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任務終わりに報告書を提出がてら、に会いに行こうと受付へと向かった。 受付所へ入る前からなんだか中がざわついている雰囲気があったが、報告書を提出しているときも普段とは違う様子に居心地の悪さを感じていた。 結局はその場にいなくて、待っていても仕方がないとひとまず家に帰ることにした。 「ふあ・・・」 今日の任務はやけに朝が早くて、それでいてひどく身体を動かす内容で先ほどからアクビが止まらない。 さっさと風呂に入って寝ようかなと思いながら玄関の鍵を開け、またしてもアクビをしながら靴を脱ぎ重たいリュックをリビングに置き・・・、と自室でベストを脱いでいたところで玄関のチャイムが鳴った。 「はい」 返事を返して再び玄関へ向かい、止まらないアクビを抑えつつ扉を開けた。 「えっ?!」 扉を開けた先に見た光景に、さっきまでの果てしない眠気も疲労も一気に吹っ飛んだ。 「カカシ先生、本当にごめんなさい」 険しい表情を浮かべたイルカはともかく、イルカの腕に抱かれている小さな女の子に目を見開いた。 3〜5歳くらいだろうか、アカデミーに通うまではいかないくらいで、大きな目をくりくりさせてカカシの顔を見つめていた。 「もしかして・・・・・・・ちゃん・・・?」 カカシをこうも驚かせたのは、その女の子の正体がにしか見えなくて、抱えているイルカが気まずそうに顔を伏せているのが何よりの証拠だった。 「あの・・・、事情があって、その、とりあえずはカカシ先生の元へと・・・」 「イルカせんせいのしっぽ〜!」 「いま真面目な話をしているから、あとでにしてくださいね」 イルカの結んでいる髪の毛で遊ぶ女の子・・・はきゃきゃきゃと楽しそうに笑っていて、目の前にいるカカシのことを気にするそぶりもなかった。 「とりあえず、カカシ先生・・・」 「えっ、あっ」 イルカはポニーテールを握りしめたをどうぞ、とカカシに差し出し、慌てて両手を差し出した。 「いててて・・・カカシ先生のお察しの通り、この子はさんです」 「どういうことなんですか?になにがあったんですか?」 「・・・・・」 突然カカシの腕に移されたはさっきまでのはしゃぎようから一変して、初めて見るかのようにキョトンとカカシのことを見上げていた。 「ハッキリ申し上げると医療班のミスです。俺も預かってきただけなので詳しいことは聞かされていなくて、このあと診断レポートが出るそうなんですが」 「は?医療班?」 「命に別状はないそうですが、ただ詳しいことはまだ・・・」 「まだって・・・」 「やーーー!」 「わっ!」 あまりにも重たく深刻な空気を引き裂くように、カカシの腕の中のがぐいーっと身体を逸らして暴れだした。 「ちょ、あぶな・・・!」 「カ、カカシ先生、とりあえず下ろしましょう!」 子供の扱いに慣れているイルカの言う通り慌ててを下におろすと、すぐさまはカカシから離れてイルカの後ろに隠れる様に足元に引っ付いた。 「・・・・・・」 「と、とにかく、身体だけでなく記憶も幼児化している状態なんです。さすがに自宅に帰すわけにもいかないのでひとまずカカシ先生の元へ連れてきました」 絶句しているカカシに目を泳がせ顔を真っ青にしながらつらつらとイルカが述べていくも、イルカの脚の隙間からじろりと覗いているのことが気になって仕方がない。 「あ、そうだ、これ」 背負っていたショルダーをゴソゴソと漁り、一つの袋を差し出した。 「さんが着用していた服とか、荷物とかです」 「え?」 「お、俺はアカデミーから今のこの服を借りてきただけで、諸々の手伝いはスズメ先生がやられたので何も知らないです!じゃあ俺、戻らないといけないので!」 抑えきれないカカシの鋭い視線に冷や汗ダラダラ流したイルカは、最後に足元のを慣れた手つきでぐいっと抱き合げ、再びカカシの目の前に下ろしたのち「とりあえずカカシ先生の保護管轄でお願いいたします!」と早口で述べた。 「それでは!!」 「ちょ、イルカ先生・・・!」 イルカは少し心配そうにの方へ目線を下ろしたのち、まるで振り切るようにその場から足早に立ち去ってしまった。 