいんだろうか。 せっかく念願のみんなで飲める機会なのになんだかモヤモヤ、ぐるぐる。 まぁ、もうすでに来てしまったのだから仕方がないのだけど。 案内された個室のテーブルの奥にカカシが座り、アスマがその向かいに座った。 ならカカシの隣に座ろうと思っただが、どっかりとガイがその席に座ってしまった。 仕方なくアスマの隣、ガイの向かいに座ると、さっそく店員が注文を取りに来た。 「とりあえず生。は?」 「あっ、じゃあわたしも!」 「あとは〜・・・」 アスマが適当につまみを見繕って注文し、個人的にそれぞれ好みのものを追加した。 さっそくジョッキが4つ運ばれ、の前にもドカッと置かれた。 「はい、じゃあおつかれ〜」 カカシの気の抜けた乾杯で飲み会は始まった。 三人の飲むペースは早くて、ものの数分でジョッキは空になってしまった。 実を言うとビールがあまり得意ではなかっただが、三人のペースにのまれてグビグビっと飲んでしまった。 「なんだかガキ同伴で飲みに来た気分だな」 「ちょっと!それどういう意味?!」 アスマがニヤリと笑いながらを見ていた。 確かにガタイのいい三人の中に一人ちょこんと座っている自覚はあったが、そんなはっきり言われるとカチンとくる。 「どういう意味も何も・・・、ほら、から揚げ食べるか?」 「食べるー!」 「ほらガキじゃねぇか!」 「アスマひどいー!!」 もう知らない、とから揚げを食べるに笑うアスマと、もうすでに頬を赤くしているガイが豪快に笑っていた。 カカシもその様子を見てくすくすと笑ってるのを見て、も不本意ながらちょっと笑ってしまった。 その後、続々と運ばれてくるお酒と料理には翻弄されつつ、ハイペースで酒が進んでいった。 「それでカカシ、この前おまえが言ってた・・・」 「あぁ、あれ?いや、それガイが先でしょ」 「俺だったか?!カカシも一緒にいただろう!」 「・・・・」 ついに恐れていたことが。 三人にしかわからない会話が始まってしまったのだ。 最初は何の話だろうと聞き入っていただが、さすが忍というべきか、まったくわからない。 なんだか途中で飽きてしまって、結局目の前の料理と酒に逃げてしまった。 あー、やっぱ邪魔者だったかなーなんて思ってしまうが、つまらなそうな顔をしても三人を困らせそう。 顔を隠すように、ついついぐいっとジョッキを傾けてしまう。 三人ともすっかりお酒が入ってしまい、わははと楽しそうに談笑しているのをお酒でぽーっとした頭で聞き流していた。 別に頑張ればが会話に参加できないわけではないのだが、やっぱりこの仲良し三人組みの中に入るのは気が引ける。 枝豆を一人で食べ終えたころ、はトイレに行こうと立ち上がった。 「ちょっと、すみません・・・」 ゆらゆらとおぼつかない足取りで席を離れるに後ろからなにか声がかけられたが、居酒屋の喧騒にまみれて何を言っているか聞こえなかった。 まぁ、私がいようがいなかろうが、三人は楽しく飲んでいるだろう。 私がいることで向こうも調子が狂うだろうし、トイレ行ったら何か言い訳つくって帰ろう。 そう決心してトイレから出ると、思った以上にアルコールがまわっていたのか、頭がくらくら、目の前はぐるぐる。 「おとと・・・」 絵にかいたような千鳥足に、なんだか自分で笑ってしまう。 「あは・・・うわあっ!」 よたよたと三人がいる場所へ戻ろうとすると、急に腕を取られ誰もいない個室に引っ張り込まれてしまった。 上手く足に力が入らなくて、引っ張った人物に抱きとめられた。 誰だろう、と顔を上げるとそこには少し頬を赤くしたカカシがいた。 「カカシさん!」 驚いて身体を離そうとしたが、がっしりと抱きしめられていた。 「ど、どうしました?みんなは?」 「お前ねぇ、人の心配より自分の心配をしなさいよ」 相変わらずを抱きしめたまま、カカシの呆れた声が頭上から聞こえる。 「ごめんね、あいつらと一緒でつまらなかったでしょ」 「え?」 「だって、ずっと静かだったし。かと思ったらやけに酔っぱらったまま席外すし」 「あー・・・」 のことを気にしてなさそうだったのに、案外カカシはのことを見ていたようだ。 「つまらなくなかったですよ。三人が楽しそうに話してるのを聞いてるの、とっても楽しかったですし」 これは本当。 「でも眠くなっちゃったからそろそろ帰ろうかな〜って」 これはちょっとだけ嘘。 まさか本人に、三人が仲良すぎて入れるスペースがないから帰る、なんて言えない。 そんなこと言ったら、たぶんカカシを困らせる。 「ま、それならいいんだけど・・・。俺は心配だったのよ」 「心配?」 「そんな飲めもしないのにたくさん飲んじゃってるし、ぼんやりしてるし。無理やり付き合わせちゃったのかもーって」 ぽんぽん、と背中を一定のテンポで叩かれて、なんだか心地がいい。 まるで子供をあやすような行為だが、それには目をつぶる。 「気にしなくてよかったのに。ふふ、でも嬉しいかも」 「え?」 「こうやって心配してくれるんだもん」 「・・・まあね」 照れたようなカカシの声が、なんだかくすぐったい。 「わたし、邪魔者じゃなかったかなぁ」 ぽつりと少しだけ本音を混ぜてみる。 その瞬間、ぐいっと両肩を引かれて身体を離されてしまった。 「まさか、それが本心?」 「え、あ・・・うーん・・・」 屈んでと目線を合わす少し怒ったようなカカシの顔に、目が泳いでしまう。 しまった、言わなきゃよかった。 「も〜・・・。がそんなこと思わなくていいのに。むしろクマとおかっぱが邪魔者だよ」 「あはは、それってアスマとガイのこと?」 「ん」 けらけら笑っていると、ぐいっとカカシの顔が近づいた。 「やっぱりの笑ってる顔、好き」 まっすぐ見つめられてそう言われて、思わず黙ってしまう。 そのまま顔が近づき、唇が触れ合いそうになった。 「カカシィ!!!勝負の続きだぁ!!」 バンっと勢いよくガイが現れて、ふいっと顔が離されてしまった。 「よーし!いいだろう!」 ぽかんとするをそのままに、酔っぱらったカカシはガイの元へ行ってしまった。 「酔っ払いのばか〜〜!!」 がっくりと肩を落としていると、先に出て行ったガイとカカシを見送りながらアスマがを迎えに来た。 「はは、残念だったな。ほら、一緒に飲もうぜ」 「アスマ・・・」 アスマに連れられて、戻る気のなかったさっきのテーブルへと帰ってきた。 酔っぱらったガイとカカシの勝負と、それに笑うアスマ。 考えてみれば、アスマやガイがを邪魔者扱いするはずがない。 なにを心配してたんだろう。 こんなにも楽しいじゃないか。 「アスマ!おれの可愛いに手だしたらブッ飛ばすからな!」 やっぱり来てよかったかも。 Drama TOP Novel TOP |