「んっ・・・・は、あっ・・・・!」
「は・・・くっ・・・・」

ギッ、ギッとベッドがきしむ音、二人の吐息、そしてお互いの身体と粘膜が絡み合う音が暗い部屋に響き渡る。
眉間にしわを寄せ強く目をつぶったままのは、目の前のカカシの目から逃れるように横を向いたまま。

・・・・」

覆いかぶさるようにしての首筋や顔に口づけを落とすカカシはなんとも言えない切なげな声で名前を囁き、その声を聴いた途端にゾクゾクと背筋が震え途端に昇りつめてしまった。
その後を追うようにカカシも欲望を吐き出して二人は乱れた呼吸のままベッドに並んで横たわった。


「もう寝ちゃった?」
「・・・・・」

しばらく無言のまま二人は身体を寄せ合っていた。
そしてふとカカシがそう呟いたものの、は瞳を閉じたまま返事を返さなかった。

「おやすみ」

どうやら寝てしまったのかと思ったのか、優しくの頭に口づけたのちにカカシも目を閉じた。
しかしその時は起きていて、暫くしてから寝返りを打つふりをして体を抱きしめているカカシの腕からそっと離れた。


「・・・・・・・」


いつからだろう。
カカシに抱かれながらも、カカシのことを見ずに事を終わらせてしまうようになったのは。
カカシのことが嫌いなわけではない。
むしろ果てしなく愛している。
しかしいざカカシに求められたときに、どこか一歩引いている自分がいた。
カカシが好きなのは私ではなく、わたしの身体なのではないだろうか。

ぼんやりと天井を見つめながらモヤモヤと考えていると、心のうちの暗い影のようなものが辺りを埋め尽くしていくような気がした。
再び寝返りを打ち、今度は横を向いてカカシに背を向けた。

性欲がないわけではないし、カカシに求められて嬉しいとも思う。
口づけて、優しく抱きしめて、十分すぎるほどの快楽を与えてくれる。
けれどカカシが見ているのは私ではなくて・・・?

そう考えた瞬間、カカシの欲情した目に耐え切れず目をつぶるか顔を背けるようになってしまった。

もちろん人のことを言えるような立場じゃない、というのも分かっている。
カカシからの快楽を待ち望んでいるし、そのためだったらねだるような態度を見せつける浅ましい女だ。

「はあ・・・・・・」

カカシを起こさないように小さくため息をついた。
朝になれば気持ちもスッキリする。いつものことだ。

無理やり目をつぶり、朝が訪れるのをひたすら待ち続けた。



「今日から3日間くらい任務に出かけちゃうけど寂しがらないでね」
「それはカカシの方でしょ」

明け方、忍服姿のカカシを玄関で笑いながら見送り、その後姿が見えなくなったあとにバタリとドアを閉めた。
部屋の掃除をしたり、買い物に出かけて新しい本や家具を買ったりと、日がな一日を過ごしているうちにあっという間に3日が過ぎていった。

「今日帰ってくる日だ」

疲れて帰ってくるカカシのために干したての布団とお風呂の準備をし、いつでも食べられるように食事の用意を済ませておいた。
カカシが長期で任務に出かける時はいつも寂しい。
しかし帰ってくる日の待ち遠しい気持ちはなんだか嫌いじゃない。
まだかな、とドアの前でしっぽを振って待っている犬のように、ソワソワとカカシの帰りを待つ。

「ただいまーー」

ようやく帰ってきたカカシに「おかえりなさい!」と駆け寄れば、案の定疲れたような顔をしながらもどこかホッとしたような笑顔でを抱きしめた。

「ケガはない?」
「ん、大丈夫」

玄関でしばらく抱きしめあい、おかえりのキスをしてようやくカカシは家の中へ上がった。

「お腹空いてる?先にお風呂のほうがいいかな」
「じゃあ先にお風呂入ってくるよ」

そうしてお風呂から上がったカカシと共に食事をとり、他愛もない話をしていると夜は更けていき、そろそろ寝ようかとベッドに横になった。

「あ、布団干してくれたんだ。ありがとう」
「きょう天気よかったから。わかる?」
「うん、ふかふか」

心地よさそうなカカシの顔を見てクスクス笑っていると、つられて笑ったカカシはぐりぐりとの頭を撫でまわした。
じゃれ合っている内にふとした瞬間に見つめ合い、どちらからと言わずに口づけあった。

「ん・・・・」

だんだんと深くなっていく口づけに思わずカカシの胸を手で押し、それに気づいたカカシは一度顔を離した。

「ダメ?」
「ダメっていうか・・・カカシ、疲れてるでしょ?」

そうであってほしいと思っている本心が思わず口に出てしまう。

「・・・・そんなことはないけど・・・ま、それもそうだね」

微妙な沈黙ののち、おやすみ、と声をかけたカカシはの額に優しく口づけて先に目を閉じた。

「・・・・・・」

思わずごめんなさい、と言ってしまいそうになるのを抑え、もしばらくカカシの寝顔を見つめたのちにそっと目を閉じた。








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