「イルカせんせえ・・・」 足元で不安そうな声を漏らしたは姿の見えなくなったイルカのことをいつまでも見つめていた。 「・・・ちゃん、なか、入ろうか」 「・・・・」 今にも泣いてしまいそうなになんて声をかけていいのやら、口をへの字に曲げたはぎゅっとカカシのズボンを掴み、小さく頷いた。 * * * * * 「ねえ!これなあに!」 「こら、あぶないから!」 「きゃー!」 ベッドの上にあがって騒ぐはなおも棚の上によじ登ろうと足をかけ、慌ててぐいっと抱き上げて棚から引き離した。 抱き上げた瞬間、楽しそうにケラケラと足をばたつかせるをベッドの下におろせば、そのままドタドタと部屋の奥へと駆けて行ってしまった。 「ちょ、ちゃん!」 と、ヨロヨロとその後を追うカカシ。 さっきまであれほど不安そうにしていたのに、いまやキャッキャとはしゃぐほど。 時間は少し遡って、カカシのズボンをぎゅっと握ったが家の中へ入ってきた時のこと。 「えーっと・・・おかえり、なのかな」 「おかえり?」 「いや、なんでもない」 先に靴を脱いで家の中に入ったカカシは何とも言えない気持ちのまま振り向けば、小さくしゃがんで靴を脱ぐのに悪戦苦闘しているに気が付いた。 「くつ、脱げる?」 「できない」 むっとした顔でしゃがんだままのの元へカカシもしゃがみ、小さな足に手をかけこれもまた小さな靴を脱がせてやった。 「ありがとお」 くつを脱いだ途端ドタドタと部屋の奥へ進んだかと思いきや、の脱ぎ捨てた靴を整えているカカシのことを振り返った。 「ねえねえ、もう一回ゆって!」 「なにを?」 「さっきの!」 「あ、おかえり?」 「ただいまー!」 「!」 パッと明るい笑顔を浮かべたは、いつも見慣れたの笑顔のまんまで。 「・・・・小さい時から変わらないんだな」 フフ、と俯いて笑ったカカシが次に顔を上げたとき、すでにの姿はそこにはなかった。 「あれ?!」 慌てて玄関から部屋の奥へ向かうと、さっき任務から帰ってきたときに置いたクナイなどが入っているポーチとリュックに手を伸ばそうとしているところだった。 「ちゃん!」 リュックの中には危険な巻物や道具も詰まっていて、万が一術が発動してしまってはケガでは収まらない。 サッと血の気の引いたカカシは慌ててを抱きかかえた。 「びっくりしたあ!」 「こっちのセリフだよ・・・」 腕の中のは目を真ん丸くして、そんな呑気なに思わずカカシはため息をついた。 「ねえねえ、カカシせんせえなの?」 「え?おれ?」 「カカシせんせえ?」 「そうだよ。イルカ先生が言ってたの、覚えてたんだ」 「うん!」 さっきまでのようにカカシに抱きかかえられるのを拒否されないのは、ようやく心の距離が縮まったからなのだろうか。 至近距離でカカシの顔を見るは、小さな手を伸ばしてぐいーっと無理やりカカシのマスクを下ろした。 「あ、こら」 「あはは!カカシせんせえ、変なの!」 ケラケラと笑うに「もー」と苦笑いしながら下におろして、置きっぱなしにしていたリュックやらを自室に持って帰ろうと持ち上げた。 「なにはいってるの?」 「危ないもの。触っちゃダメだよ」 「へー」 自室へ向かうカカシのあとをまるでカルガモ親子のように後ろからトコトコついて歩く。 足元をあっちこっちへ元気に動き回るに脚をぶつけてしまわないよう気を使いながら、なんだかじわじわ実感がわいてきたのかこの状況にようやく違和感を感じ始めてきた。 「ちゃん、本当になにも覚えてないの?」 「なにが?あ!ベッドだ!」 思わず口に出してしまった言葉も、ベッドに向かって駆けだすの耳にはしっかり届かなかった。 の手の届かないように机の上に荷物を置き、元気にベッドによじ登るのことをぼんやり眺めた。 「手裏剣柄、変なのー!」 ベッドの上に丸くなってしゃがんで指で手裏剣の絵柄をなぞるは、つい昨日まで一緒に過ごしていたあのと同一人物だという。 まるで別人だというわけではないけれどこの現実を簡単に受け入れられなくて、でもこの女の子は愛するには間違いない。 そういえばなにをもってして幼児化してしまったのか、それすらも聞くことができなかった。 