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朝、カカシが任務に出かけていった。 今日は依頼任務ではなく彼が受け持つ七班の子供たちの修行に同行するとのこと。 きっと疲れたーと言いながらも楽しそうな笑顔を浮かべながら帰ってくるだろう。 疲れた体にはカレーが一番だと、おかっぱ頭のあの人がまぶしい笑顔で言っていたことだし、今日の夕飯はカレーにしようと買い物に出かけた。 「~♪」 カレーの材料や諸々と買いそろえた帰り道、特売で野菜や肉が安く買えてご機嫌のサワラは、少し思い立ったこともありふらりと演習場の方へ赴いた。 街から少し離れたところの木々が鬱蒼とした中にポツリと演習場。 演習場の入り口近くに着いた時点で、奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。 邪魔をしてはならないと、ひっそりと様子を見る程度に中に入っていくと、さっそく声の主である人物たちが見えてきた。 「カカシ先生!なんでサスケにばっかり教えるんだってば!」 「だからお前には言葉で伝えても意味ないでしょ。お前はあと」 「えー!」 「さすがサスケくんっ!」 相変わらず元気そうな三人の子供たち、ナルト・サスケ・サクラに囲まれているカカシを見つけ、とにかく修行の邪魔にならないよう遠くの木陰からこっそりその様子を眺めることにした。 「ったく。だから、こういうことだよ」 そう言ったカカシは印を組んだ後、ドロンと煙を立てて姿を消した。 「あ!消えた!」 「チッ・・・」 「これが変わり身の術ね」 さっきまでカカシがいた場所に代わりに丸太がドサッと転がった。 その様子に思わずサワラも「あっ」と声を出してしまいそうになり、ナルトたちと同様にどこに行ったのかと辺りに視線をやった。 「なーにしてんの」 「わっ!」 辺りを探していると、後ろから音も気配もなく現れたカカシにポン、と肩を叩かれた。 「どうしたの、こんなところに」 「びっくりしたあ・・・」 驚いた拍子に持っていた買い物袋を落としてしまい、それを拾ったカカシがハイと手渡した。 「ちょっと様子見に来たの。ほんとはひっそり見てる予定だったんだけど、バレちゃった」 「あー!!サワラの姉ちゃん!」 「あ!ほんとだ!サワラさんだ!」 「・・・・あいつらにもバレたね」 「アハハ!バレちゃった」 カカシを探していた子供たちがついにこちらに気が付き、満面の笑みを浮かべてバタバタと走り寄ってきた。 「みんな、こんにちは。ごめんね、修行の邪魔しちゃって」 「久しぶりだってばよ!なんで姉ちゃんがここに?」 「キャー、サワラさん、もしかしてカカシ先生に会いに来たんですかぁ?」 「そ、そういうわけじゃないんだけど」 一人クールに佇むサスケと一気に盛り上がるナルトとサクラ。 またまたあ!とはしゃぐサクラに思わず頬が赤くなる。 「あっ、そうそう。お団子をたくさん買ってきたから後でみんなで食べてね」 「やったー!なーカカシ先生、休憩にしよってばよ!な!」 「そうよー、朝からぶっ通しだったじゃない。ね、サスケくん!」 「・・・まあな」 買い物袋から甘栗甘の団子を取り出せば、ぱあっと三人の目が輝きチラチラとカカシの方に視線をやった。 「ま、いいでしょう。休憩にしようか」 「やったー!」 仕方ないねぇ、と笑ったカカシにサワラもクスクスと笑った。 「じゃああっちで食べましょ!サワラさん、こっちこっち!」 サクラの小さい手に連れられて、彼らの荷物を置いてある日の当たる芝生へ案内された。 七班の中にお邪魔する形で、まるでピクニックみたいだと思いながらみんなにお団子を渡した。 「いただきまーす!」 美味しそうに食べてくれるサクラたちにサワラもニコニコと笑みが溢れてしまう。 