きょうも事務で、いつものように書類を整理中。 溜まりにたまっていた書類や報告書、このままのペースで処理していけば今日中に片付くはず。 まだ太陽は真上に輝いているが、どうにか沈むまでには終わらせたい。 「カカシも今日こそは帰ってこれるかな」 カカシが6代目火影にめでたくも就任してからというもの、業務に追われ、ゆっくりとした時間を共に過ごしたことがない。 それは覚悟していたことでもあるが、毎晩遅くに帰ってきては、朝早く出かけていくカカシ。 もなんとか頑張って起きていようとするが、の起きてられる時間をゆうに超えて、静かにカカシは帰ってくる。 眠りこけてしまっているに気をつかってなのか、カカシも気配を完璧に消して帰宅、出勤している。 最後にゆっくりと話をしたのはいつだろうか。 話したと言っても、業務的な会話。 例えば、これどうなった?とかこれお願いできる?とか。 「はあ・・・」 つい自然にため息をついてしまうが、カカシが火影に就任したことは喜ばしいこと。 里のために頑張っているのだから、構ってもらえないからと言って悲しむのは、まるで子供。 「さん!」 「・・・は、はい!」 重ねた書類の束を持ったまま黙り込んでいたら、隣にいた仲間に声をかけられた。 「火影様が、手が空いたらでいいそうなので執務室に来てほしいとのことです」 「あ、はい!了解です!」 いつものように、また任務についてや、報告書について話し合うのだろう。 待たせてもいけないし、あと少しで今やっている作業も片付くはず。 途中になっている書類だけを処理してから、残りの書類もそこそこに、カカシが待つ火影執務室へと向かった。 ・・・早くカカシに会いたかったからという下心も含ませて。 もう何度目かもわからない執務室へのノックを気軽く済ませ、カカシの「どうぞ〜」という声を聞いてから中へと入った。 「お呼びですか?火影様」 ドアを開けると、歴代の火影たちのように、里を一望できる窓を背に、机に向かうカカシが真面目な顔でを出迎えた。 その顔は、恋人に向ける顔ではなく、業務を行う立派な火影の顔。 「毎回ごめんね。この前提出してもらったこの資料なんだけど」 「あれ!ミスありましたか?」 慌てて机の前へと近寄り、提出した書類を確認した。 「えっとね、ここなんだけど」 カカシがに見やすいように、書類を向ける。 身を屈ませて書類を確認していると、カカシも顔を寄せて書類を確認しつつ指差した。 「・・・・」 カカシが近寄って、ふわりと髪が風に揺れた。 そして、今までにないほどカカシと近くにいることに気が付いた。 書類に目をやるものの、カカシとの距離感に胸がときめく。 「これって・・・って聞いてる?」 「えっ、あっ!」 クスリと笑っての方に振り向いたカカシに驚いて、慌てて顔を離した。 「ご、ごめんなさい!あの、ここですよね?こちら側のミスです!」 恥ずかしくて急いで書類を手に取り、カカシから一歩離れた。 『キスするのかと・・・思った』 少し、残念。 けれど業務中に私情を挟んでしまったことに、すぐに自分を叱咤した。 今は恋人のカカシではない。 火影と、それに従事する者なのだ。 それはカカシも同じはず。 なんて恥ずかしいことをしてしまったのだろう。 頬が暑くなる。 「では、あの、すぐに訂正してきますね!」 ぺこりと一礼してから、踵を返して執務室から出ようとした。 「ちゃん」 「!」 ドアノブに手を伸ばそうとした途端、手と扉の間に瞬身でカカシが現れた。 突然ひらりと火影のマントをたなびかせて目の前に現れたカカシに、はつい目を丸くした。 「ほ、ほかげ様?」 伸ばした手を、カカシの手が取る。 久々のカカシの体温に、ほっとする。 