いつものようにアンコが関わっているのなら大抵のことはいたずらで済むことだが、今回は医療班がかかわっているというところに胸のざわつきが収まらない。 「カカシせんせえ」 元に戻ったとして、の身体に何か悪影響はないのだろうか。 ・・・まさかこのまま元に戻らないのだろうか? 「カカシせんせえ!」 「あっ・・・、なに?どうしたの?」 ようやくハッと我に返ると、思いつめていたカカシとは正反対に無邪気にのしのしとベッドの上を歩き、ウッキー君やイチャパラに手を伸ばそうと棚の上によじ登らんとしていた。 「ねえ!これなあに!」 「こら、あぶないから!」 「きゃー!」 ひっくり返って頭でも打ったら堪らないと、慌ててぐいっと抱き上げて棚から引き離した。 抱き上げた瞬間、楽しそうにケラケラと足をばたつかせるをベッドの下におろせば、そのままドタドタと部屋から出て行ってしまった。 「ちょ、ちゃん!」 と、そろそろ体力の限界を目の当たりにしつつヨロヨロとその後を追った。 の後を追って自室から出てリビングに戻ると、カカシを待ち構えていたかのように立ちすくんでいるがいた。 「ちゃん、元気だね・・・・」 「あのね、喉かわいちゃった」 「あーはいはい。じゃあ、そこに座ってて」 ダイニングテーブルのほうへ指さすと、タタターと駆けて行ったはなんとか一人で椅子によじ登りちょこんと座った。 「・・・・・」 台所に向かいながらその様子を見ていたカカシは、の座った席がやっぱりいつものの席で。 極力、家にある小さなコップにお茶を注ぎ、ついでに自分も一息つこうと同じように注いだコップとあるものを持っての待つダイニングテーブルに戻った。 「はい、おまたせ。これ食べる?」 「食べたい!」 「あとで怒らないでよね」 「?」 はい、と渡したお菓子は、実は前にが食べたいからと言って大事にとっておいたチョコレート。 それ以外に家にお菓子もなく、食べる人物が同じなら悪くないだろうと思いつつも少し後ろめたさもあり。 「イルカ先生、来ないね」 「そうだねえ」 もくもくとチョコレートを食べるをぼんやり眺めながら、その後診断レポートが出たら持ってきてくれると思っていたイルカのことを思い出していた。 そもそも診断レポートが出ていないのかもしれないが、それならそれで何かしら連絡を入れてくれてもいいだろう。 「わたしイルカせんせえ好き!」 「え」 へへへーと笑うに思わず表情が引きつった。 「ど、どういうところが好きなの?」 「えっとねー、しっぽとか!」 「しっぽ?あぁ、髪の毛ね」 子供の言うことだと分かっていながらも返ってきた答えに少しホッとした。 まさかこれで「抱っこされたときの力強い腕」だとか「戸惑いの奥の男らしい瞳」だなんて言われたら目も当てられない。 ほっと胸をなでおろしながらお茶を一口。 「でもね、カカシせんせえの方がもっと好きだよ!」 「ゲホッ!ゲホ!」 「きゃー!」 口に含んだ飲み物が変なところに入り込み思わずせき込んで口の端を拭った。 「あ・・・・そう?ありがとう」 「えとね、カカシせんせえはね・・・・やっぱなんでもない!」 「え?な、なに?」 別に気にしてませんけど、といった表情を決めていたが、恥ずかしそうにコップで顔を隠すについついその先を聞きたくなってしまうのは仕方がない心理なのだろうか。 「あのね・・・、カカシせんせえはやさしいしね、かっこいいしね、だっこされて嬉しかったから、すき」 「〜〜〜〜!」 えへへと照れながら笑うにカカシの顔もかーっと赤くなり堪らず声にならない声を上げて机に突っ伏した。 そんなこと普段のなら簡単に言ってはくれないし、あまりにも直球な言葉がグサッと胸に刺さった。 しかもその表情が幼児独特の可愛さも相まって余計に愛らしい。 「ひみつだよ!」 「・・・ハイ」 突っ伏した時にぶつけた額を撫でながらようやく顔を上げると、は「おでこ だいじょうぶ?」とケラケラ笑っていた。 「ちゃんは・・・ほんとちゃんだね」 「え?どういうこと?」 「いや、なんでもない」 ぽん、と小さな頭を撫でてやりキョトンとしたに優しく微笑んだ。 「お茶、もう少し飲む?」 「のみたい!」 