「ねぇ、待ってよ!」

じゃあまたね、と家へ帰るの後ろ姿を眺めていたら突発的に声をかけていた。

「?」

幾分が離れた先で不思議そうにこちらを振り返る

「あのさー・・・」

すこし声を張り上げて言葉を続けると、建物と建物にウワンとこだました。
相変わらずは不思議そうにこっちを見ていて、言葉の続きを素直に待っていた。

「お前はさー、そのー・・・」

うまく言葉が続かないもどかしさに頭をかいていると、がヒールの音を響かせて戻ってきた。

「なあに?どうしたの?」
「・・・・お前はさ、俺のことどう思ってる?」
「え?」

さきほどより幾分か声の大きさを落として、いつしか長いあいだ心の中で渦巻いていたことを尋ねた。

「どうって・・・どういうこと?」
「だからさ、お前は俺といつも一緒にいてくれるけど、お前が俺のことをどう思ってるからわからないんだよ」
「そんなこと、なんでいまさら」

アハハ、とクールに笑うに改めて鼓動が高鳴る。

それだよ、それ。
そのクールな対応が、分からなくするんだよ。

「くやしいんだよね」
「は?悔しい?なんで?」
「俺ばかり好きでくやしい」

キョトンとするの肩をズンと押して、近くの建物の壁に押し付けた。

「わっ、なに、急にどうしちゃったの?」
「俺はお前のことが好きだけど、お前は何考えてるかわかんないから。俺ばっかりお前のことが好きで悔しいんだよ」
「・・・・」

は一瞬まっすぐにカカシのことを見つめてなにか言いたそうにしていたが、アハハといつものように明るく笑った。

「カカシならわかると思ったから言わなかったんだけど、そっか、悔しかったんだ」

ニヤッと笑ってカカシの頬を挑発的に指先で撫でた。
冷たく細い指先は、頬を撫でた後にツウ、と首を伝い胸のあたりを指さした。

「それ、ずーっとここでモヤモヤしてたの?」
「まあね、この話題はずっと触れたかったよ」

それを聞いたは再びなにかを考えるように静かに瞬きをして、スッと静かに息を吸った。


「じゃあ、ウチ寄ってく?」




なにを考えているのか、颯爽と前を歩くに後ろを歩くカカシは頭の中がパンクしそうだった。

今まで家に誘っても来なかったくせに、行こうとしてもなにかと理由づけて断られ続けていたのに、どうしてこんな急に家に行くことになったのだろうか。

家に行くということはそういうことなのだろうか?

そこまで考えての発言なのか?

、なに考えてるの?」
「ん、なにも考えてないよ」

振り向きもせず、ただひたすら足早に家を目指す
家がどこなのか分からないから、あとどれくらいなのかもわからず果てしない道のりのように感じる。

「ここ」

突如が振り向いて、一軒の家を指さした。

「ちょっと待ってて、部屋の中、すこし片づけてくるから」

そう言って惑うカカシを玄関前に放置したまま先に家の中へ入ってしまった。



「・・・・どういうつもりなんだよ」

はあ、とため息が自然に漏れて頭を抱えるようにしゃがみこんだ。

きっと暴走するに違いない
今までずっと我慢してたんだ、抑えられる自信がない

でもが家に誘うのだから、これはもういいってことだろ?

悶々との赤いルージュが目に焼き付いて離れない。


「どうぞ」


玄関の扉の奥で、の声が聞こえてきた。
びっくりして立ち上がり、背筋を伸ばして重たい玄関の扉を開けた。

「いらっしゃい。あんまりかわいらしい部屋じゃないけど」

と、ワンルームの部屋の奥、少し照れたようにベッドの上でが微笑んでいた。

「お邪魔します」

クールならしい、すっきりとした部屋。
ぴったりじゃないか、と心の中で思いながら、慌てる気持ちを抑えながら靴を脱いで一歩足を踏み入れた。

そこから先、どうしたかなんて覚えていない。

気づいたらベッドの上に乗っかって、のことを押し倒していた。

「ちょっと待って」

顔を真っ赤にして照れたような顔ではカカシのことを見つめた。
こんな状況でもなにを考えているか分からない。
けれど拒絶しないのならば、それはOKのサインなのだろう。

「もう時間切れ」

ゆっくりと顔を寄せて赤いルージュに口づけると、はぎゅっと目を閉じてそれを受け入れた。
一度口を離してのことを見つめると、すっかり耳まで赤くしてうるんだ瞳をこちらに向けていた。
ドキドキという心臓の音がこちらまで聞こえてきそう。

「いま、わたしが、なに考えてるかわかる?」
「んー、わかんない」

優しく微笑んで愛おしく頭を撫でてやり、の次の言葉を促した。

「カカシのこと、愛してるって、思ってる」

とろけた笑顔で呟いて、カカシの頬に優しく触れた。

「今までも、ずっと思ってたけど、それを言うのは恥ずかしかったから。でもカカシが言ってくれたから」

恥ずかしそうに視線をずらすに、たまらず貪るように口づけた。


「いいよ、これからたくさん、今までの分の『好き』を貰うから」






(2016.07.23 →→→&Thank you An !)

Novel TOP


*    *    *    *    *

お題一覧
◎がついているものを選択しました!


◎ずっと触れたかった/俺ばかり好きでくやしい/俺のことどう思ってる?

◎「じゃあウチ寄ってく?」


__を押し倒してみたら、怒った顔で「どうして?」と言って、ぎゅっと手を握られました。どうしてくれよう。

カカシを押し倒してみたら、困った顔で「ちょっと待って」と言って、顔を逸らされました。ごちそうさま。

カカシがヒロインを押し倒してみたら、泣き出しそうな顔で「いいよ」と言って、ぎゅっと手を握られました。仕方ないな。

◎押し倒してみたら、照れた顔で「ちょっと待って」と言って、じっと見つめられました。仕方ないな。

◎突然キスをしてそのまま押し倒して見ると、顔を耳まで赤くして、ドキドキという心臓の鼓動がこちらまで聞こえてきそうです。

突然キスをしてそのまま押し倒して見ると、顔を真っ赤にして、言葉が出せないくらいドキドキしているようです。