夜になれば普段でも活気に溢れる、里を中央に流れる大通りが今日は一段と喧々としていた。 あちこちに張り巡らされた電線や、建物と建物を結ぶ物干しの紐からは等間隔に高張型の提灯が垂らされている。それは赤地に黒で木の葉隠れの里を象徴するマークが描かれたもので、さらに一つ飛ばしに、同じく黒の染料でそれぞれの店の名前が刻まれた白の提灯があり、そのどれもが夜の暗さなど吹き飛ばすかのようにぼんやりと、けれども力強い光を放っていた。 赤と白が見事に並べられた通りを行き交うのは、今日という日を楽しみにしていた人々の群れ。老若男女、よりどりみどり赤白黄色。軒並み立ち並ぶ屋台に現を抜かす子供たちに、非日常の空気を自身らの世界のアクセサリーとして楽しむ恋人の数々。今日ばかりは門限など気にしなくても良いと若者の集団がゲラゲラと笑い声をあげるが、それすらもこの里の一大イベントである夏祭りを盛り上げるバックサラウンドのようだ。 背丈に似合わない、恐らくは翌年も、その次の年も使うことができるようあえて大きい丈を用意したのだろう、浴衣に着られてしまっている小さな子供が、父親の浴衣の袖を引っ張り屋台のリンゴ飴を催促する。すると浮かれ気分で財布の紐も緩くなった父親が、「あ、ここぞ見せ場よ」と、どこかの歌舞伎俳優のように得意そうな様で一番大きなリンゴ飴を買い与えていた。 屋台に備え付けられた裸電球の明かりが飴の赤を宝石のように彩ると、子供は目をきらきらさせながら、鉢巻を巻いた威勢の良い男の手から飴を受け取る。目の前の宝石に夢中できっと男の「嬢ちゃん、大きいから落とすなよ」の一言も聞こえていないのだろう。 更に隣の屋台では、年を忘れた二人の初老が射的に夢中になっていた。肩まで捲り上げた袖を紐でしっかりと縛り、まだまだ若い者には負けていられない、と。立派なこぶの付いた二の腕がそれを証明しているかのようだ。 強面の店主は呆れたような眼差しを送りながらも、意外と腕の良い彼らに仕込んだ商品が倒されてしまわないかと内心ひやひやしていたのだった。 それぞれが思い思いの時を過ごす中、だけが往来の激しい通りで一人肩を落として佇んでいた。 「・・・まさかはぐれるなんて」 折角綱手が気を利かせてカカシと休みを合わせてくれたというのに。なんて有様だ、とは大きなためいきを吐いた。 混雑していたとはいえ、人々の流れがゆっくりであったために―増してや忍であるのだから―よもやはぐれてしまうなど誰が予想したであろうか。 きっかけは目の前を歩く小さな子供だった。その子が自分の親と間違えてカカシの手を握ってしまったのだ。と手を繋いでいればこんなことにはならなかったものの、その時彼は丁度帯に差し込んでいた扇子を取ろうとしており、と一瞬手を離していたのだった。 子供の方は綿あめを食べながら歩いていたからか、それが他人の手だとは全く気付かず、さらに前方に何かを見つけたのかカカシの手をぐいぐいと引っ張っていた。気付かせようとが子供の肩に触れようとした瞬間、悲しきかな彼女の身にハプニングが訪れてしまった。というのも、後ろから「おかあさん!」と大きな声で泣き叫ぶ子供に足元に抱きつかれてしまったのだ。 慌てて後ろを振り向くと、抱きついてきた子供は彼女が自分の親ではなかったことにこの世の終わりであるかのように顔面を蒼白とさせた。なのでは心配気にしゃがみ込み、目線を合わせて頭を撫でてやると幸運にも直ぐにその子供の親が姿を現したので、一見落着と思いきや今度は自分がカカシを見失ってしまったのだった。 人の密度の濃い空間ではあちらこちらへと抜けていける状況にはあらず、鼻を効かそうにも屋台から漂う炭や醤油の香ばしい匂いに胸を焼く砂糖の匂い、それだけにとどまらず行き交う人々の体臭やら香水やらがより際立ち、集中すればするほど強く感じてしまうためにまるで役に立たない。