ふと視線を感じて顔を上げれば、そんなサワラを見てほほ笑んでいるカカシと目が合って思わずドキリと驚いてしまった。 「おい!それおれのだってばよ!」 「お前が食べるのが遅いんだろ」 「んだとー!」 さっそくサスケとナルトが小競り合いを始め、それを見たサクラが「ナルトうるさい!」と一喝した。 「だってコイツが・・・!」 「わかったわよ、わたしの分あげるから」 「サクラちゃ~ん!」 「ぎゃ!」 わあっとサクラに抱き着こうとするナルトに向かって、反射的にサクラの拳がみぞおちに入った。 団子が詰まっただの、やかましいだの、お茶はどこだとギャーギャー騒ぐ子供たちは立ち上がり、カカシとサワラを置いてバタバタと向こうへと行ってしまった。 「アハハ、大丈夫かな」 「ほーんと、うるさい奴らだよね」 呆れたように笑うカカシだが、その笑みには優しさが溢れていて。 「俺も食べよ」 ようやく団子に手を伸ばしたカカシはマスクを下ろし、パクっと一口食べて旨いと唸った。 「まだ素顔見せてないの?」 「そ。ロマンあるでしょ?」 「なにそれ」 サワラももう一口団子を食べながらいまだ遠くではしゃいでいる三人を眺めていると、あることに気が付いた。 「そういえばそろそろ中忍試験じゃない?」 「うん」 「七班はどうするんですか?カカシ先生」 「そうねぇ・・・」 サワラと同じように三人を遠くに見つめる姿はまさに『先生』で、まるで彼らの未来を見据えているような眼差しは普段見れない面持ちで思わず釘付けになってしまう。 「あの子たちなら大丈夫だよ。だってあんなに頼もしくなったんだもん」 「まあ・・・ね」 どこか考えるところがあるのか、ぼんやりとした返事にサワラもこれ以上なにか言う気もなかった。 遠くではサスケが大きくジャンプしてナルトから距離を取り、それに翻弄されたナルトがずるっと地面にすっころんでいた。 そしてずっとサスケの姿ばかりを見ているサクラの目はハートマークが浮かんでいて、そんな三人を見ていたらちょっと心配になったサワラはヒクリと笑顔を凍らせた。 「だい、じょうぶ、だよ。アハハ・・・」 「ハアー・・・。せんせー心配」 溜息まじりにマスクを元に戻したカカシはスッと立ち上がり、座っているサワラの頭にポンと手を置いて「ごちそうさま」とほほ笑んだ。 「お前らー、遊んでないで修行再開するぞー」 鶴の一声とはこのことなのか、ズボンに着いた芝をぽんぽんと払い落としながら呼ぶカカシの声を聴いた三人はつかみ合いをしながらもワラワラと戻ってきた。 「じゃあわたしもそろそろ帰ろうかな」 「見ていけばいいのに」 その言葉に真っ先に反応したのはサクラだった。 「そうですよ!サワラさんもっといればいいのに」 「うーん、修行の邪魔しちゃ悪いし、それに夕飯の準備もあるからね」 「そっかぁ・・・」 残念そうにガクッと肩を落としたサクラは、サワラが持っている買い物袋を見て「あっ」と声を上げた。 「サワラさん、今日カレーでしょ」 「そう!よくわかったね!」 「いいなあ~」 この男三人に囲まれてサクラもいわゆるガールズトーク不足なのか、サワラと会うといつもキャッキャと話が止まらない。 さすがに見かねたカカシが「サクラ」と声をかけ、まだ取っ組み合いをしているサスケとナルトの頭を掴んで引き離した。 「休憩終わり。じゃあ今度はナルトとサクラで組手。サスケはさっきの身代わりの術をマスターさせるぞ」 そう指示を出せば、ようやく三人の子供たちは引き締まった表情をして各々返事をした。 「じゃあまたな!サワラの姉ちゃん!」 「サワラさん、今度また絶対遊びにきてくださいね!」 「・・・・」 ブンブンと手を振って訓練場の奥へ向かうナルトとサクラと、サスケも何か言いたげにジーと目線をやって二人の後を追った。 「今日カレーなの?」 「うん。疲労にはカレーのスパイスがいいって」 「ガイ?」 「そう。