カカシの手はの頬を撫で、唇を撫でる。 「・・・・」 つい、忍の仮面が外れ、恋人の自分が現れそうになる。 けれどここは執務室。 「ダメですよ」 どうにか気力を振り絞って、カカシの手を取り、顔から離す。 けれどカカシは、口づけようと顔を近づけた。 「火影様、ダメですって・・・!」 両手を使うことができないため、顔を背ける。 それでもカカシはの顔を追っかけ、そのまま無理やり口づけた。 「!」 慌てて逃げようとしたが、カカシの唇の感覚を味わってしまい、カカシの手を抑える手の力が入らなくなってしまった。 その隙にカカシは自由になった手での頬に手を宛がい、好きなように口づけた。 「ん・・・はぁ・・・だめ、」 つい、カカシ、と呼んでしまいそうになってしまう。 けれど今は 「火影様・・・」 ぐい、とカカシの胸を押す。 ドアに背を向けていたのはカカシのはずだったのに、いつの間にか位置が逆転してがドアとカカシの狭い空間に押しやられてしまっていた。 後ろはドア、目の前にはカカシという、逃れようのない状況にの心が揺らいだ。 「6代目ー、いらっしゃいますかー?」 突然、ドアの向こう側から声がかけられ、その声にはっとした。 隙ができた今のうちに逃げようとした途端、グイッと腰を引っ張られ、強く抱きしめられた。 「ッ!」 驚きの声を発する前に、カカシの口が再びの口を塞いだ。 そしてそのままカカシの瞬身の術で、どこか知らない、見たことない書庫室のようなところへ移動していた。 ドサッと机の上に仰向けで倒され、足の間に入りこんだカカシがその上から優しく覆いかぶさった。 「ちょ、ちょっと!火影様!」 唯一の窓から太陽の光が降り注いでいるが、書庫室は薄暗い。 その上、机の上という不安定な場所と、床に足がぎりぎりつかない状況に戸惑いが隠せない。 そんなを無視して、カカシはの着ている忍服をいつものように脱がそうとベストの留め具を外し始めた。 慌ててその手を止めようと、カカシの手を抑え込むが力ではかなわない。 ふと、このまま行為に及んでも・・・とヨコシマな考えが頭をよぎる。 しかし先ほどの執務室のように、突然誰かが来る可能性もある。 そんなことを考えているうちに、ベストの前を外されてしまった。 でもようやく、久しぶりにカカシと触れることができたのだ。 この機会を逃せば、次にカカシとキスできるのはいつになるのか。 ああ、でもこんなところで・・・ それに今は仕事中・・・ ぐるぐる、モヤモヤと感情が渦巻く。 「ダメ、ですよ・・・火影様・・・」 精一杯の拒絶の言葉をはいてみるが、カカシには余計に煽っているように感じる。 恥ずかしそうに身をよじりながらも、うるんだ瞳でカカシを見上げてくる姿に、カカシの理性が吹っ飛びそうになる。 アンダーの下から手を差し込み、少し熱を帯びたの滑らかな肌を堪能する。 胸の膨らみが見えるか見えないか辺りまでめくりあげ、手のひらで優しく包み込んだ。 「んっ・・・」 切なげな顔を向けるに、カカシはたまらず口づけた。 何度も、角度をかえて、舌を差し込み、そしてねっとりと絡ませる。 服がこすれ合う音と、いやらしい音が、静かな書庫室に響く。 カカシもも、久しぶりに味わうキスに夢中になってしまう。 いつのまにか、カカシを挟むの両足に力が入る。 胸の膨らみを覆う邪魔な布をずらして直に触れた瞬間、ビクン、との体が震えた。 手のひらに主張し始めたものが当たる。 右手はそのままに、左はするすると下半身に伸びてズボンのチャックを下ろした。 「はぁ・・・ダメ・・・ダメですってば・・・」 カカシの止まらないキスから顔をそらして逃げ、ズボンを下ろそうとする左手を抑えた。 「ちゃん」 耳元で名前を囁けば、みるみるうちにの手の力がなくなっていった。 