それは他の感覚器官にも言えたことだった。 そうして忍特有の、一般人よりも鋭敏な感覚もこういう時は困ったものだとはまたもため息をついたのだった。 火影邸の方から横笛の囃子がぼんやりとの耳に入って来た。そろそろ神輿を担ぐ時間が迫ってきたのだろう、先ほどからちらほらと法被姿の男衆が増えてきたような気がしなくもない。 彼らの勇姿を目に焼き付けようと客も数を増してきたようで、前へ進めば進むほどの歩幅は狭くなっていった。目配せをしながら酔わない程度に感覚を研ぎ澄ませるも、一向にカカシ(口布をした背の高い銀髪であるにもかかわらず)を見つけることができない。 どうしたものかとは道の端に立ち頭を悩ませた。闇雲に探すぐらいなら動かないほうが良いのはないかと脳裏に浮かぶも、相手もそれを思っている可能性が無いわけではない。とはいえ人探しはカカシの方が上手いし、自分より視野も広ければ思考能力も高い。 祭りはまだまだ終わらないのだし、少し道から外れたところにいればきっと見つけてくれるだろう。そう心に決めたが大通りから外れようとすると、近くの店から一人の男が顔を出したのだった。 「あれェ、忍の姉ちゃんじゃねーかい」 聞き覚えのある声にがくるりと振り返る。するとそこには顔見知りであるこの里の花火師、ヒバナが店番をしていたのだった。 「ヒバナさん、こんばんは」 「一人でどうしたんでい、いつものよ、ほら、あの〜銀髪の、箒頭のさ」 「それがはぐれちゃって」 「へェー忍のお方にもそんなことがあるんだな」 「あはは・・・面目ないです」 「ま、お姫さま迎えに行くのは王子さまの仕事ってな。こいつで暇つぶしでもしてなよ」 日に焼けたスキンヘッドに鉢巻を巻いた風貌からは似合わない言葉のあとに、ヒバナは節くれだった手から一つの縦長の包みを手渡した。 包みを開くと、現れたのは淡い紅梅色の和紙で持ち手が花びらのように仕立て上げられた線香花火で、それが五つ束ねられて一つの花の形になっていた。 手間と愛情が込められているだろう繊細な手仕事に、は思わず童心に返ったように目を見開いた。 「わあ・・・すっごく綺麗」 「今年は丁度三十年ものの松煙が出来上がったからよ、出来は保証するぜ」 「さ、三十年もの?良いんですかそんな高級な物頂いちゃって」 「いいんだよ、別嬪さんにゃ線香花火がお似合いってな、ほらよ、燐寸も持っていきな」 「あっととと」 軽く投げられたそれを受け取ると、箱の表面には古めかしいカタカナの字体で「カヤクノヒバナ」と書かれており、その横にはヒバナをデフォルメしたイラストが印刷されていた。 「水面に映る火花も乙なもんだから川辺がオススメだぜ」 「でももったいないなあ、こんなに綺麗なのに火をつけるの」 「それを言っちゃあ火薬が湿気て悲しむってな、一瞬の美に命かけてんだ、良い花咲かせてやんな」 流石は花火師、粋なことを言うものだなとから思わず笑みが零れると、気を良くしたのか彼は「こっちは王子様と一緒にやんな」ともう一つ線香花火の入った包みを与えたのだった。 * 下駄の歯が石畳の階段を不規則に鳴らしていく。 祭りの熱を波紋のように帯びている川辺には、ちらほらと浴衣姿の人々が見えるもののその数は少なく、大通りの喧騒とは打って変わって静かだった。 飾られている提灯も互いの間隔が広いせいか少し侘しい感じがしなくもない。けれど祭りで出払ってしまい、家々の明かりが無い夜を照らすには、橙はとても存在感があった。 そこに流れる川のせせらぎが、耳元に清涼さを運んでくる。