アハハ」 察しのいいカカシに思わず笑ってしまい、カカシも苦笑いを浮かべた。 「じゃあ、美味しいカレーたくさん作って待ってるから!頑張ってね、カカシせーんせ!」 「了解」 カカシ先生呼びにくすぐったそうに笑うカカシの背中をポンと叩いて、騒がしい演習場を後にした。 * * * * * それから幾分かして、家に帰ったサワラが夕飯の準備を済ませた後、なんだか玄関の外がバタバタと喧しいことに気がついた。 カレーを煮込んでいる鍋の火を一旦止め、何事か様子を見に行こうと玄関へ向かった瞬間、バタンと勢いよくドアが開いた。 「あっ」 「・・・・ハァ、ご、ごめん・・・」 「カレー!!」 「きゃー!サワラさんのカレー!」 「いい匂いだな」 ドアが開いた先には、珍しく息を切らしたカカシと、しがみつくようにカカシの背中に乗っているナルトとサクラとサスケが楽しそうに笑っていた。 「お・・・、おかえり」 思考が追い付かず、とりあえず口から出たのはいつもの言葉だった。 「サワラさん、ごめんなさい。わたしは止めたんですけどナルトがどうしてもって」 「いや、おれよりサクラちゃんが──うぐっ!」 ぴょん、とカカシから降りながらサクラがナルトに一発入れ、ちゃっかりついてきたサスケもいつものようにポッケに手を入れて澄ました顔をしていた。 「と、とりあえず、いらっしゃい。奥、どうぞ」 「わーい!お邪魔しまーす!」 律儀にペコっとお辞儀までしたサクラが一目散に家の中に入っていき、それを追うようにナルトとサスケも中に入っていった。 「ごめん、あいつらがどうしてもカレー食べたいって聞かなくて」 「お疲れ様。大丈夫、多く作りすぎちゃったからちょうどよかったかも!」 「ほんとに?すぐ帰すからさ」 「いいからいいから。ほら、カカシも早く」 買いすぎた野菜を夢中になって切り、そのまま鍋に突っ込んで煮込んでいたら二人で食べきれないほどのカレーが出来上がってしまったのは事実だし、なんだったらその余ったカレーをどうするか迷っていたところだった。 それに明日も食べようと思って大量の野菜を使ったスープも大鍋に並々と。 連絡もせず突然七班を連れてきてしまったことに恐縮しながらカカシもようやく家の中へ入っていった。 「・・・よーっし」 玄関に並んだ小さい靴3足と大きい靴を見てぐいっと腕をまくった。 「ねぇ、これカカシ先生の小さい時の写真?」 「うわーカレーのいい匂いだってばよ!」 「カカシ、ここに荷物おいていいか?」 「ちょ・・・お前らひとまず手洗ってこい」 サワラがリビングに戻った時にはカカシが再び先生に戻っていて、保護者よろしくカカシについて子供たちがゾロゾロと洗面所へと消えていった。 その隙にサワラは台所に行って鍋に火をかけ始め人数分の食器を準備した。 「サワラー!タオルって棚の使っていいんだよねー?」 「いいよー!」 遠くから子供たちのはしゃいでる声に紛れて聞こえるカカシの声にこたえ、5人分のお皿に順にお米をよそった。 「なにかお手伝いします!」 「サクラちゃん!」 洗面所からいち早く戻ってきたサクラがトコトコとキッチンへと来て、鼻腔いっぱいにカレーのにおいをかぎながら「いいにおい」とほほ笑んだ。 「じゃあ、悪いんだけど机をふいてスプーンとか配ってもらっていいかな。そこの棚に入ってるから」 「はーい!」 ほこほこと鍋が鳴り始め、慌てておたまで中をかき回した。 ゴロゴロと入った野菜とお肉がルーの合間から顔を覗かせ、我ながらおいしくできていると思う出来。 ぐるぐるとかき回した後、おたまにとって真っ白なお米の横にたっぷりと注いだ。 その横では大鍋に入った野菜スープも温度が上がってきたようで、五人分のカップを取り出して野菜たっぷりのスープを注いだ。 「ちょっとナルト、お前 顔に泥ついてる。もう一回洗っといで」 「サスケくんはわたしの隣ね!」 