、愛してるよ」

「うーん・・・なんか違う」

「だよね」

ベッドの上であぐらをかいて向き合うとカカシ。

一人は悩み、一人は苦笑い。


「作戦タイム!解!」


そう言ってが術を解くと、ドロンとカカシは煙をまとい、の姿となった。

「カカシさんはたぶん、そんなあっさり言わないと思う」
「私もそう思う。イントネーションもちょっと違うよね」
「そう!さすがわたしの分身ちゃん!」


本日はお休み。

ただいま影分身とお遊び中。


「にしても・・・影分身の術に加えて変化の術となると、だいぶチャクラ持っていかれるなぁ」

元からあんまりチャクラ量には自信がないだったが、今回この”遊び”を思いついて、すぐさま行動に移した。

というのも、カカシが遠征任務に出かけて一週間。
任務内容は護衛ということで負傷の心配はない。
が、この一週間カカシに会えなかったは日々カカシを想ってため息をつくばかり。

「よーし、もう一回。変化!」

ドロン、と目の前に忍服姿のカカシが現れる。

「・・・・」

黙ってを見つめていれば、それはもう本物のカカシのよう。
は指を伸ばしてカカシの口布を引っ張り下ろす。

「カカシさん・・・」

口づけようと顔を寄せるが、あと少しのところで止まってしまう。
見た目はカカシだが、やっぱり中身は自分なわけで。

「はあ〜、だめだ!」

ぐでっとカカシの膝に崩れ落ちると、カカシは優しくの頭を撫でた。

「あと少しだったじゃない」
「あ、その言い方カカシさんに似てる」

なんだかますますカカシに会いたくなってきた。

「じゃあカカシさんを研究しよ!」

ガバッと起き上がると、カカシはきょとんとした。

「研究?」
「そう。じゃあ、分身ちゃんは今から本気でカカシさんになりきってね!あなたはカカシさんにな〜る〜〜・・・」

カカシの目の前で手をうねうね動かし、暗示をかける。
するとカカシはくすくす笑ってはいはい、と適当にをあしらった。

その姿にふと本物のような錯覚が起きる。
もしかして暗示にかかったのは自分かもしれない。

「で?俺はどうすればいいの?」
「あ、えと・・・じゃあ私の質問にきちんと答えてください!」
「りょーかい」

は姿勢をただし、ごほん、と咳払いをする。

「では、えーっと・・・カカシさんは、きょう何が食べたいですか?」
「んー、和食かな。秋刀魚は時期じゃないから残念だけど、ナスの味噌汁があれば最高」
「そうですね!」

思った通りの答えが返ってきて嬉しくなる
まあ自分自身が応えているわけなのだから、思った通りの回答が出てくるのは当たり前なのだが。

「じゃあ次に、カカシさんはわたしのことどう思っ・・・いや、これは踏み込みすぎか・・・もう少し質問を重ねてから・・・」
「なーにぶつぶつ言ってんの」
「わっ!」

考え事をしていたら急にカカシに押し倒され、突然ぐるんっと視界がかわった。
驚いては間抜けな悲鳴を上げた。

「ほら、次の質問は?」

を見下ろすカカシの挑戦的な表情に、思わずはドキッと心臓が跳ね上がった。
もう、目の前にいるのは影分身ではない。
愛してやまないカカシ。

「・・・カカシさんは、わたしのことどう思っていますか?」

頬が熱くなるのが分かる。
恥ずかしくて目の前のカカシのことが見られない。

「俺はね、いつものこと子ども扱いするけど、ほんとはそんなこと思ってないよ。もう立派な大人の女性だ」
「カカシさん・・・」

カカシはグイッとの耳元に顔を寄せ、甘い声で囁いた。

のこと、大好きだし、愛してるよ」
「カカシさ〜ん!」

たまらずはガバッとカカシに抱きついた。
ぎゅう、と抱きしめてカカシの首元に顔を埋めた。

「私もカカシさんのこと大好きだし愛してます!」

えへへ、と笑いながら閉じていた目を開けた。


「随分と楽しそうじゃない」


「カ、カカシさん!!!」


目線の先、寝室のドアの入口にもたれかかって立つ、恐ろしいくらいにっこりと笑ったカカシとばっちり目が合った。
その姿を見た途端、ピシッとは固まった。

途端にぼふんっとの影分身の術が解け、一人がベッドの上に残された。

「いや、これはちがくて・・・」
「なにがちがうの?」
「え?えーっと・・・」

ずん、とカカシがの元へ歩きだし、途端に頭が真っ白になる。

「ていうかいつから」
「まだ俺の質問に答えてないでしょ?」

の言葉を待たず、言葉を重ねるカカシ。
ぎしっと音をたててが座るベッドへ腰かけた。

「や、その・・・ごめんなさい」
「なんで謝るの?俺じゃなくても楽しめたのなら、俺は来なかった方がよかったかな」

ふぅ、とため息をついて立ち上がろうとするカカシに、慌ててはタックルをかましてベッドに押し倒し、立ち上がれないように馬乗りになった。

「なに言ってるんですか!わたし、カカシさんに会いたくて会いたくてしょうがなかったんですから!」
「そのわりには影分身と楽しくしてたじゃない」

ぷはっと口布をおろし、依然と不機嫌な目でを見つめた。

「うう・・・カカシさんのバカ・・・わからずや・・・」

せっかく久しぶりのカカシだと言うのに、怒らせてしまった。
うまく説明できない自分に腹が立つ。
なのにカカシに八つ当たりしてる自分になおさら苛立つ。

ぐるぐると巡る感情は抑えきれずに、涙となってからあふれ出た。

「あんなの、おままごとですよ!カカシさんの口から聞きたいに決まってるじゃないですかぁ」

ぽたぽたっとカカシの頬にの涙が零れ落ちた。

・・・・」

カカシは困ったように眉を下げ、よいしょと起き上がってを包み込むように抱きしめた。

「ごめん。泣かせるつもりはなかった」
「だって久々のカカシさんなのに機嫌悪いし怒らせちゃってるし」

うええん、とカカシのベストを涙で濡らす。
カカシは苦笑いをして、ぽん、と優しく頭を撫でた。

「ごめんね、実を言うと嫉妬しちゃった」
「ふえ?」

思わぬカカシの言葉に、は顔をあげた。
すると照れたようにカカシは頬をかき、涙を流すから目を反らした。

「だって・・・影分身ごときの言葉では喜んでたから」
「ごときって・・・あれ一応わたしなんですけど」
「はは、じゃあ言い換えようか」

むすっとするに、カカシはようやく笑みを見せた。
の影分身がやっていたように、の耳元に口を寄せた。


が思ってる以上に、俺はのこと愛してるよってこと」


そのままついでに、油断しきったに口づけた。

はぼんっと顔を真っ赤にして、くたりとカカシに倒れこんだ。

「久々のカカシさんに、そんなこと言われちゃったらもう、ダメです・・・」

抱きしめたの背中を優しく撫で、カカシは幸せそうに笑った。


「ま、大人の女性にはまだまだほど遠いけどね」


そのカカシの一言でにこにこ笑っていたの表情がビキッと歪んだのは言うまでもない。






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