音で涼しさを感じることができるのもまた風流なものだな、と、耳を澄ませば日暮の鳴き声もまた聞こえてくる川辺の芝に、下駄の歯を鳴らした男、カカシは歩み入った。 (お、いたいた) まだ些か遠いところに一人佇む後姿は、紛うことなき先ほど自分と一緒に居たあの姿。 カカシからしてもまさか自分たちがはぐれる羽目になるとは思っていなかった。あれやこれやと通りを探してみたのだがを見つけることは出来なかったし、気配を辿ろうにも祭りの様々な要素に邪魔をされてしまった。 案外忍もたいしたことはないと呆れながら、締めに火影岩のあたりから花火が上がるため、それを見るために火影邸の方へ向かったのでは、と進まぬ人混みを出来る限りの足早で抜けて行ってはみたのだが。 そこは少しでも良い位置から花火を見ようと陣取る人々で埋め尽くされており、それはこの里にこんなにも人がいただろうかというぐらいの量だったのだ。 そこでふとカカシの脳裏に至ったのは、なにも地面から見上げなくとも忍なら建物の屋根からだって見ることができる、ということだった。 そちらのほうが広々としてゆっくりと、さらには障害物の無い景色を楽しめる。それを考えればこの時間にここに来る必要はなかったか、と一通り目配せをして踵を返して大通りへと戻って行けば、どうしたことだろう花火師のヒバナに呼び止められたではないか。 聞けば先ほどと会ったと彼は言い、さらに川辺に行くように指示もしたと言う。はて、一体何故川辺なのかとカカシは疑問に思ったが、確たる情報を持つ者の話だ、きっとそこに彼女がいるのだろうと礼を言い、雑踏の中に再び消え、ここにやって来たというわけだ。 彼女との距離がだいぶ近づいたのでカカシは「」と彼女の名前を呼ぼうとした、のだが。 「・・・!」 ちょこんと小さくしゃがみ線香花火を持つ姿が、まるでどこかの本にでも出てきそうな一枚絵のようで―。 夜の暗さに浮かび上がる、小さくも力強い松葉のような火花がの横顔を朧気に浮かび上がらせる。一瞬一瞬の火の咲きようは、水面だけではなく彼女の瞳にもしっかりと映っていて、それはゆらゆらと揺れる水面では人工光線のように湾曲してしまうのとは裏腹に、幾つもの星が夜空で瞬くあの光景に似ていた。 そんな煌めく花火を見つめる彼女の顔はとても優美で、たわやかで。それでいて花火が小さくなるにしたがって儚さを孕んでいくのだから、それは恐ろしいほど美しかった。 普段は中々見れぬ浴衣姿がその雰囲気に一躍買っているのだろう、傾げる首元から覗く項が艶やかで、さらに袖の大きさとのコントラストか伸びる腕が華奢に見えて。 火花で浴衣を汚さぬようにと反対の手で袖を押さえる、一見なんでもないそちらの手すら、まるで生まれてこのかたクナイなど握ったことはありませんと言っているようだ。 ―息を呑むほどに美しいとは、まさにこういうことなのだ。 瞬時に胸を鷲掴みにされ、膠着してしまったカカシの時計の針が進み出したのは、彼女の線香花火の先から火の玉が色を失い萎んでしまった時だった。 はっと我に返ったは良いものの、心臓の鼓動だけはすぐに止まってはくれないらしい。カカシは一度深呼吸をしてから柔らかな芝をさらに進んだ。 「」 呼ぶや否や、が勢いよく立ち上がった。 「カカシ!」 「悪かったな、待たせちゃって」 「ううんごめんね、私こそこんなところにいて」 仔犬よろしく寄ってくるの肩にそっと手を回して、カカシは疲れたとばかりに再度彼女に座ることを促す。 二人でどさりと芝の上に座ると、独特の火薬の残り香が鼻を抜けていった。 ようやく一息ついたとカカシが思い切り伸びをすると、となりでが「あ」と呟いた。 疑問に思って彼女を見やれば、彼女はカカシの足を凝視していて、その視線に思い当たる節があったのか彼も「あ」と声を発する。 