「おいドベ、動くな、よごれが床に落ちるだろ」 「ククク、そういうサスケちゃんも顔に泥ついてるってばよ!」 「なに?」 「うっそー」 ダイニングから楽しそうな声と、おそらくナルトがバタバタと洗面所へと駆けて行った音が聞こえた。 子供たちとカカシには少し多めにお肉を入れて、いざ運ぼうとしたときにカカシがキッチンを覗いた。 「手伝うよ」 「ありがとう」 キッチンに並ぶカレー皿とカップを器用に持ち運ぶカカシの後ろで、はっと思い出して野菜室からある野菜を取り出した。 全員が席に着くまでに急いで切ってお皿に盛りつけて、頭に浮かんだ簡単なレシピのドレッシングを目測で作って上からたっぷりと注いだ。 「はい、おまたせー!みんないる?」 お皿をもってダイニングの方へ向かえば、カレー皿を前に子供たちはソワソワした面持ちで、急いでサワラも席に着いた。 「サスケくん、トマト好きだったよね。ドレッシング、口に合えばいいんだけど」 急いで切ったトマトをサスケの前においてやると、珍しくわかりやすい表情でサワラに向かって頷いた。 よかった、間違っていなかったようだ。 「おかわりはたくさんあるから、どうぞ召し上がれ」 「「いっただきまーす!」」 「「いただきます」」 はしゃいだ様子のナルトとサクラ、静かに手を合わせるカカシとサスケにサワラは「召し上がれ」と再び口にした。 「ん、美味しい」 子供たちの前だからなのか、器用にマスクをしたままカレーを食べているカカシはほほ笑んだ。 そんなカカシの姿には見慣れているのか見向きもしない子供たちは、カカシの後に続いて口々に美味しい!と声を上げていた。 「コラ、ナルト。野菜も食べなさい」 「そうだよ~野菜たべないと立派な忍者になれないよ~」 「うう~・・・」 器用に野菜をよけて食べていたナルトは苦しい顔をしながらもスプーンで小さくした野菜を少しずつ口に運んだ。 サスケが見せびらかすようにトマトを美味しそうに食べ、それに対抗心を燃やしたナルトも青い顔をしながらトマトを食べたり、隣ではサクラとサワラがあのケーキ屋が美味しいだの髪の長さを迷ってるだのガールズトークが弾んでいて、それを静かに見守るカカシにとっては耳に心地が良かった。 「それでサワラさんとカカシ先生の出会いは?カカシ先生のナンパ?」 サクラの聞き捨てならないセリフには思わずカカシも会話に混ざりこんだり、競うようにカレーをかきこむサスケとナルトに「よく噛みなさいね」とやんわり仲裁に入ったりとしているうちにみんな食べ終わり、すっかり空になったお皿と賑やかさだけが残った。 「だってあの時カカシ先生が先に帰っていいって言ったのよ!」 「でも修行のあと俺とデートする約束してたってばよ!」 「えー?そんなのしてたかなあ。サスケくんとなら約束してたけど」 「してない」 楽しそうに話す団欒を一足先に抜け、キッチンに戻ったサワラはポットに人数分の量の水を注いだ。 「~♪」 残念ながら食後のデザートの用意はないけれど、食後の熱いお茶でも淹れようと、奥から聞こえる賑やかな声をBGMに鼻歌交じりで湯呑を用意した。 若い子たちには食後のお茶は嫌がられるかな、でも案外あの子たちは渋いところがあるから大丈夫かな、と思いながら茶葉を棚から取り出す。 「サワラ」 「んっ!」 鼻歌に夢中になっていて、後ろから呼びかけられた声にビクリと驚きの声を上げた。 「カレーもスープも、みんな美味しかったって。あのナルトも野菜、全部食べてたし」 「あっ、お皿ありがとう!」 全員分のお皿を下げて持ってきたカカシがそこにはいて、慌てて受け取ろうとするサワラに「大丈夫」と声をかけて流しに置いた。 そのままカカシは蛇口にレバーをひねり、スポンジを手に取った。 「いいよいいよ、わたし洗っておくから向こうで待ってて。もう少しでお茶もはいるし!」 「これくらいはさせてよ。