カカシが任務に出かけている夜。
一人でベッドで寝ていたは不穏な気配を感じて目を覚ました。

「・・・・・」

その気配の元が分からず、若干の恐怖を感じてそっと布団を握りしめた。
すると玄関の方からガチャっとドアが開く音がして、気をはっていた分ビクッと身体が震えた。

「ただいま」

小さくカカシの声が聞こえドアを開けた主が判明したものの、帰ってきたことの安心感がいまだ得られずにいた。
今すぐにでも「おかえりなさい」と迎えに行きたいが、身体を動かすことができないほどの緊張感にただベッドの中で冷や汗と共に目を泳がせるだけだった。

きっとカカシもが寝ていると思っているだろうが、なぜだかさっきからやけに物音を立てて装備を外している。
なにかあったのだろうかと、やはりカカシの様子を見に行こうとするがさっきより余計に強まった恐怖感に体を起こそうとする腕に力が入らない。

「ふぅ・・・・」

ようやく身体を起こしてベッドの上に座り、大きく息を吐きながらぎゅうっと自分の肩を抱いた。
まさかカカシに対して怯えているのだろうか。

「そんな、まさかね」

どうしてカカシに恐怖を感じなければならないのだろうと自分に言い聞かせ、ようやく立ち上がっておそるおそる寝室のドアを開けた。

「・・・カカシ?」

「!」

ドアを開いて真っ暗な廊下の先、暗闇からカカシの唸るような声が聞こえてビクリと肩が震えた。

「お、かえり。・・・大丈夫?」

声がするほうへ歩み寄ろうとしたが、異様な空気に圧倒されて足がその先へ踏み出せない。

「ただいま。大丈夫だから、寝てていいよ」
「・・・・・」

優しい声色に聞こえるが、さすがのでもわかるくらいどこか無理をしているような様子に余計に心配になる。

「で、でも・・・」
「いいから。入ってて」

余裕のなさそうな言いように思わず閉口してしまう。
しかしそんなカカシを前にしてハイそうですか、と戻れる訳がない。

「カカシ」

いまだ真っ暗の廊下の先で姿が見えないカカシに再び声をかける。
しかしさっきまでのように返事は返ってこず、ようやく暗闇に目が慣れてきてじっと目を凝らした。

「!」

廊下の隅でうずくまるカカシの姿がようやく見え、さっきまでの恐怖はどこかへ慌ててカカシの元に駆け寄った。

「カカシ!大丈夫?ケガしたの?」

壁にもたれかかるようにうずくまるカカシの肩に触れた瞬間、ギクリと身体を震わせた。

「・・・

ようやく顔をあげたカカシは額あても口布もそのままで、心配するを安心させるように無理やりほほ笑んだ。

「ごめん、大丈夫だから。部屋に戻ってて」
「そんなこと・・・できないよ」

床についているカカシの手に触れるとその指先はヒヤリと冷たくて、ハッとして思わずカカシの顔を見上げた。

「・・・・・・」
「え?・・・わっ!」

何かを呟いたかと思いきや、ぐわんと視界が大きく揺れガツンと思い切り床に頭をぶつけた。
状況の把握や頭の痛みの前に、茫然としているの上に覆いかぶさって荒い呼吸を繰り返すカカシを見て頭が真っ白になった。

「カ・・・カカシ?」

せっかく暗闇になれてきた目もこんな状況じゃ意味もなく、目の前のカカシがどんな表情しているのか、どういうことなのかも読み取れずにバクバクと心拍数だけが上がる。

「はあ・・・・は・・・」

の頭を挟むように床に手をついたカカシは、まるで激しい運動した後のように荒い呼吸を繰り返し、じれったそうに自分の額あてを投げ捨て息苦しそうに口布を下ろした。

「・・・・・ッ」

唇を噛みしめ眉間にしわを寄せたカカシは必死の形相で、床についていた手での両肩を強い力でつかんだ。
そしてそのまま引き寄せるとも引き離すともせず、手に込められた力だけが増えていく。

「ごめん・・・ごめん、やられたんだ・・・」
「カカシ?」
「任務で・・・クソ・・・」

うわごとのように唸り、苦しそうな表情を浮かべるカカシのただ事ならぬ雰囲気を目の当たりにして頭が追い付かない。

「・・・・カ───」

名前を呼びかけようとした途端、ビリビリと布が破れる音によってその言葉は途切れさせられた。
それは、さっきまで痛いほど肩をつかんでいた手がいつの間にかの着ていた服を思い切り引き裂いていた音だった。
あまりの出来事に思わず目を見開いてカカシの方を見れば、まるでのことが眼中にないかのように引き裂かれた服の間に顔を埋めた。