「・・・鼻緒が切れてまで探してくれたのね」 いつどのタイミングで切れてしまったのかには分からないながらも、カカシの足の甲がうっすらと赤みを帯びていることから、肌が擦れるまで歩き回っていたことが窺える。 ―自分のために、必死になってくれる人がいる。それはなんて、なんて幸せなことだろう。 「ごめんね」と「ありがとう」が一度ずつの口から紡がれ、さらに彼女の手のひらがその部分を優しく撫で去っていく。その行為に慈しみを覚え、カカシは反対に彼女の頭をぽんと撫でた。 「ま、ヒバナさんが全部教えてくれたんだけどね」 「関係ないよ、来てくれてありがとう、カカシ」 「なーに言ってんの、どこにいたって探しに行くに決まってるでしょ」 カカシはそのあとに続けて「俺のお姫さまなんだから」と言おうとしたが口を噤んだ。 勿論この台詞はヒバナに「早くお姫さまを迎えに行ってやんなよ」と言われたからこその「お姫さま」だったのだが、ああいう見た目とのギャップがあるヒバナや、付き合い始めの十代のカップルたちが言うから自然なのであって、三十路の男が言う台詞ではない、と瞬時に理性が働いたためだ。 その考え通り、先を言わなくて正解だったかもしれない。というのも先ほどの台詞で既にには大打撃だったらしい。 「そ、そんなこと言われたら」 「言われたら?」 「ッ」 すると今度はが口を噤んで俯いてしまったのだが、蒼然の中でもカカシにはの耳が真っ赤になっていること見て取ることができた。 それなりに年月を越えて付き合ってきたからこそ分かる、仕草からでも読み取れる彼女の感情。 (ああ、嬉しかったんだろうなあ) マンネリ化することも多々あるが、それと同じぐらい何年経ってもこうして初な態度を取ってもくれる。それがまた可愛いのだ、とカカシは心の中でくつくつと笑った。 「?」 にやにやとした笑顔を浮かべの表情を窺うと、彼女はカカシとは目を合わせようとはせずに、ただ言葉を捲くし立てたのだった。 「は、鼻緒直すから下駄貸して下駄!」 「え、直せるの?」 「応急処置ぐらいだけど」 そう言うとは帯板のポケットから紺色のリボンと穴の開いた小銭を取り出した。それらを一体どう使うのかとカカシは物珍しげな表情だ。 彼の視界の外では小銭の穴に糸を通すようにリボンを通し、今度は下駄の底の穴からリボンの両端を一気に通す。すると上手い具合に小銭が止め栓になったではないか。ほほうとカカシが関心する間にも手際よく作業は進んでいき、あっという間に鼻緒とリボンが結ばれる。前ツボに余裕を持たせながらも切れないようにしっかりと結ばれ、応急処置というには完璧な修繕具合だ。 「へえ〜上手いもんだな」 「でもまた切れちゃったらごめんね」 「そんときゃそん時ってことで。ありがと、」 「ううん、あ、そうそうヒバナさんがくれたの」 綺麗でしょ、とはカカシに先ほどヒバナから貰った線香花火を差し出した。 二人でやるといいと言われたことも伝えると、彼にはお世話になりっぱなしだと二人から笑みがこぼれる。 包みを開けば同じ花形に束ねられては入るものの、こちらの方は白藍色だった。光の下で見た方が綺麗だと彼女が言うのでカカシはそこから二本だけ引き抜いて、残りはまた明日にしようと包みに戻して袂にしまった。 「さっき一人で花火してただろ?」 「見てたの?」 「すっごい可愛かったよ、お前」 「・・・あ、悪趣味」 「見惚れちゃったもん、俺」 口布越しにカカシはの額にキスを落とした。そして彼は、花火に火をつけるために燐寸を持ったは良いものの、不意打ちを喰らって微動だに出来なかった彼女の手からそれをするすると奪い去ってく。 