サワラに無理させちゃったし」 「そんなことないよ、すごい楽しい」 「ほんとに?」 なら良かった、と言いながらも場所を譲ろうとしないカカシにサワラはお言葉に甘え、途中になっていた茶葉の用意を続け、うっかり忘れていたポットに火をかけた。 「ね。カカシは『先生』、楽しい?」 「ん?楽しい・・・か・・・」 お互いそれぞれの方向を向きながらまるで独り言のように問いかけた。 カカシは『楽しい』という単語を初めて聞いたかの如く、かみ砕くように何度も小さく呟いた。 「楽しい・・・うん、楽しいよ。あいつらは本当に、いろんな感情を巻き起こさせる」 「うん。それ、なんだか分かる」 顔を見なくても、カカシがきっとほほ笑んでいるのが分かる。 答え合わせをするようにそっと振り返れば、やっぱりカカシはマスクをしてても分かるくらい優しい微笑みを浮かべていた。 「カレーの鍋は付け置きでいいかな」 「うん。それはあとでにしておこ」 皿を洗い終わったカカシはシンクから離れてポットの前で沸騰を待つサワラに寄り、そっと後ろから抱きしめた。 「!」 まるでサワラに甘える様に、首元に頭を摺り寄せてくん、とにおいをかいだ。 「くすぐったいよ」 「サワラのにおい、好き」 クスクス笑うサワラにつられてカカシもそっと微笑んだ。 その笑みはさっき七班の子供たちに向けた微笑みと似ているようで違う、そんな複雑な使い分けができるなんで本人も知らないであろう。 「カカシ・・・」 「サワラ・・・」 マスクを指先で下ろし、ゆっくりと唇を寄せ合った。 「あーーー!マスクおろしてるー!」 「バカナルト!いいところだったのに!」 「チッ」 唇が触れ合う直前、三人の声に驚いて慌てて後ろを振り返った。 「サ、サクラちゃんたち・・・!!い、いつからそこに・・・!」 「エヘヘヘ」 一気に真っ赤になったサワラを前にサクラはいたずらっぽく笑った。 カカシを振り返ればいつの間にマスクを元通りにしていて、さっきまでの優しい微笑みはどこへやら呆れた顔でハァとため息をついた。 「こういうとこだけ長けてんのよ、こいつら」 そういうと後ろのポットがお湯を沸いた合図をけたたましく鳴らした。 「ご馳走様でした!サワラさん、今度あのケーキ屋さん行きましょうね!」 「じゃーなー!カカシ先生、明日は遅刻すんなよー」 「世話になったな」 宴もたけなわ、玄関で三者三様それぞれに別れの言葉を言いながらバタバタと外へと出て行って、カカシとサワラは三人の後姿を見守っていた。 「送っていかなくて大丈夫かな」 「ま、サクラは家まで送っていくって言ってたし、曲がりなりにも忍者だからね、あいつらも」 「そっか。じゃあ大丈夫か」 なんて言いながら見つめていると、またしてもサスケにちょっかいを出したナルトがズルっと転んだ姿を見て思わず「ちょっと心配だけど」と言いそうになったサワラだが、転んだナルトに手を差し伸ばすサスケとサクラの姿を見てその言葉は無意味となった。 「いい子たちだね」 「でしょ?」 眉を八の字にしてくしゃっと笑うカカシにサワラも同じように笑みを溢れさせ、たまらずカカシの身体に抱き着いた。 「どうしたの?」 「カカシ先生もいい先生だと思うよ」 「そりゃ・・・どうも」 カカシの胸に顔をうずめながらそう言えば、頭上から照れたような声が返ってきた。 なんとなくどんな表情しているのかと顔を上げようとすると、それに気づいたカカシが先に動き、どんな表情か見る前に口づけられていた。 「カカシせんせー、ズルい」 「なんのこと?」 ムッとした表情を浮かべたものの、クスクス笑ってとぼけるカカシにすぐに表情が崩れてしまった。 「さ、風呂入ってゆっくりしよ」 「はーい」 家の中に入った二人は、リビングの片隅でポツリと置き忘れられたサスケの忍具ポーチを見つけ、ガクリと肩を落とすカカシと大笑いするサワラだった。 Request |