「ッ!ちょ、カカシ!」

まさかこの流れでこうなるとは思っておらず、慌てて起き上がろうとするががっしりとカカシに抑え込まれて身動きを取ることができない。
その隙にもカカシはの着ている服を乱暴に引き裂き、脚の間に身体を入り込ませてゴリゴリと自身を擦り付けた。

目の前で起こっている出来事に追いつけず、確かにカカシのはずなのにまるで違う誰かに襲われているような感覚に恐怖がこみ上げてくる。
しかし実際にはカカシで、それなのに怖いという感情を抱いてしまう自分にも悲しくなり、訳が分からなくなってじわりと涙が溢れ出してきて止まらない。

ひく、とすすり泣く声を上げた瞬間、それまでのことも見ずに身体を弄っていたカカシの動きがピタリと止まった。

「あ・・・・おれ・・・・」
「カカシ・・・?」
「ごめん・・・自制が、効かないんだ・・・」

依然苦しそうな表情を浮かべながらも、さっきよりかは理性を取り戻したような様子にようやくもほっと力が抜けた。

「カカシ、大丈夫?なにがあったの?」
「毒に、やられたんだ・・・当たってないと、思ったんだけど・・・」
「毒?そんな、病院に行かないと・・・!」
「違う・・・、毒には耐性が、ある・・・から・・・」

カカシは再び苦しそうに呼吸を荒げるも、なんとか抑え込もうと頭をおさえながら大きく息を吐いた。

「解毒できないものが、あって。多分、媚薬の類だろう・・・」
「媚薬・・・」

辛そうなカカシに触れようと手を伸ばしたが、その腕を力強く握られ引き離された。

「今のおれは、なにをするか分からないから・・・」

言葉の通り力加減なく腕を握られ、そのままぐいっと無理やりカカシから離された。

「今のうちに部屋に戻ってろ」

いつものカカシからは想像できない語気を荒げた言い方に思わず圧倒され、息をするのも忘れて目を見開くばかりだった。

「で、でも・・・」
「いいから」

のことを見向きもせずに、掴んでいた腕を引っ張って強引に距離を取らされ、そのままカカシは俯いて荒い呼吸を繰り返した。
そんな様子を目の前にして一度は立ち上がって離れようとしたものの、やはり見捨てられないと、廊下の壁にもたれるように俯いているカカシの前に座り込んだ。

「カカシ・・・」

優しく呼びかけそっと肩に手を触れても俯いたままで、もはやを引き離すとも返事を返すこともなかった。

「わたしが、できるなら・・・」

どこか緊張した指先でいまだ着たままのベストを脱がせてやるも、さっきまでどうにかを引き離そうとしていたカカシはただされるがまま。
俯いたカカシの頬に触れるとようやく驚いた様子で顔を上げ、冷えた指先とは反対に上気した頬は熱くじっとりと汗をかいているほどだった。

「・・・待、て」
「大丈夫だから」

葛藤するような目を向けるカカシにそっと顔を寄せて口づけると、カカシの手がの両肩をつかんだ。
しかしそれは以前のように引き離すわけでもなく、だからといって引き寄せるわけでもなく。
ストップがかけられなかったのを確認したは口づけたまま即急にカカシのズボンの上から自身に触れた。

「ッ!」

それだけでビクリと身体を震わせたカカシだが、手に触れた自身がすでに充分なほど昂りを見せていることには驚いた。
可哀想に、どれだけ辛いことだろうか。
すぐにでも楽にさせてあげようと、ズボンのボタンも開けて下着も下にずらして直接自身を包み込むように握った。

「うぁ・・・ッ」

まるで熱い鉄を握っているかのようで、先端からはダラダラとあふれ出た先走りが自身を濡らしていた。
カカシの口からは熱い吐息が漏れ、の手が動くたびに身体をひくつかせていた。

「ま・・・、待て・・・ッ!」

堪える様に天井を仰ぎ見るカカシの言うことも聞かず、むしろ強めに裏筋を指先で撫でた瞬間、短いうめき声と共に白濁液がの手の中に降り注いだ。

「ハァ・・・ハ・・・」

カカシが受けて苦しむほどの媚薬なだけあって、少し様子を見ていても欲望を吐き出した自身が萎える様子もなく相変わらずの昂りを見せている。
そんな昂りに再び手を添えたのち、荒い呼吸を繰り返し少し開いたままの唇に口づけた。

「・・・・・」

いつもより動きの鈍いカカシに代わって積極的に舌を絡ませているうちに、次第に自身も身体が火照ってくる。
ほとんど身動きの取れないカカシを前に自らの手で快楽に溺れさせている支配欲と独占欲、そして欲情をあらわにしているカカシの表情があまりにも官能的で、不謹慎ながらも煽られてしまう。
今はそんな状況じゃないと分かっていても、身体から自然とこみあげてくるは止められず、とはいえ今は必死に自分の欲をかき消した。

