ジリジリと暑い夏。
汗すらも蒸発しそうな窓の外ではセミがジーワジーワと大合唱し、ときたま吹く熱風は暑さでぐったりとした草木の葉を揺らした。

暑さにやられているのは草木だけでなく、家の中でぐったりしている人間も一緒だった。

「カカシくん、アイスコーヒー淹れるけど飲む?」
「・・・・・」
「カカシくん?」

キッチンでコーヒーを入れる準備をしていただったが、ソファに座っているカカシから返事がなく思わず様子を伺った。
長い脚を組みながらソファに座っているカカシは、ひじ掛けにひじを置いてぐにゃりと曲げられた手首の上に頭を預けていた。

「・・・寝てるのか」

さっきまで本を読んでた気がしたが、どうやら眠ってしまったらしい。
連日の任務で疲れているのだろうと、そっとそのままにしてとりあえず自分のアイスコーヒーだけを淹れた。

カラン、と氷が奏でる涼しい音が部屋に響き、その音に気付いたのかむくりとカカシの頭が起き上がった。

「いいにおい」
「カカシくんもいる?」

寝ぼけなまこでそう言うカカシに尋ねれば、眠たそうな顔をしながらコクンと頷いていた。
カカシの分も淹れている間に、ふあぁ、と欠伸する声が聞こえてきて思わずも大あくび。

も寝不足?」
「ん?ううん、カカシくんのがうつっただけ。って、カカシくん寝不足なの?」
「うーん、そういうわけじゃないんだけど、なんか頭がぼーっとしちゃって」

その間にコーヒーが出来上がり、氷を十分に入れてカカシが待つソファへ持っていった。

「はい」
「ありがとう」

もカカシの隣に座り、窓の外の灼熱の世界をぼんやり眺めた。
薄い水色の空にもくもくと立体的な雲、いわゆる入道雲が大きく空を占めている。
これだけ太陽がギラギラと輝いていたら世の中も暑くなるだろうし、人間だってその暑さについていけないだろう。
そういえば最近テレビや新聞でも夏の暑さにやられた人たちの話をよく目にする。

「・・・・念のため聞くけど、食欲はある?」
「え?うーん・・・これだけ暑いと食べる気も失せるしねぇ」
「気だるいとか、倦怠感とか?」
「なんとなく怠い感じはあるけど・・・」

その完璧すぎる回答には思わず頭を抱えた。
まさかとは思っていたが思い当たる症状にすべて該当する答えに、隣で相変わらずぐったりと座っているカカシのことを振り返った。

「カカシくん、それ完全なる夏バテだよ!」
「えー、ちがうよ。ただちょっと怠くて食欲がないだけでしょ」
「それが夏バテなんだって!」

えー、と一向に認めないカカシには呆れながらもソファから立ち上がり、紙とペンを持ってダイニングテーブルの前に立ち、さらさらとメモを書き始めた。

「? なに書いてるの?」
「買い物メモ。今日の夕飯は、夏バテ解消レシピ」
「えー、あんまり食欲ないなぁ」
「だーめ。ちゃんと食べないと!元気になってもらわなくっちゃ」

確か新聞ではたんぱく質とビタミンが豊富な豚肉とか夏野菜がいいとか言っていた気がする。
豚肉・・・夏野菜・・・、と頭の中で献立を考えていると、後ろでカカシが「元気に、ねぇ」とつぶやきながらソファから立ち上がる音が聞こえた。

「あ、あとね、睡眠不足も原因なんだって」
「じゃあさ」
「!」

後ろを振り返った瞬間、いつの間にか目の前に迫っていたカカシに驚いた。

「いいこと考えたよ、おれ」
「は、はぁ」

さっきまでの怠そうな表情はどこへやら、ニヤッと口角を上げて怪しく微笑む姿に思わず圧倒される。
の知らない何か忍者界でしか流通していない情報なのかと考えていると、カカシの両手が腰と頭の後ろに回された。

「?!」

ガッチリと固定された姿勢で何をされるのかと思いきや、今度はカカシの顔が近づいてきて唇を重ね合わされた。

「ちょ・・・んっ・・・!」

ちょっと待って、と言おうとした瞬間、口を開いたのをいいことにぬるりと舌が口腔内に侵入してきた。
突然の出来事に思わず顔も腰も引いてしまいそうになるが、先ほど回されたカカシの手がそれを許さない。

「ん・・・、は、ぁ・・・」

なんとか手でカカシのことを押し返そうとするも、逆に押されてテーブルの上に押し倒されそうになっていた。
慌てて片手を後ろに回して身体を支えるも、カカシからの口づけで頭もぼんやりしてきてだんだんと力が抜けてくる。
そうなれば自然とテーブルの上に押し倒される形となってしまうわけで。

なおもカカシは舌を絡ませた口づけを続けながら、器用にの着ているブラウスの前ボタンを一つ、二つと外していった。

「ま、まって・・・」

口づけの合間になんとか声を発するものの、もちろんそれを聞き入れるカカシではない。
開いたボタンの隙間からカカシの熱い手が差し入れられた瞬間、びくっと肩が反応してしまい、その動きでようやく二人の顔が離れた。