箱の中から一本取り出し、側薬を滑らせれば硫黄の匂いと煙が二人の肺をすんと掠めた。 「、ほら、火点けるよ」 「う、ん」 平生に戻りかけたの手の先にある花火に火が近づいた。紙が静かに燃え上がる間にカカシも急いで自身のものに火を点ける。 下駄の裏で火消しをしているとすぐさま花火から産声が上がり、その橙が二人の顔をより鮮明にした。 「この蕾が落ちなかったら願いが叶うんだって」 そんなので願いが叶うなら花火屋は今頃世界一儲けてるよ、なんて世の男は思うかもしれない。 だからこういうのは女の子特有の考えだなとカカシは思いながら、何か願掛けでもしているのかと問うてみたのだが、彼女からの返事は「ううん」の一言のみだった。 あれ?と思いつつも、この瞬間にも蕾はどんどん酸素を吸い込んで大きくなっていくので、カカシは返事をせずに足元に魅入った。花が咲くまであとほんの僅かだ。 それから数秒も経たないうちに、蕾は力強い音を立てながら火花を咲かせ始めた。 この小さな感動が二人に感嘆の声を上げさせた。それは同じタイミングだった。だから両者は顔を見合って、目を細める。橙の明かりも温もりの滴となって、二人の心に沁み込んでいった。 やがて松葉のように勢い良く、そして範囲も広く火花が走り出すその見事さに魅入っていたのは良いものの、の方の蕾がその勢いに勝てずにぽとりと落ちてしまったのだった。 「あ」 「あ」 また二人同時に、声があがる。 「・・・っぷ」 「あ、こら、笑わすなよ、玉が落ちる」 「ごめん、おかしくて」 散り菊のように一筋の線が放射状にまばらに広がる、番いを失った一本の線香花火。 その侘しくも美しい散り際が終わるのを見届けると、緊張が解けたようにカカシが安堵の息を洩らす。 「良かったね、カカシの最後までもって」 「のはもう少し頑張れればいけそうだったのになあ」 「ね。でもいいの、願いはもう叶ってるから」 「え?どういうこと?」 願掛けなんてしていなかったのではとカカシが思ったのも束の間、が間隔を埋めるようにぴょん、と横並びのまま近づいてくる。 そしてカカシの肩に頭をもたせ掛けて、言ったのだった。 「カカシと一緒にこの花火がしたかったの。だからね、もう叶ってるの」 確かに綺麗なんだけど、一人じゃやっぱり味気なくて、と困ったように笑ってみせる。 瞬間、カカシには全ての音が遮断され、聞こえるのは彼女から紡がれる言葉の数々だけだった。まるで、世界にたった二人しかいないみたいに。 (こいつ・・・なんでそんなに、可愛いこと言うかな) 返事をするよりもどうやら行動の方が早かったようで、素早く、というよりも我慢出来ないといった風に口布を降ろすと、カカシはの腰を強く引き寄せてその柔らかな唇に吸いついた。 が咄嗟にカカシの浴衣を握る。準備などまるでなかったために、彼から送られる刺激を享受するのみだ。躊躇う舌を絡め取られ、思わず漏れるの鼻に掛かった甘い吐息。 カカシの舌技に圧倒されて段々力が抜けていくものだから、それはそのまま押し倒されるのではという勢いだった。 「カカ、シ」 「・・・これ以上は、折角の浴衣が崩れちゃうから、な」 「あ、あたりまえじゃない、ここ外だもの」 「え?そっち?俺はキスを続けるって意味で言ったんだけど」 「・・・!」 「ってばや〜らし」 眉を顰めるを宥めるようにカカシは「ま」と大きめの声で場を仕切り直す。 「玉が落ちようが落ちまいが、俺も願いは叶ってるんだ」 「どんな願い?」 「と一緒に歩んでいきたいってこと」 「・・・もー、またそういうことをさらっと・・・」 「はは、おんなじことに返すよ」 |
(2015.8.1 よしさん一周年おめでとうございます!) |