すっかり空になっていたコップに気付き、よいしょと立ち上がり台所へ向かった。 「カカシせんせえは?」 「なにが?」 ダイニングテーブルの方から唐突にの問いかけに、お茶を注ぎながら聞き返すもその返事はなかった。 コップを持って再びテーブルに戻ると、さっきまで元気に騒いでいたがガクリと首を垂らしているのに気が付いた。 「ちゃん?」 ハッとして顔を覗き込むと、まるで急に電源が切れたかのようにスヤスヤと眠りの世界に入っていた。 「ま、あれだけはしゃいでたからね」 いぜん手に持ったままのチョコレートを取ってやり、ぐいっと椅子から抱き上げた。 完全に身を任せている重みがなんだか嬉しくて、ぽかぽかとあたたかい背中をぽんぽんとリズムよく叩きながらベッドのある自室へ向かった。 「よ・・・っと」 起こさないようにベッドの上にそっと寝かせ、ようやくカカシも一息つくことができた。 思えば過酷な任務から帰ってきてそのままこの騒動に巻き込まれ・・・。 子供の世話なんてほぼほぼしたこともなく余計に気も使ってどっと疲れた。 「今のうちに医療班に行くか」 スヤスヤと起きる気配のないの様子を見ながら一歩その場から離れようと足を踏み出した途端「んんん・・・」とぐずるような声を上げてビクッと肩が震えた。 あれほどぐっすり寝てたのにまさか泣く・・・?とジッと様子をうかがう。 「・・・・大丈夫かな」 さすがに一人で残すわけにはいかないので影分身を出して医療班に向かわせようと、物音を立てない様にそっと印を組んだ。 ボン!と遠慮のない音と煙を出して影分身が出現して、自分で出したもののぎろりと睨みつけた。 「ちょっと。そんな目しても仕方ないでしょ」 「バカうるさい、起きたらどうすんのよ」 「はあ〜困ったねぇ」 大の大人が二人そろってこそこそと声をひそめ、ベッドの上に眠る小さなを眺めてはぁーとため息。 「とりあえずおれはここでちゃんの様子みてるから、お前は医療班のところ行くなりイルカ先生のところ行くなりしてきてちょうだいよ」 「了解。でも大丈夫?あんまりチャクラを感じられないんだけど」 「ま、任務明けだからね・・・。ギリギリだから早めに頼むよ」 「了解」 さすがに影分身もその場で瞬身の術をつかわず、オリジナルのカカシとをチラッと見て部屋からそっと出て行った。 「んん〜・・・・」 「あ〜ごめんごめん」 少しぐずり出したに気付き、ベッドの横に座りこんでトン、トン、とリズミカルに優しく肩を叩いてやると、再びはスヤスヤと寝息を立て始めた。 「ごめんね、大変な思いさせちゃって」 安らかな寝顔にいつものの寝顔を思い重ねるも、重ねれば重ねるほど気分が落ち込む。 忍者の世界に足を踏み入れてしまったばっかりに、これまでの人生では起こりえなかった事態に何度も直面させてしまっている。 今回だってまだ診断レポートは受け取ってはいないがなにかしらの影響が無いとは言い切れない。 そもそも元に戻る確証も・・・と何度も頭に浮かんだ不吉な考えが再びじわっと浮かび出る。 「・・・・・」 途端にヘナヘナと力が抜けてしまい、ぽふっとのすぐ横に上半身を突っ伏した。 「まったく・・・可愛いな・・・」 柔らかな頬をつん、と優しくつついてぼんやりと寝顔を眺める。 もし・・・もしこのままが戻らなかったとしたら一体どうなってしまうのだろうか。 まさかこんな小さな子供を腕に抱いて「恋人です」なんて言った暁には。 「おれは待てるよ」 が大きくなるまで、また恋人として付き合えるようになるまでいつまでも待てるし、それまでずっとのことが好きでい続ける自信がある。 「カカシせんせえの方がもっと好きだよ」と言われてこんなにも有頂天になれるなんて、想像以上に単純なのかもしれない。 子供の言うことだとはいえ、それでもその子供は本人なわけで。 「おれも好きだよ」 どこかほほ笑んで見えるような寝顔にカカシも笑みが溢れて、緊張の糸が切れたのかそのままストンと眠りの世界に落ちていった。 『あ・・・・あの時の「カカシせんせえは?」って・・・このことだったのか・・・』 最後の思考回路でそんなことを思い出しながら『起きたときにきちんと答えてあげなくちゃ』と夢うつつに頭の中に思い浮かべて意識を手放した。 * * * * * 夢の中なのだろうか、ふわふわと優しく頭を撫でられる感覚に得も言われぬ多幸感を感じる。 優しくて柔らかな感覚はどこか懐かしくて、気持ちよくて、愛おしい。 このままこの心地のいい状態が続けばいいと思う一方、起き上がってこの感覚の主は誰だろうと見たい気持ちもある。 頭を撫でる感覚がふと離れていってしまい、無意識のうちに自ら手を動かして離れてしまった手を握りしめた。 それは大きくて、柔らかな手。 「おはよう、カカシさん」 「・・・・ちゃん・・・!」 眠りから覚めて顔を上げると、そこには小さな時の面影を残したいつものがベッドから上半身を起こして優しく微笑んでいた。 「ちゃん!戻ったの?!いや・・・夢だったのか・・・?」 「アハハ、夢じゃないですよ」 いつも通りのが目の前にいて、いつも通り笑っている。 床に座り込んでいたがガバッと起き上がって、無我夢中でその身体を強く抱きしめた。 「良かった・・・なんともない?」 「うん、大丈夫。お騒がせしました」 本当になんともないのか、顔をむにむにと触ったり腕をさすったり頭をなでたりと好きなようにいじくりまわして確認するも、どこもおかしいところはなさそうでほっと一安心。 「!」 突然、頭の中に情報が流れ込んできて、寝落ちる前にだした影分身が姿を消したことを悟った。 「・・・・そっか、そういうことだったんだね」 「え?」 「おれに影分身に今回の診断レポートを受け取りに行かせてたんだ。もーちゃんなんでも快諾しちゃダメだよ」 「えっ、あっそこまでバレてるんですか!」 どうやら受付で仕事をしていた時に、医療班が報告書を提出しに来たついでに新術を編み出せたと嬉しそうにに報告したらしい。 ただ忍相手にしか試したことないから一般人にはどう効くのか試したいと苦言を漏らしていたところ、わたしで良ければ!と簡単に引き受けてしまったらしい。 結局、忍相手に効くならもちろん一般人相手には十分効きすぎる訳で、医療班も想定外の身体のみならず精神まで幼児化してしまった事態に陥ってしまったらしい。 どうやら今回は幼児化した際の体力が尽きて効力が切れたらしく、寝て起きたら元に戻ったようだ。 「あ、そうだ・・・あのー、起きたら、アハハ・・・服とかがそのー・・・アハハ」 「え?」 そういえばさっきまで着ていたアカデミー用の服ではなく、ベッド横に置いてあったカカシのパジャマをは着ていた。 「さすがに入らなくて、破けてしまいまして・・・」 ベッドの片隅から幼児用の服を取り出したは恥ずかしいやら申し訳ないやら複雑な顔色で、それを見たカカシは思わず吹き出してしまった。 「ハハ!それでおれの服、着てたんだ。クク・・・元に戻ったがその服着てるのも見てみたかったかも」 「や、やですよー!」 もー、と顔を赤くしながらもケラケラと笑うの表情に幼少期の面影が垣間見える。 カカシはやさしく頬を包み込んでそっと引き寄せた。 「元に戻って良かった」 「カ、カシさん!近いです・・・」 突然目の前に近寄ったカカシにはドキドキと目を泳がせるばかり。 「小さかったも可愛かったけど、さすがに小さい子にはできなかったから」 「な、なにをですか?」 聞き返したの唇にそっと口づけて「こういうこと」とカカシは笑った。 「さすがに犯罪になっちゃうからさ」 「アハハ、そうですね」 相変わらずよく笑うが愛おしい。 「お世話してくれて、ありがとうございました。こんな立派な大人になれました」 「ハハ、あなたは小さい時から可愛かったよ」 「改めて考えるとすごい恥ずかしいですよ」 どうあがいてもと出会う前のに会うことはできないし、ましてや小さいころのと過ごせたなんてもはや奇跡といっても過言ではない。 結果論ではあるがある意味、いい経験をさせてもらったのかもしれない。 「・・・おれも好きだよ、ちゃん」 たくさん笑って走り回って、無邪気な笑顔を見せていたにようやく答えを告げられた。 「うん、知ってる」 そう答えたは幸せそうにほほ笑んで、同じようにほほ笑んでいるカカシにそっと口づけた。 Lover Novel TOP |