「カカシくん・・・、いいことって・・・?」
「いいことって、イイことだよ」

すっかり欲情した表情を浮かべるカカシに、もはやどうでもよくなってきたはあることを提案した。

「ここ、不安定だからベッドがいい」



*    *    *    *    * 


 
「あ、あっ!イく、だめ!あ、んっ・・・!」
「いいよ、イって」

さっきまで冷房のかかった部屋にいたが、冷房を切っている寝室に移動して冷房を付けることも忘れて身体を交えていた。
ベッドの上でまぐわう二人はすっかり汗だくで、上に覆いかぶさるカカシの額から伝った汗がの頬にポタリと垂れる。
それすらも甘い刺激になって耐え切れずにはすぐに上り詰めてしまった。

「あ、カカシく、ん・・・!イ、く・・・!」
「ッ・・・・!」

の締め付けにカカシも欲望をはじかせ、の腹の上にドロリと熱を吐き出した。

「はぁ・・・は・・・暑いね」
「ん・・・あつすぎ・・・・」

部屋の中はムンムンと暑く、そのうえ二人の体温は上がりっぱなし。
しかしその暑さが余計に二人をかきたてているのも分かっていた。
は腹の上に出された精液を指でぬぐい、カカシに見せつけるようにぬるりと指先を動かした。

「カカシくんのもあつい」

ニヤリと笑ったのあまりにも妖艶な姿にカカシはクラクラと眩暈がするようで、堪らず貪るように口づけた。

「んんっ・・・・!」

口づけの合間に漏れる吐息や堪えるような表情にお互いがお互いを高まらせる。

「は、カ、カシくん・・・・・」

お互いの鼻と鼻同士がくっついて、そこからカカシの汗がへ伝っていく。
息苦しくても止められない口づけにだんだんと空気が足りなくなってきて、それでも相手を求める気持ちが熱暴走する。

・・・・」

ようやく顔を離しうわごとのように名前を呼び、乱れた呼吸もそのままに熱を持った自身を再びの泥濘の中にさし挿れた。

「あっ・・・!は・・・ぁ!」
「は・・・気持ちいい・・・」

息つく間もなくカカシから与えられた大きすぎる快楽にはシーツをぎゅっと握りしめた。
の目じりには涙なのか汗なのか分からないしずくがキラキラと輝いていて、それを見ているだけでカカシの自身がずくりと疼くのを感じた。

の中、あつい・・・」
「カカシくんのも、あついんだから」

の答えにカカシはニヤッと笑って見せ、まるでその熱で中をかき回すように腰を動かした。
途端には甘い声を上げ、気持ちよさそうに顔をゆがませた。

「んぁっ、あッ、それ、ダメ・・・!」
「気持ちいいんでしょ?」

そういうカカシも中で擦れ合う感覚に腰の動きが止められず、思っていた以上に自分自身も限界が近いことに気が付いた。

「カ、カシくん・・・」

ふとの両腕がカカシの首に伸び引き寄せられたかと思えば、こめかみに流れる汗を艶めかしく舌で舐めとった。

「・・・ッ!」
「ふふ、塩分補給」
「またそういう・・・」

ズルいことするんだから、と言いながらズンと突き上げて、お返しと言わんばかりにのこめかみの汗を舐め、そのまま耳を犯すように舌を這わせた。

「ひぁ・・・!あ、んん・・・!」

ビクビクと身体を震わせ、それに合わせての中もカカシを締め付けるようにうごめいた。
その感覚に思わずカカシもぞくりと背筋が震え、耳から顔を離したかと思えばすぐさまに口づけた。
そのままに覆いかぶさったまま動き始めると口の中に直接の甘い声が響き渡った。

「ん・・・んむ・・・ぁ・・・・!」

くぐもった甘い声とお互いの体液が混ざりあう音が聴覚を刺激し、二人は強く密着したまま快楽の海に溺れた。

「あ、んん・・・!あ・・・、カ、カシくん・・・ッ!!」
「く・・・・うぁ・・・ッ!」

ビクッと身体を震わせたかと思えば舌を絡ませたままは絶頂を迎え、その後を追うように何度か腰を叩きつけた後カカシも勢いよく熱い熱を最奥へ吐き出した。

「ん・・・!あ、あつ・・・・」
「はぁ・・・、は・・・」

絶頂を迎えたあとも二人は身体を密着させたままで、乱れた呼吸が収まったあたりにようやくずるりと自身を引き抜いた。

「あっつ・・・」

前髪をかきあげながらの横に仰向けに倒れこんだカカシはすぐさまエアコンのリモコンを手に取りスイッチを入れた。

「死ぬかと思った」
「気持ちよすぎて?」
「暑くてだよ!」

アハハ、と笑ったはふとあることに気が付いた。

「ていうか・・・カカシくん、夏バテは?」
「ん?としたら元気になった」
「な、なにそれ!」

心配して損した、とむくれるに対してゴロンと寝返りを打っての方に向いたカカシはそっと抱き寄せた。

「心配してくれてありがとね。でもこれで分かったでしょ?」
「まあ・・・元気ならよかったけど」

納得できたようなできないような、なんとなく腑に落ちない気持ちだがカカシが元気ならそれに越したことはない。

「だからね、も夏バテかなって思ったら俺が解消してあげる」
「え?」
「いーっぱい、えっちしてあげるね」

耳元でそう囁けば、顔を真っ赤にしたが以外にも素直に小さく頷いたのを見たカカシは、無言のまま再びエアコンのスイッチを切った。

「予防のために、もう1回しよっか」

部屋の温度は再び上がり、またしてもムンムンとした熱気が二人を包み込んだ。








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