・・・・」

口づけの合間に苦しそうなカカシの声を聞き、一度顔を離したあと態勢を変えて、右手で握っている昂りを口に含んだ。

「くッ・・・!」

いつも以上に硬く熱を持っているそれに舌を這わせながら根元の部分を右手で強くこすると、ビクリとカカシの腰が揺れ動き、吐息ともうめき声とも分からない声が聞こえた。

口の中に含んだ途端に強まるカカシの存在に、抑え込んでいた自分の欲望が再びこみ上げてくる。
無意識に自分も腰が揺らめいて、吐き出す息が熱を帯びている。
なんだったら、キスをしていた時よりも今の方が余計に煽られている気もして堪らず自身をつかむ手に力が入る。

「うぁ・・・・・・ッ!」
「ん・・・・・」

切羽詰まったカカシの声に顔を見上げれば、暗闇でもわかるほど頬を上気させ、薄い唇を半開きにして荒い呼吸を繰り返し切なげな表情を浮かべるカカシに、ドキリと痛いほど胸が高まる。

「は、あ・・・、ごめん、出、る・・・ッ!」
「んっ!」

ビクンと大きく震えたのち、口の中に咥えていた先端から勢いよく熱いものが注ぎ込まれた。
口の中のものをすべて飲み込み、顎も手も疲労を感じ一旦身体を起こした。

「カカシ・・・大丈夫?」
「・・・ごめん、口の中に・・・」
「ううん、いいよ。大丈夫」
「ていうか・・・服も・・・ごめん・・・」
「あっ。あはは、大丈夫だから気にしないで」

ようやく薬の効果も治まってきたのか、さっきよりかは会話のできる様子にほっと一安心。
今日ばかりは流石にカカシに無理はさせられないし、火照った身体はなんとか自分で治めるしかない。
先にカカシをベッドで寝かせて、あとは冷たい水でも飲めば大丈夫。

「今日はもう寝よう。それで明日、病院行こう?」
「あぁ・・・」

まだおぼつかない動きを見せるカカシの身なりを整えてやり、自分も引き裂かれた服の前を合わせる様に結び、ひとまずぐったりとしているカカシの肩に腕をまわして抱き起した。
ずっしりと重たい身体はおそらく解毒による発熱もあるのだろうがいまだ熱を帯びていて、なんとか自力で歩いてはいるが辛そうな様子に胸が締め付けられる。

「・・・・やっぱり今から病院行こうよ」
「いや・・・・大丈夫」

ぴしゃりと言う様子にこれ以上何か言える雰囲気でもなく。
ようやく寝室までたどり着いて、どさっとベッドに座ったカカシはため息交じりに頭をおさえ込んだ。

「カカシ・・・・」
「・・・ごめん、ちょっと、部屋から出てて・・・」
「・・・・・わかった」

ただならぬ様子にそう答えるしかなく、部屋のドアの近くまで引き下がった。

「水とか飲む?」
「いや・・・いい・・・」

俯いたままのカカシに声をかけるも唸り声のような返答で、ならばもう退場するしかないと思った瞬間、うめき声と共にぐらりと上半身をよろけさせたカカシに慌てて駆け寄った。

「カカシ!」
「・・・ダメだって・・・・」
「え?」

ぼそっと呟いたと思った途端、の腕を掴んで無理やりベッドの上になぎ倒された。

「その匂い・・・・さっきから頭がおかしくなりそうだ・・・」
「ちょ、カカシ?!」

上から覆いかぶさったカカシの表情はさっきまでの辛そうなそれではなく、抑え込んでいたものが一気に吹きだしたように欲情にまみれた妖艶な笑みを浮かべていた。

「まだ薬が・・・?」

の言葉も聞かずにの下半身に手を伸ばして一気に下着ごとずるりと下にずらした。

「あっ!ちょ・・・!」
「ほら、これ」

自分でも自覚があったが、カカシのひやりと冷たい指先が充分に濡れそぼった部分に触れた瞬間に一気に顔が真っ赤になった。

「こんなに濡らして・・・」
「や・・・だ、カカシ・・・・」
「もう我慢できない」

ゴクリとつばを飲み込んだカカシは体勢を変えたと思いきや、熱く昂った自身を一気に最奥まで突き上げた。

「あっ・・・かはッ・・・!」
「あー・・・気持ちいい・・・」

突然おとずれたあまりにも大きすぎる快楽の衝撃に目を白黒させると、思考も定かではなく快楽に溺れるカカシ。

「あ・・・カ、カシ・・・・」
・・・・」

甘い声で囁き合い、二人は口づけを交わした。










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