それをいいことに、ズボンを少しだけ下ろし、下着の上から熱をもったそこを撫で上げた。 「なーんだ、ちゃんも結構その気じゃないの」 「やっ、そんなことない、です・・・っ!」 その言葉を聞いたカカシは一度手をどかし、の腰に手を宛がった。 そしてすでに昂りをみせている自身を布越しに押し付け、そのままゆっくりと腰を動かした。 それはまるで疑似行為。 「や、やだ・・・火影様、これ・・・あっ!」 ゆさゆさと揺さぶられながら、顔を赤くするにカカシはくすりと笑った。 「ど?したくなった?」 意地悪くそう聞けば、は息を荒くしてカカシのことを見つめた。 にしてみれば、カカシの硬くなったものが布越しに感じられるのだ。 布越しなのがじれったい。 身体の動きは、行為に及んでいるそれと同じなのに、決定的なものが足りない。 ほしい。 その言葉を言えば、簡単に手に入るというのに。 恥ずかしさと戸惑いがストップをかける。 「火影様・・・・」 右手でカカシの片手を取り、指を絡ませる。 そして繋げる言葉も見つからないまま、ただもじもじとカカシを見つめた。 「もう、ずるいねぇ、ちゃんは」 カカシは眉尻を下げて微笑み、そしてそのまま軽い口づけを落とした。 空いた手での下着をおろし、自分もズボンから自身を取り出す。 すでに濡れそぼっているそこへ自身を宛がい、ゆっくりと味わうように中へと挿入した。 「はあ・・・・」 挿れた瞬間に、カカシとの口から吐息が漏れた。 久しぶりの感覚に、ついめちゃくちゃにしてしまいそうになる。 も、久しぶりの圧迫感に、一瞬息がつまりそうになった。 ふわりとの頭を優しく撫でた後、両手を絡ませてゆっくりと律動を始めた。 「ちゃん、すごい締め付け・・・」 「あっ、んん、だって、久しぶりだから・・・」 ぐじゅぐじゅと音を立てながら出し入れを繰り返していると、抑え気味だったの喘ぎ声が少しずつ大きくなってきた。 構わずを攻めながら、目の前で揺れる乳房に口を寄せ、ぷっくりと主張しているそこをペロリと舐めあげた。 「はあ、あっ!やっ、だめ!」 ぎゅう、とカカシの手を握り、カカシからの刺激に耐える。 もちろん自身にも力が入り、同時にカカシを攻めたてた。 「く・・・こらこら、締めすぎでしょーよ」 なんて言いながらも腰の動きを速める。 「あっ!んっ、はあ、あっ、あぁ!」 ギシギシと机が軋む音と、肌が触れ合い、体液が混ざり合う音がお互いの耳を犯す。 「も、だめ、イっちゃう、イっちゃう、あ、あああっ!!」 「・・・ッ!」 きゅう、と強くカカシを締め付け、先にが達した。 しかしカカシはその刺激に奥歯を噛みしめて耐えた。 はあ、はあ、と荒い呼吸を繰り返すを愛おしそうに見つめ、頬を撫でる。 「はあ・・・カカシ・・・」 とろんとした目を向けて、にっこりとほほ笑んだ。 「カカシ、もっと・・・もっと、しよ?」 先ほどまででは考えられないほどの積極的な言葉に、ピクリとカカシの自身が反応した。 「んっ、ふふ、こんなえっちな火影様なんて、今までいなかったんじゃない?」 「んー、そうかもね。でも俺だって頑張ってたんだよ?」 「え?」 「ほんとは仕事がひと段落したら休みを貰って、ちゃんと好きなだけいちゃいちゃしようって思ってたんだから」 「ふふ、我慢できなかったね」 くすくすと笑っていると、ずん、と大きく一突きされた。 「んっ!」 「そりゃあね、キスしてほしそうな顔する誰かさんを目の前にしたら、我慢もできなくなっちゃうよ」 言いながらだんだんと腰を動かし始めた。 「ん、はあ・・・私だって、仕事の途中だったけど、カカシに会いたくて」 「仕事放り投げてきたの?」 