SAKURA-SAKURA




窓から見える景色は、色とりどり。
白、緑、黄色・・・・

そしてその大半を占める、ピンク色の桜。


「今年もいい具合に咲いたねぇ」


嫌でも見える桜の咲き具合に、カカシは感嘆の声をだした。

「いま満開・・・ですかね?」
「うーん。八分咲きってところかな」
「一番いいころ合いですね」
「そうだねぇ。そうだ。外、見に行こっか」
「いいですね!」


ということで、二人は桜を見に行くことにした。

カカシの家のまわりは桜がたくさんあり、家の回りを一周するくらいでも十分眺める。


「ん」

玄関で靴をはきこむと、手を差しだしたカカシ。
その手をぎゅと掴んで暖かなドアの外へと出かけた。

ふわりと薫る春の香りと、温かい風。
隣を見れば愛しい人。


「いい旅 夢気分、ですね」
「おやおやさん、公園へ行きますか?」
「ふふ、いいですよ。混んでないといいけど」

時々目の前に落ちてくる桜を手のひらですくい取りながら、公園へと向かった。
小さい公園だったから誰もいない。
二人でベンチに座った。

「38枚!」
「45枚」

二人の手のひらには、どっさりと桜の花びらが乗っていた。

「負けました」
「ざーんねん」

ふわ、とカカシは花びらを舞い上げた。

ひらひらと風に靡くその様子にはしばらく見惚れていた。

「ロマンチッカーですね、カカシさん」
「なによ、ロマンチッカーて」
「ロマンチックな人、ですね」

もふ、とカカシの頭に花びらを盛った。

「なにやってんのよ」
「ロマンチッカーには花びらを」

カカシはそのまま頭を斜めに倒し、横に座っているにそのまま花びらを振りかけた。

「あ、ああ〜・・・」

もろにかぶったは諦めたかのように笑った。


「ん?」

優しい響きで名前を呼ぶ彼を振り向けば、ちゅ、と口づけられた。

突然なことだったので、つい固まってしまった。
ようやく理解でき、カッと頬が赤くなった。

「大好き」

くしゃ、との髪をなで、肩をぎゅ、と抱きしめた。



ふわ、と大きく風がふき、木々から離れた花弁たちが、あたりをピンクに染め上げた。


「綺麗・・・」

ぽつりと呟けば、カカシは一層強く肩を抱きしめた。


「ここはお前の方が綺麗だよ、て言うべきじゃないんですか?ロマンチッカーさん?」

そうカカシのほうを向けば、カカシはぼーっと景色を眺めていた。
そしてぽつり。


は・・・俺から離れないでね」


その横顔は、哀愁が漂り、そしてまた愛しさがあふれ出ていた。

親木から離れる花びらを見て、つい想像してしまったのだろうか。


「そんなロマンのないこと言わないでくださいよ。絶対・・・あり得ないんですから」
「うん」


そう答える声は、まるでまだ幼い少年が助けを縋るような声で。


「大丈夫。私、カカシから離れることなんて絶対ないですから。天地が逆転してもあり得ません」
「うん」


たった二文字の言葉でも、こうも感情が現れる。
そんな奴が忍でいいのだろうか。

うん

たったそれだけの言葉には、溢れんばかりの愛が詰まっていた。



「大好き」

「俺も」



どちらからでもなく、口づけを交わした。





春うらら

桜にうつる

わが恋心よ



紅く染め上がれ 




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