「うん・・・」 「あらら、ダメじゃない。これはお仕置きが必要だね」 ニヤリと笑うカカシに、も嬉しそうに笑った。 「火影様のなさることなら、なんなりと」 「いい度胸じゃないの」 ちゅ、と軽く口づけて、を抱き起した。 一度ずるりと抜き、を机に手をつくようにさせ、後ろから再び挿入した。 「ん・・・ああっ・・・!」 「はあ、たまんないね」 好きなように腰を揺らして、を堪能する。 お互いほとんど服を脱いでいない。 本当は、肌と肌で触れ合って、体温を感じ合いながら抱きたいのに。 服の隙間からの肌を撫でるが、全然足りない。 もっともっと、と心も体もを求めてしまう。 「あぁ、は、カカシ・・・カカシ」 熱を持った声でカカシの名前を呼ぶに、カカシの気持ちが昂る。 「はあ、・・・こっち向いて」 机についているの腕を引っ張り、無理やり振り向かせる。 腕を引っ張られたことで余計に奥に貫かれる感覚に、の顔が切なげに歪む。 「や、カカシ、だめ、またイっちゃう、ああっ!」 「いいよ、今度は俺も・・・」 「うん、あ、カカシ、あっ、だめ、カカシ!」 「・・・はあ・・・・・・」 「やっ、イくイく、あ、ああ・・・ッ!!」 「んっ・・・・は・・・」 ドクン、と熱い欲望が弾けた。 の力が抜け、くたりと机の上に倒れこんでしまった。 ずるりと自身を抜き、荒くなった息を整えた。 もはやのズボンも下着も脱げ落ちてしまい、まさに行為の後、という扇情的な姿についもう一度、と身体が動いてしまいそう。 夢中で気づかなかったが、窓から差し込む日も傾いてきて、部屋の中はすっかり薄暗くなってきていた。 これ以上ここで続けるはまずいかな、とやけに冷静な頭で考えた。 「はあ・・・」 ようやく息が整ったがゆっくりと立ち上がった。 床に落ちてしまっているズボンと下着をに手渡すと、恥ずかしそうに受け取った。 お互い身支度を整え、適当に置いてある椅子に座って一息ついた。 ぽん、とカカシの肩にの頭をもたれさせ、手を繋いだ。 まるで今まで触れ合えなかった分を、取り戻すように。 「あとでシャワー室使っていいからね」 「火影様の権力でですか?」 「はは、そうね。6代目火影の名のもと、シャワー室の使用を許可しましょう」 「ありがたき幸せー」 なんて、他愛もない会話をしているうちに、日はどんどん傾き部屋の中はますます薄暗くなってしまった。 「・・・さて。そろそろ戻らないと、怒られちゃうかな」 「あ!!わたしも残りの仕事!」 慌てて立ち上がると、カカシもようやく重い腰をあげた。 来た時と同じように、カカシがを抱き上げて瞬身の術で執務室へと戻った。 「そういえば、さっきの部屋はどこだったの?」 「ああ、あそこは特別な忍と俺しか入れない書庫室」 「・・・そんなところで・・・」 「しちゃったねぇ」 ほくほくと嬉しそうに言うカカシ。 「さ、シャワー浴びてすっきりしてから、残りの仕事片付けちゃおう」 「うん」 「次の休みは、覚悟しておいてね」 「・・・・うん、わかった」 やけに素直に返事をするに、カカシはついその体を抱きしめて押し倒そうとした。 「こら!怒られちゃいますよ!」 なんとかカカシを避けて、一足にはシャワー室へと消えてしまった。 その後、仕事に戻ったカカシは案の定突然いなくなったことを怒られ、いない間に訪問した数多くの忍の書類処理に追われた。 一方も、すぐに戻ってくると思っていたのになかなか戻ってこないことを心配され、 そのうえ火影の姿も見えなくなったと情報を聞かされ、なにかあったのかと質問攻めされてしまった。 「こんな時間まで、一体なにしてたんですか!?」 その質問に、二人して曖昧な笑いを浮かべることしかできなかったのだった。 NOVEL TOP |